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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第九章 私の……巫女の力が無くなる日

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第121部 さっぽろ雪祭りと、私の巫女の力が無くなる日……その六


 翌朝は早くに目が覚めた。それで寒い台所へ行き母の手伝いを始める。


「お母さん、おはよう。」

「あら、珍しいわね、おはよう。」

「うん、お手伝いしたい。何が出来るかな。」

「そうね、妹にお乳をあげるのを手伝って。」

「母乳……?」

「いいえ、哺乳瓶でいいのよ。沢山飲んで……直ぐに出すのよね。」

「うぎゃ~、ご飯前だよ、よく平気でいられるわね。」

「あら亜衣音だって……そうね、」


 お母さんは少し気分が落ち込んだ様子。私と母の黒い歴史を思い出したに違いないのだが、私はもう覚えていないよ。でも麻美お母様から聞いた事は覚えているよ、お母さん。


「うん、いいのよ。気にしないで。忘れたわよ。」

「そうね、ありがとう。でも、私は忘れていません。」

「う~……でも、ごめんなさい。いくら小さい時とはいえ、本当にすみませんでした。」

「アハハ……冗談よ。」


 当時、私が幼児だった時に、お母さんは誰? とかなんとか言っていたようだ。


「お、何だか楽しそうだな、今日は雪でも降るのか。」

「そうだよ、私に春がきたんだよね、お母さん……。」

「はいはい、どういう春なのかが疑問だけれどもね。」

「へ~仲直りしたのか?」

「大地、顔も忘れたの。」

「おいおい、俺の息子だぞ。追い出すなよ。」

「えへへ……、」


 昨日は大型トラックに荷物を積ませて先に札幌へ。今日は各個人で荷物を纏めるのだよ。明日は上野から夜行列車で行くのよね、さっぽろ雪祭り。


 さっぽろ雪祭りは初日から見学なんだ。スクエアダンスは二日目からの参加だよ。だって衣装が届いていないから二日目なんだ。


 二十七日、上野に各自で集合よ。夜行列車は大変、一両の貸し切りではないのよ。も~最低の虫食い状態での席だったんだ。クジビキアンバランス、私はオジサンの横に決まったわ。いやジジイだわ、あらら……校長先生……?


「亜衣音、車両の中心だから一番安全だろう。」

「で、お父さんは何処よ。」

「別の車両で一番の問題児の警護だ、カムイコロさんも手伝ってもらってな。」

「へ~大地だよね。」

「まぁな、」


 ジジイは早々に退散させてしまって、前後で元のクラスメイトで占拠してね、お母さんから叱られて、皆が頭にゴツンと、やられたな。


「早く寝なさい。」

「無理だよ、初めての修学旅行だもん、眠れない。」


 他の乗客には席を替わってもらってね、大いに迷惑を掛けていたんだ。



 1971年1月28日



*)札幌……到着……


 トンネルを過ぎたら雪国だった。短いトンネルでもままある事だ。車でトンネル過ぎたら積雪、直ぐに右カーブ、それは昨年に経験した。


 今年は山の紅葉が綺麗だったから積雪は無いのよ……。細君の言葉だ。今でも進行形で進んでいるが、高い山にはうっすらと……バーコードが在ったり?


 大寒、、、寒かった。山が少し白かったよ。


 一晩で七十cmの積雪で私は驚かないのよ。だけどね、外国育ちだった帰国子女の皆さん、こめかみがピクピクしていたよね。でも直ぐに顔は緩んでいたからいいかな。あ、列車から降りた時にピクピクだったかな。


「ま~懐かしいわ~。雪女になって帰郷するなんて、考えてもゾッとするかも。でもホント! 懐かしいわ。」

「わっ……、」

「あらあら穣さん、先に転ぶなんて


                            無様ですわよ。」


「お母さんこそ気をつけてよ。もしもの時は私が下敷きになるから早めに教えてよね。」

「出来ますかいな~そないな事が!」

「麻美お義母様が来ています。早く行こうよ。お父さんなんて放置よ。」

「はいはい、でも娘たちは何処かしら。」

「もう改札口です、ほら、あそこに。」

「あらら、娘を転がしています、まだ早いわよ。」


 赤ん坊を抱いたから身体の重心がとれないのか、美保が滑ってやんの。でかいお尻が痛いだろうね。二人して泣き出している。可笑しい……。

 

