第122部 新しいダンスの衣装……
1971年1月28日
*)二人のゆくえ……
雪が本降りになってきたので、クラスメイトたちがホテルに帰ってきた。男たちが女の子を庇うようにしてホテルのエントランスに駆け込む。ある意味……、
「バカやろ……!」「いいな……羨ましい!」という、相反する感情で見ているは宿泊客の人々か。札幌の雪の恋人たち……とはいかない、男ばかりのグループは女の子のグループに目を奪われるのが常だろう。
一人の男が呟いた、連れの男も感想を述べる。
「ケッ……みんな、口紅を塗っていないのか!」
「そうだね、ソース味が好みならば今がチャンスだろうて!」
対する女子……は、
「わ~……さいて~だわ。あんな男は転んで死んじまえ!」
「でも、身なりがいいから高給取りだよ!」
「きっと、ボンボンだから手を出さない方がいいかもよ。」
「……いいかも。……ねぇ~浮気し放題かもよ。」
「あんた、人世をやり直したいようね。」
「いいえ~、、、これからは個人の時代が来るのよ。若い時に謳歌しないでどうするのよ、枯れ花でいいの?」
「ジミ婚でいいわ……。あんなのは特に浮気するから私は要らない。」
「さ、シャワー浴びて紅を引いてさ、男漁りに行くわよ!」
「オー!」x3
「イヤ!」
露天で酒も飲んできたグループか、話が下過ぎて聞いて居られないわよ。
「亜衣音ちゃん、どうしたの?」
「うん、あそこのグループ五人組がね、下ネタ過ぎて気分が悪いの。」
「あ、そ、こ……?」
あの五人の女性グループを指さしていたのが、明子さんには解せなかったようだ。
「あんな遠くの声が聞こえたのかしら。」
「うん、良く聞こえる。そう言えば方々からも良く聞こえるよ、このホテルは。」
「……亜衣音ちゃん、それはあり得ないわよ。あんなに遠いもの。」
私には聞こえないようにう明子さんは呟くのだが、私には聞こえてしまった。きっと私が先に歩いていて、後ろの明子さんは私に聞こえないと思ったに違いない。だからそれにはスルーしたのよ。でも良く考えたら聞こえすぎだと後々になって気がついた。
どうしたんだろう私。巫女の力が強化されたとか無いだろうし、別の力が身に付いたとかも考えられない。このエレベーター掃除しているのかな。
「明子さん。臭いです。」
「人が多すぎるからでしょうね。って、私?」
「いいえ、ごめんなさい、違います、このエレベーターがです。」
「そうかな、普通だと思うよ。……(うんちかな!)」
私が部屋に入ると地獄のような臭いが立ちこめていて、
「うっ……クサ!」
「わ~お父さん。何というお酒を持ち込んでいるのですか!」
「あ、明子。これな、北海道産の日本酒だ、あの幻のな、千歳鶴の中取りだ。」
「宣伝広告費が頂けるのでしたら飲んでもいいわよ。亜衣音ちゃん、ここに居たら鼻が曲がるわね。」
「はい、明子さん。もう堪りません。」
「亜~衣音、俺もこの部屋から連れ出してくれないか。」
「カムちゃんは、お酒飲みなのにどうしてなの?」
「あ、、、この酒には俺をすり潰して入れてやがる。これだけは俺も飲めない。」
「俺って、、、コハク酸?」
「添加しているのだろうよ。もう酔っ払って動けない。」
そう言えばカムイコロさんの宝石は琥珀だったか。コハク酸は酒造りでは必ず生成される成分のはず。どうしてカムイコロさんが苦手なのかがイマイチ理解が出来ないな。
「いいから、、、連れ出して~な~、、、。」
「もう幽霊のような声を出さないでよね。もうすぐ宴会だよ?」
「ウップ……。」
「もう……引きずってもいいのね。」
「亜衣音ちゃん、ごめんなさい。そうなんだ思い出した、お父さんはね、あの銘酒に琥珀をつけ込んで溶かしているのよ。」
「低度のアルコール分では溶けないはずよね。」
「いいサプリメントが在るようよ。もっともお爺ちゃん用だけれどもね。」
「へ~そうなんだね。でもサプリメントって、何よ。」
「うん、亜衣音ちゃん、聞かない方がいいかもね。」
「、、、チーン! あ、家のお爺ちゃん。私が一度気絶したことがあった、あれだね、マムシ……。」
「あ~お爺ちゃんの洗礼を受けたんだ、ご愁傷さま!」
「いいえ~、それほどでもないわ。お婆ちゃんに助けらたから生きているかな。」
日本酒の中取りとか、コハク酸とか、私には関係ない。部屋の入り口に倒れた大きいヒグマは、大きい胸が敷居に引っかかるから私にも引きずる事はできない。時期に呼吸を始めるから、放置!
