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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十章 エピローグ……新しい命の誕生……

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第125部 退院……そして学校へ


「大地、……大地、やっと会えたよ、大地。意地悪な大地はこんなに軽かったなんてしらないぞ、バカな大地……。ひかると仲良く……だね。」


 転院して直ぐにお母さんが見舞いに来てくれた。……うん、元気だよ。


「亜衣音ちゃん、空港へお迎えに行かなくてごめんなさいね。」

「うん大丈夫。それよりもさ、触らせてよ。」

「え~もう乳離れは済んだよね、穣さんがまだなのは論外かしら。」

「違うよ、新しい妹に触れてみたいんだよ。? ママのH!」

「あ、そうだったわね、妊娠に間違いなかったわ。亜衣音の見立ては凄いわ! ほらほら、思う存分にどうぞ。」

「うん、可愛い、可愛いよ、元気に育っている。嬉しいな~。」


 亡くした大地に代わる新しい命だった。お母さんに当った弾が、もしお腹だったらと考えた事は何度あっただろうか。そのたびに大地がお母さんに宿ったのだと考えてもみたが、巫女は女児しか産まないのよね、決まってるのよね。大地の前世はきっと女だったんだ、だって種なしは本当だったよ。自分の事は棚にあげる性格なのだから、不妊の原因が自分にあるかもしれないなんて、毛先にも浮かばないよ。浮かんだって髪を切る度に落とされていくのよね。




 1971年4月7日


*)久しぶりの登校……


 私たちは修学旅行の後に期末試験が行われた。でも私だけが遅い試験の便宜をはかって頂いた。内容も何もない、お情けのような試験だった。これは学校の問題でもあったのだから。お爺ちゃんは学校へお詫びと色々な防犯設備に手を加えてくれたのだ。



 私は一週間あまりアメリカへ渡航した。カムイコロさんが喜んで警護職に食いついてきた。アメリカで最新の義足を作ってもらう為の渡航だった。


 それも済んで学校へと行く。義足の制作には半年と手直しと調整の時間で更に半年もの時間が過ぎてゆく。もう大学の入学に間に合うのか? という頃に出来上がった。でも、今は高校三年生を謳歌しなくてはいけない。


 義足の製作にこれ程の期間が必要だったのに、疑問も浮かばなかった。それだけ私の心も沈んでいたのだろう。


 私のわがままは何でも通ってしまう。そんなに心配しなくてもいいよ、と両親には言うのだけれどもね、私の口が勝手に言うんだよ。


 お寿司食べたい。これは退院祝いで大いに満腹だ。最後は自転車をおねだりした。簡単には歩いて外出が出来ないからだ。左足にペダルを固定すればと考えてお願いした。


 でも乗るのはいいとしても、降りるのが出来ない。どこそこの家でも壁でもを利用して、あまつさえ、近くの人を頼って自転車から降りていた。


「私、顔の皮が厚いから平気だよ。」

「そうかい、でもね~……。」


 家族からはいつも不安がられていたんだ。大地、空から見ているかな。



 それから私の通学が開始された。無理して始業式から出て行ったんだ。大地の机も用意されてあり、最後まで私の右隣が空席のままで、座るのは藍のただ一人。


 その頃は痛々しい藍の顔も整形で綺麗に、元以上に綺麗になっていた。この時に初めて藍が意識不明の重傷だったと聞かされた。今では藍も家族の一員となっていて、大地の後釜のような感じで居候をしている。


 クラスメイトたちが教室で顔を揃える事が出来るまでは、ゆうにひと月以上もの時間もかかっていた。もう一人重傷の女の子がいた。珠子である。あのケブラー繊維の衣装を着ていなかったので、身体の被弾が思いのほか酷かったという。私と同じようにベッドで期末試験を受けていたんだよ。


「珠子、退院できて良かったね。」

「そうね、ヘルニアで入院させられたよ。」


 珠子は背中から被弾、弾はお腹を通って出て行く。とある物まで引きずりながらだったという。傷病名が、なんと「ヘルニア、」と書いてあったらしい。随分とねユーモアのある変な先生なのかは不明だ。



 壇上の校長先生……随分とほっそりとしていたんだよ、可笑しいよね大地。その校長先生は事件の事を一言で済ませているのは、被害者をおもんぱかっての事だろう。


 松葉杖を使って二階の教室へ、痛々しい雰囲気で見つめられる。嫌だとは思うが仕方ないよ。階段が辛くて大変だった。一番怖いのが身体のバランスを逸して後方へ倒れる事だ。だから必ずは後ろに誰かの介助が必要となる。


