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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十章 エピローグ……新しい命の誕生……

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第126部 みんな……ありがとう……


 1971年4月7日


*)私の胸が……起爆剤……?


 美保や未来みく、やや近寄りがたいと思っているのが立花の双子だ。藍はもう家族とおんなじよね。そんな藍が私に服をプレゼントしたいと言い出したのよね、うん、とても嬉しいよ。


 家でも教室でもね、今でも大地を探す視線が流れている私だから、と、藍が言い出して、未来みくが賛同して、スポンサーが美保だった。立花の双子は藍から誘われていたが、断ることが出来ないようで付いてくるという。


「亜衣音ちゃんにはさ、足のくるぶしまで届く、超~ダサいロングスカートを買ってあげたいのよ。あ、私には家賃があるのでお金が出せないわね。」


「それは勘弁してあげないでもないわ。でも十円は出しなさい。」

「は~い、美保さま。」

「アハハ……、未来みくはどれだけ出せるのよ。」

「私は……千円、でいいかな。」


 この頃の千円はそれはも~……高額の部類に入るわよ。今で言えばね五千円から七千円くらいだろうか。単純には比較は出来ないが、初任給が五万円で郵便の封書が二十円とか。


未来みくにとっては、そりゃ~大金だわさ!」

「ほんとよ、お人形の五体は買えるわよね。それ以上かも知れないな。」



 赤い靴……未来みくが買ってくれたんだよ。藍ちゃんがね、


「私、ガータベルトを見てくる。」

「うん、ありがとう。」


 と、ついお礼を言ってしまったのだが、買ってくれはしない。でも裏方に活路を見いだしていた。その夜から必死になってね、


「亜衣音ちゃん、太ももの大きさとね、ヒップのサイズを計らせて頂戴。とても良い物を創ってあげるから。」


「う……うん、ありがとう、とても楽しみだわ。」

「出来たら喜んでいいわよ。私、是非に創ってみたいの。」


 これが藍の創作意欲の源泉になった訳だ。将来は「女社長!」だよ。凄いね。



*)私の脚が生まれた日……



 四肢奮闘の末、出来上がる未来みくと藍の合作が……。藍としては獅子奮迅(ししふんじん)と言いたいのだと直ぐに分った。お陰で力作が出来上がる。


「亜衣音ちゃん、今日の家庭科室が楽しみだわ。」

「うん、ありがとう、私だってまな板に載った気分よ。」

「それは……そうだよね。今日は鯉の料理だったから。」


 この家庭科の授業が最後だから他の全員が引けるのを待つ。未来みくは藍とアイコンタクトしながらにこやかにしている。美保や立花の双子は怪訝な表情を崩してはいなかった。


「ほら、みんな帰ったわよ、亜衣音ちゃんで遊ぶのは分るけれどもね、このあとはどうするの?」


 う~私で、遊ぶとはなによ!


「先ずは亜衣音ちゃん。スカートを脱がせて頂戴。それから実演でマジックショーを披露するわ。」


「へ~……マジックショーでしょう? 何かな。」

「亜衣音、脱ぎなさい。」

「はい、恥ずかしいわ……。いや、ぎゃ~……。」


 下半身をスッポンポンにされた私。藍は特性のガータベルトを取り付けた下着を出してくれた、が……何故に紅いの?


「いいからこれを着て頂戴。それからこの脚を取り付けるのよ。」

「あぁマネキンの脚!」

「丁度よい長さに切断しておいたわ。これを……こうやって膝に着けてね。」

「ふんふん、それで、」

未来みく、赤い靴を出して頂戴。」


 藍はマネキンの足にその靴を履かせている。


「へ~、へ~クション!」

「あら、寒かったわね。もう終わりよ。さ、スカートをはいていいわよ。」

「って、独りでは無理よ。手伝って。」

未来みく、おやりなさい。」

「ラジャー、ボス!」


「出来たわ、亜衣音ちゃん。一応は練習も必要だと思うけれどもね、そうやって立っている時や、歩く時には紅い靴が一足見えるわよ。だからさ、ね?」


「……あ、あ、あ……ホント、足が在るように見えているわよ、亜衣音ちゃん、おめでとう、足が生えたわ……。」

「うん、ありがと・・、もう涙で見えないわよ、」


「も~おバカさんよね、泣くことはないんじゃないの? ほら、そこの姿見でさ、自分を見てよ。」

「あ……、」


 その姿見に映る自分の姿、スカートで脚の部分は見えないけれども、足下には間違いなく、動く紅い靴が在ったのだ。ぎこちなく動くその紅い靴は紛れもない私の脚の延長戦上にある、あるのよ、もう……感激したわ。