「もう小百合が心配だわ。早く宿に入りたいわね。」


 トラックには衣装だけでは無いの、着替えだって入れているのよ。美保はコートを濡らしたから大丈夫かな。そんな美保から小百合を取り上げる人物がいた、麻美さんだ。


「こら~バカチンが~、赤ん坊抱いて転ぶな、殺す気か!」

「す、すみません。」


 赤ん坊を軽々と抱えながらも、美保さえも抱き上げてしまうほどの力持ち。お歳なのに凄いな~、感心しちゃった。


「あ~ぁ、綺麗なコートがこれでは台無しだよ。で、他のみんなは何処だい。」

「あそこにお母さんと亜衣音ちゃんが居ます。」

「あ、あれね、ありがとう。」


 私が大きく手を振り、ホロお婆さまはぺこりとお辞儀をする。桜子お婆さまは当然とばかりに麻美お母様を呼びつけているのよ。これで性格が判るというものだね。美保も麻美さんに付いてきた。皆から置いてきぼりにされて寂しいのよね、み~ほ。


「美保……その靴、」

「え~せっかくだから綺麗な靴を選んだよ。えへへ、いいでしょう。」

「そうね、革靴よね、随分と早死にしたいようだね。」

「え、、、どうしてよ。」

「靴底が平たいだけだから美保、帰り着くまで何度転ぶか数えてみたい。」

「やだ……ウソよね。」

「先生が言っていた注意事項、聞いてはいなかったわね。」

「あたたた、そうだね。……ヒャッ!」

「あ、二回目……。」

「んも~早く起こして、」

「あいよ……きゃっ!」

「亜衣音ちゃん、転んだ……。」


「アハハ……。」x2


 父はおいてきぼりは当然だとしてもさ、娘まで置いていく我が家族たち。もう目に入らないのかな。おいてけぼりとも言うが、現、東京都墨田区のため池がホラーの発祥らしい。う~近くかな……。


「お前ら……な~。転んで笑えるんだからいいよな~。」

「お父さんは、はは~ん、泣きたいほど痛かったんだね。」

「余計なお世話だ、三本目の尻尾をモロに痛めた。」

「下手くそなんだ転び方は。前だったら良かったのに!」

「バカ言え! 当たり前だ、東京生まれだからな。」

「江戸っ子で、序でに墨田区だったら笑える……。」

「そりゃ~失礼に当るというものだ、謝れ。」

「墨田区の皆さん、すみません。」


 ピコピコと歩くお父さんが可愛そう。同じく美保の綺麗な白のコートには尻餅の跡でこれまた可愛そうなんだな。でもここ札幌では日常だからこれで、よそ者だとは直ぐに判別がつく。


「なによ亜衣音ちゃん、」

「ううん、今日は観光客で超多いからさ、直ぐにお仲間が増えるから安心していいよ。笑われないから大丈ブ、ブッ……。」

「もう笑わないでよ、笑わないで下さいませんか。」

「はいはい、右手を持ちましょうか? お姫様!」

「うん、ありがとう。」


 美保は私に荷物を押しつけてくる。両手がフリーになった美保は、これまた身体をフラフラ……、両手を宙に舞わせて、まるでチークダンスを踊っているようだわ。


 私は小声で、


「笑える~……。あらあら三回目。」


 これならば雪の上を歩くコツを教えたがいいのかな。明日のスクエアダンスは転倒する人多過ぎでしょうね。でもね、伊達に大きい荷物を輸送している訳ではないのだよ!……秘中ありだよ、ね? お父さん。後ろでお父さんが返事した。


「あいや~……イテテ……。」



 ホテルに着いて各自の点呼に居ない生徒はいない。荷物を置いて皆はグループ毎に散っていく。ただ一人、私を残して……。ダンス用の靴は今晩に着くから、皆……転ばないでね。


 私は家族と仲良くお留守番なのよ。もう~外出させないという両親の方針には逆らうことさえ出来ないよ。くそ~バカ大地、ひかるの手を引いて……転べ!