「カバン持ちもだね、」


 と明るく笑うのが未来みくで、そんな笑顔で私は救われた。


未来みく、そんな人形をカバンに付けないでよ、子供みたいよ。」

「いいのよ、可愛いから付けてあげる。」

「へ~もしかして、それって、」

「そうよ、悪くないわよね、私だけが……亜衣音のカバン持ちなのよ。」

「うん、お願いしたい。人形だって……可愛いわ!」

「……可愛いよね?」

「はい、とても最高に……可愛いわ。」

「無理して言わなくてもいいわよ。」

「無理してない、無理なんてしてないもん。」


「亜衣音、俺が学校では面倒を見てやる。あいつの最後の頼みだからね。」

「海斗くん、大地が言ってくれたんだね。他には何か言ってなかったかな。」

「いいや……他にはなにも言ってなかったな。俺としてもあいつの死はとても残念だよ。」

「それで夕霧さんの了承とかあるの?」

「一応はね、言うには言っておいた。」

「うん、ありがとうで、お願いします。先ずは、私をその夕霧さんの元まで連れてって。」

「いや、あれを連れてくる。お礼は言わないがいいぞ。言ったら百倍になって一言では済まないだろうさ。」

「今はどうして居ないの?」

「あいつ、学級委員になっている。先生と一緒に来るだろうさ。」

「へ~そうなんだね、どうしてかな。」


「このクラスを絞めるのだとよ。お前が再起不能になったからだろう?」

「うわ~……なにそれ、本当だったら笑えないよ。」

「亜衣音ちゃん、……ちょっと耳貸しなさい。」

「なによ、美保。」

「あのね、夕霧さんは亜衣音ちゃんを守りたいのよ、意味分る?」

「……って、もしかして?」

「もしかも、かもしかも無いわよ。他に意味は考えられないのよ。」

「うん、分ったわ。そう思って夕霧さんを見てみるから。」


 美保は石川くんをシッシと手で合図して、追い払ってからそう話してくれた。そうよね、そうじゃないと海斗くんが私の護衛を引き受けないよね。大地が言ったなんて、ウソかもしれないし。


「そういえば海斗くん。夕霧さんには声を掛けるな、と言うのはなぜよ。」

「亜衣音ちゃん、よ~く胸に手を当ててから、心に聞いてみなさいよ。分るはず

 よ。」

「え~分んないよ。教えてよ。」

「そうね、あんたが退院したらさ、思いっきりひっぱたいてやりたいと言っていたわよ。どうかしら、思い出したかな?」

「……って、そうね胸に手を当てて……てって、あの胸ポロリか!」


「ご愁傷さま……。また入院したら、もう見舞いには行けないよ。」

「ギャバ……怖いよ、美保。」


 被写された写真が現存しているとか何とか。あれだけ群衆からカメラを向けられていたら、一枚どころか十枚だって可能性が……あるのかもしれないな。


 助けてよ大地。テレビ局の中継だって行われたのよね、


「あ~……私は詰んだ事と同じよね。」


「良かった、思い出してくれたんだ。」


「ひゃ~~~ポロリ姫!」

「それっ、パコ~ン、」「ギャビ~~~!!」


 思い出した直後に夕霧さんが私の目の前に現れて、見事な一撃を賜った。


「きゃ~亜衣音ちゃん、」


 私は夕霧からセーターと下着さえも持ち上げられてさ、両胸をポロリとね男たちの前に晒されたんだよ、どう思う? 大地。


「ありがとうございました。白銀の花嫁さま、亜衣音さま!」


 とは、海斗くんが言ったのよ。超……恥ずかしいわ。


「なによ、新聞で、テレビで放映された私はどうなのよ。」

「夕霧さん、ごめんなさい。」


「ほほう……亜衣音も育っていたか、時間も過ぎた始めるぞ!」

「なんも言わない杉田創め~、笑うからにはあいつもグルだったか、」


「おう、石川。お前は白川の後ろに行け。深山……代ってやれ。」

「はい、いいですよ。」

「すまないな、深山……。」

「フン!! スケベ……。」



「それでな、今日からは……、」


 今日の授業の内容とは、そんなことはどうでもいいのよ。保健室で休もうかなそれとも早退して逃げたいな。


 私の初日は悲惨だったわよ、大地の好きな私の胸が海斗くんに見られたわ。後ろの席に引っ越した海斗くん、私を見つめて何思う……よね。


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