「綾香と彩香は大丈夫かしら。」
「智治お爺ちゃんが居なかったから大丈夫よ。もう部屋で休んであるわ。」
「だったらお爺ちゃんとこに行こうか。」
「そうだね。」
保護者の教師が酒を飲むとは、もうクビにしてもいい事案だわ。校長先生を接待する意味があるのかな。もう……お母さんが汚れそうで、私には耐えられないわよ。
この時は泉美ちゃんと水琴ちゃんも、避難させられていた。
「貴女たち、お母さんが大変なのよ。気にならないのかしら?」
「亜衣音ちゃん、この子たちにはまだ分らないわよ。大人になったらなったで大変なんだからね。亜衣音ちゃんも社会に出たら苦労する性格かもね。」
「ふぁ~!! そうだと思う……。」
今ではすやすやと寝てしまった妹たち、私も何だか疲れたのかな。私も一気に寝てしまった。……うるさいな~お父さんたちの声が聞こえてくるよ、
すやすやと六人の寝息が聞こえる、うん、気持ちがいい……。勿論、私は? 起こされずに夕食が……夢の中で食べていたらしいわ。
「ムニャムニャ、もう食べられない……。」と、この時、六人の妹たちからね巫女の力を受けていたんだよ、自分では気づいていなかったんだけどね。
夕食が過ぎて事件が起きた。荷物が届いたので私も起こされたわよ。
「なにこれ!……可愛い……。」
「そうね、超可愛いわ!!」
「まるでヨーロッパのメイドさんの衣装のようだね。」
「これを着て踊れるなんて、最高だわ!」
「……真っ黒……!」
「早く着替えようよ……。」
「フリルが多すぎて何処に脚を入れるのよ。」
「それは逆さまでしょうが!……ダイコン!」
「あ! アハハ……。黙れ! 青ダイコン!」
この間に私たちが送った荷物が届いて、お部屋に運び込まれていたんだ。八着のスクエアダンス衣装が取り替えられていたんだな。誰からだろうね。まさか……あの謎の二人が写真映えする衣装に交換していたとか!?
それぞれの箱に書いた自分の名前、探し当てて開けるとみんなして驚いたんだ、……真っ黒の衣装でメイド服にも似た、ゴシック・アンド・ロリータ。
白い景色に対する真っ黒な衣装は、それはもう遠目にも良く見えるものだ。
「お母さん、これ……何かの間違いかな。それともお爺ちゃんのイタズラとかだったら、着なくちゃいけないかな。」
「本人に訊いてみなくてはね。お爺ちゃんは何処かしら。」
「俺が探してくるが、すすきのだったらもう諦めるしかなか。」
時々父の口から出る博多弁、もう慣れたみたい。でもお父さんが何故に博多弁?……とは可笑しかー。
「お父さん、風邪引いちゃうから明日の朝でいいよ。皆は気に入っているし、それに今更交換できる衣装はないよね。きっとお爺ちゃんのイタズラよ。」
「それならばいいのだが、少し考えるな。」
「そうね、明日の朝に訊いてみます。」
「澪、私たちの事を誰かが思いだしてさ、用意させたんかな。」
「あり得るかも、あの時はメイド服を四人とも着ていて、大きく飛んで跳ねて踊って見せたわよね。」
「巫女の力を使ってね。ビデオに収められていたんだろうね。」
「ヤダ、誰によ!」
「さぁ~……。」
「友達が受け付けに居たわよね?」
「あ……そうだったね。」
まだまだ先になるゴスペル衣装は、2000年代になり、ストイリーファッションとして市民権を得る。今はただのメイド服だが、黒で沢山のフリル付きならば、もう立派な「痛ロリ。」だよ。ゴシック・アンド・ロリータ、……ロリイタ痛ロリ、なのか?
「私、黒の傘が欲しい……。」
「あ、それいいね、」
「私も欲しいな!」x6
小さなアンブレラを差したスケートの選手が、「雨に濡れても」の音楽で盤上で踊ったのを思い出す。
ボタン雪に降られて傘を差して踊るなんて……最高よね!
黒の日傘なんて今時は在りはしない。だから地元の女子高生の傘を借りたのよね、色とりどりが良かったわ。壊して弁償する事にもなるのだが。