「巫女魔力、転倒!!」帰ってきたら何回転んだのかを聞くんだ……武勇伝をね!


 麻美お母様を中心に、いや明子さんの双子を中心に座論梅状態だな。私はね、妹の二人にお乳をあげてね、少し離れた処から皆を見ているのよ。それだけでもう十分に幸せなんだ。でも徹さんは外れているよ。


 私は、そうよ、妹にお乳をあげるの。


「ほらほら、零さないで飲んでね。」

「バブ~、」x2

「う~出来ないよ、二人一緒にミルクなんてあげられない。というか、お母さん方が器用なんだ。」


 母は二人を向き合わせるように抱いて、哺乳瓶を胸の前にくるようにして授乳させている。これはもう……神業よね、あの姿はマリアさまでもまね出来ないよ。そんなこんな苦労を私がしていたら、明子さんが手伝ってくれたんだ、ありがとう。



「亜衣音ちゃん、どうかしら双子の苦労が理解出来るよね。」

「うん、できる。二人を平等に育てるとか、もう神業よね。」

「うふふふ、そうね。なにも双子だけではないのよ。兄弟や姉妹にね、それこそ平等に育てないとね、私みたいな跳ねっ返りに成長するものよ。」


「へ~知らなかったな。明子さんは偉い! 私の勉強見てくれたからね。」

「そうね、長女というのも得でもあるけれどもね、次が産まれたら損する方が多いものよ。だから悪が出来るのね。」


 決してそのような事はないのだが、お母さんの育て方が一番大変なんだよね。跳ねっ返りに育たないように、と。最初に私が反省すべきかしら。


「綾香と彩香はここに置いて、私たちだけでレストランへ行こうか。」

「うん、行きたい。白クマパフェ食べたいよ。」

「無理だよ、亜衣音ちゃんは知らないんだね。」

「なにがよ、どうして?」

「白クマパフェは、南国鹿児島が発祥よ。ここではせいぜい雪にあんみつを載せるのが関の山かしら。」

「そうなんだ、随分とお安いパフェなんだ。明子さんが作るとそうなるんだね。」

「随分と作って食べたわ。砂糖も掛けたりしたかな、行くわよ。」


「徹さん、二人に、いいえ四人に付いていって頂戴。」


「そうだね。家族を守らないとね。」

「お願いします。」x2


 最後は私の両親の言葉だった。まだ昼過ぎだし安全だろうと思われる。私だってもう腹ぺこなんだ。定食を二人前……。


 外に目をやると、行き交う人々が多いこと多いこと。ホテルのレストランで定食とは、育ちがバレてしまいそう。


「もう昔以上に人口が増えているんだね。」

「でもね、苫小牧は今も変わらないよ。」

「そうだといいね。」

「亜衣音ちゃん、そんなに食べて平気なの?」

「だって私だけが、ババだよ、今頃は皆、露店で美味しいもの食べているよね。」

「へ~やけ食いなんだ。」

「うん、最近は食べる量が増えてね、制服が着られなくなったな。」

「帰ったらお手伝いするよ、制服の手直をしようね。」

「はい……。」


 暫くしたら、


「あら、雪が降ってきたわ。」

「だったら今晩の石像の力作は拝めないよ。」

「誰かがホウキで落とすだろう。そんな心配いらない。」

「そうね。どうせ私は、夜も同じく雪隠詰せっちんづめだもの!」

「お前、埋められるのか!」

「せめて神隠しと言う方が可愛いぞ、亜衣音ちゃん。」


 小百合ちゃんがもぞもとして、私の乳房を求めていた。お腹はいっぱいのはずよね。


「はいはい、もう寝てなさいよ。ここではお乳は出せません。」

「オギャー、オギャー、」x2

「あらあら、水脈みおちゃんまで起きちゃったわ。」

「亜衣音ちゃん、お部屋に戻ろうか。」

「はい、明子さん。」


 と言うことでネタ探しの動画鑑賞……。う~私もさっぽろ雪祭りに行きたくなっ

てもうた。行きたい……。LEDで綺麗だろうな。

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