「う……、」

「ほら泣かないの、これからは脚が在るように歩く練習が必要だからね。」

「うん、座っていたら、自分の脚が在るようだわ、わ~……。」


 生まれて初めてのような感激が、私の涙腺を緩めて水を流している。


「大地……見てくれるかな!」

「そうよね、天国で大地くんが喜んでいるわよ。」

「翠ちゃん、プリンスを呼んできて。教室へ戻りたいからね。」

「は~い、行こう、碧。」

「うん、海斗くん、ビックリするよね。」


 こうやって使えないが、見せかけの私の右足が生えてきた。職員室にも知らせた二人は、両親と石川くんの三人を連れて家庭科室へ戻って来たのだった。


「まぁ……亜衣音ちゃん、」

「はい、」

「おい、亜衣音さん、すげ~……。」

「ありがとう、海斗くん。ありがとう、未来みく。ありがとう、藍。」


 えへへんと大きく鼻をこすって笑う藍ちゃんが立っていた。


「穣さん、今日はこの子たちとお祝いしなくちゃね。」

「お、おうそうするか。何処がいいかな。」


 松葉杖は手放せないが、脚があるのだと思うだけでもとても嬉しい……よ。その後は右足を使って……大きく転んだよ、大地。でもね、ほんの一瞬だったけれどもね、両足で立てたのは事実よ。


「あ~……義足が早くできないかな、ねぇお父さん!」

「いやね~、つい最近頼んだだけだろう?」

「そうだったかな、もう半年は過ぎた気がしている。」


「ワッハッハ……。」x8


「へ~……凄いじゃんか。」

「あ、委員長……!」


 今では名前で呼べなくなった夕霧さんの手が、パチパチと打ち鳴らされていたんだ。本心から喜んでいる表情だったのが、私にとっても凄く嬉しくなったのは間違いない。


「ありがとう……(夕霧さん。)」


 各家庭の親御さんに連絡するお父さん。いの一番は立花の双子の家だ。


「親父、聞いてくれ、亜衣音に脚が生えたんだ。」

「そうか、今晩は亀万だ!」

「勘定頼むよ。」

「任せんしゃい!」

「あ、蟹鍋もいいかな、全部で十二人か!」

「お前の家で頼むよ。寿司は買って来るからさ。」

「そうですか~ぁ? ではお願いしましたよ。」


 いや~人数は増えるよ、自宅が安くつくとは、お爺ちゃんのミスだよ。家にはね他にも杉田家に黒川家、ホロお婆さまにカムイコロさんが居るよ。金額は倍になり嘆くお爺ちゃん。お婆ちゃんは心より喜んでいたわ。それから後輩の二人も噂を聞いて来たからには、帰すことはできないよね、お爺ちゃん。


 もう胸がいっぱいで、お寿司はほんの三貫で蟹鍋は脚を三本を囓ったかな。そして私は大地へ報告へ行く。


 私をお姫様抱っこで運んでくれた海斗くん。軽く抱え上げられる私。


「大地、幸せだよ。」

「俺もいいか、」

「はい、お願いします。」


 

 海斗が仏壇に手を合わせて念仏……。その声を聞いて私は、想いは複雑になったよ、大地。大地は海斗になんてお願いをしたのかな。



「亜衣音さん、俺は大地に命を救われたんだ。あいつ……な、すげ~良い奴だよ死なせたのが勿体なかったよ。」

「大地が海斗を、どうやって助けたのよ。」

「それが、俺が勢いで飛び出したが、弾を受けないようにと俺の上にさ横たわってくれたんだ。大地はだから俺が殺したのかもしれない。あいつは人狼だからさ、あれくらいでは死なないはずさ。」


「そうね、とても強い人狼だよ、本当は死んでいないよね? 何処まで知っているのですか? 大地から聞いたんですね。」

「……そうです、すみません。俺を恨んでいいです、俺、亜衣音さんの傍を離れませんよ。いいでしょうか。」

「……大地に聞いてみます。でも暫くはお返事が出来ません。」


 私に対する求婚のよな言い方の海斗だった。でもね、受けられるはずは無いよね、大地……。


「笑うな……バカ大地!」


 一番いい笑顔の仏壇の大地、返事は無い……。後ろには二人の人が居るのが私には分っている。お母さんと、それに……かな。


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