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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第二章 親子(父と娘)……

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第12部 ホームルーム


 五限目の英語は入れ替えのホームルームになる。 


*)投票選挙


「おう席に着いたか……昨日はすまなかった。ちょっとのっぴきなぬ野暮用が出来てな、ついサボってしまった。今日は英語をやめてホームルームにする、いいか~。」


 杉田先生は大きな紙を丸めて入って来る。


「先生、」

「なんだ田中。」

「俺、立候補します。」

「なんだ、俺は何も言っていないぞ。委員長になりたいんだな。いいぞ後で投票で決める。投票数の多い者が委員長だ。」

「はい!」

「それにだ、いちいち立たなくてもいい。」


 田中くんは喜んで席に着いた。また他の者はつれづれに英語の教科書を机の中に仕舞い、それを確認したかのように小さい紙切れを、昨日のテスト用紙のように最前列に勝手に置いていった。亜衣音は最後だから配られる用紙の特殊性に気付くのも一番最後になる。


 回ってきたのはどう見ても投票用紙だ。丁寧にホッチキスで左上を閉じてありその横には委員長、二枚目には文化委員、三枚目は図書委員……と続いていた。同時に先生は黒板に各役職を書いていて委員長の横には『田中大地』とすでに書かれてあった。


「先生~田中くんの名前を書いてありますが、立候補されたからでしょうか。」

「そうだ、お前らも好きなものに立候補しろ。」

「先生、前を向いて話して頂けませんか。」

「無理言うな、俺のやっている事を考えろ。」


 杉田先生は席順に名前を書いてあった大きい用紙を右の壁に貼り付けている。そうだった自己紹介もまだなのだ。名前なんか数人が呼ばれたくらいでまだ知らない。


「ここにクラス全員の名前を書いておいた。」

「え~、」


 誰も気づいてはいない、欠番のはずの45番目の名前も書かれていた。



「そうだ避けては通れぬ地獄の三丁目だ、名前と好きなものでも言って終われ。」

「……。」

「それとだな……これには意図がある。ま、邪念だが。各人の自己紹介を聞いて推薦する役割に充てたい者を考えるように……いいな!」


「え~、」x?

「それ始めろ、右上の青葉からだ。」


「は~い……青葉です。好きなものは……先生です。」

「おう……参ったな、俺でもいいのか。」

「違います中学の国語の先生です。」

「するとなにか? 俺は引っかかったのだな。誰だ~この入れ知恵をしたのは。青葉が考えたのではないだろう。」

 

 アハハ……とクラスで数名の笑いが起きた。


「次、江頭だな、俺はもう何も言わないからな。」

「はい江頭です。嫌いなものは数学です。」

「……。」


「上田です。一番遠い村から来ました。まだバスも走っていません、船で来ました。」

「お~い八丈島かよ~、」

「うるさい!」


 またしてもアハハ……と、クラスで笑いが起きた。以後は名前と出身を言うだけになってしまう。殆どは勿論東京だ。だが私以外にも居た。


「白川です、東京産まれです。(ま~ウソでもないか、)」

「立花 あおい、立花 みどりです。二人揃って、福岡です。」x2


 息の合った二人でしかも面白そうに感じた。そんな感じで自己紹介は終わるも教室の外から小さい声が聞こえてきたのはドアが少し開いたからだ。先生にしか聞こえてはいないのだろう。



「すまぬ一人遅れて来たのがいてな……入ってこい、」

「はい、」

「え~雨宮 あい。」

「藍ちゃん!」

「だろう?……サプライズだ……、」

「平気です、雨宮 あい。つい先ほど……北海道から走って来ました。」

「え~!。。。。」

「廊下だけだろう!」

「アハハ……、」x?


 亜衣音と未来にはとんだサプライズだった。


「藍ちゃんと未来みくは親友だったの?……。」

「何だ知り合いか、席は白川の横だ。」


 空席だった席に45人目が着席した。


「自己紹介が終わったが先に投票選挙になる前に立候補は……いないか。」

「シ~ン。」

「お前らにはシンキングタイムを与える。」



*)数学のテストの点数


「投票を誰にするのか決めるのには時間がかかるだろう。先に昨日のテストを返す。俺は寝ずに採点したのだからな間違いもあるだろうが気にするな。成績が良かった者から返したいが、ここは席順にしておいた。また同じだ。」


 杉田先生はそう言って、また前列の席に7枚の人数分を置いていく。


「わ~……。」

「何だ、喜多は50点で喜んでいるのか。」

「いいえ、ここに100点があったから。」

「そうか、だがそいつには俺は90点に減点しておいた。」

「でも、全問に赤丸が書かれています。あ、点数が書かれていません。」

「だろう?」

「きゃ~私たち、満点!」x2

「私、最悪。」

「いやよ、見ないで。」


 などなど、方々(ほうぼう)から好き勝手に声があがる。


「あ、私。さっきは私の事だったんだ全問正解らしいわ。本当だ点数が書かれていない。」


 と、亜衣音は呟く。


「受け取ったな100点が六人いた。明神、雨宮、立花の二人、田中、お前は唯一の男子だな。あ、あ、と、青葉。だが残念賞が一人いてな……白川だ、お前には裏面に点数を書いた。」


「な、なんですか、この90点は!」

「声が大きい。お前、最後の問題だが俺をひねらせてくれた。正解だが気に入らないので減点十だ。よくも俺をコケにしやがって。」

「あはは、苦労されたのですね。すぐに計算は出来るのに。」

「そうなんだよ見ただけでは引っ掛け問題とは思えなかったよ。参った。」

「適当に分数計算方程式にしただけです、問題をここに書きますか。」


「いやいい俺にはこの駄作に分数の文字が書けないからな。また分かって言っているのだろうが。」

「はい、」


 分数を書くにしても(x+33)(・・・)=32 (x 23 −5) のようになってしまう。横棒が書けないのだ。



「亜衣音さん貴女はバカですね。どうして自信を持って元気よく返事が出来るのでしょうか。いいですわ、私もお付き合いいたします。」

「どうして藍がそう言うのよ、分らないわよ。」


「おうおうおう雨宮、それ以上白川を諭すのはやめてくれ。俺の計画が~、」

「もう理解されたようですわ。……ですよね? 皆さん。」


「そうです、お名前書かせて頂きました。」


「え~何に、何を書いたと言うのよ。教えなさい。」

「白川さんは委員長さん。決まりです。」

「え”~~~~!! そんな~~……、」


「白川、ま、そういう事だ。俺の仕返しはねちっこいぞ。」


 この一言が殺し文句になってしまうのだ。恐るべし杉田 創!


「杉田先生。昨日は放課にされた理由がそれでしょうか。」

「あ、あれは~言いたくはない。個人情報保護だな。」

「白鳥さん、あれは私の父がこの学校に怒鳴り込んできたからですの。昨晩、それを聞いてとても恥ずかしかったですわ。」


「え”、ウソ!」

「まぁ~本当だ。他にも見えたからな。その時に数学の問題も持ち帰りしてもらったのだよ。例文を添えてな。」



「先生~私と白鳥さんは委員長に立候補します、イヤとは言わせません。」

「え~、やだ~!」


「分った。では次点が副になって貰うが、それでいいか。」

「はい、」「やだ!」

「誰か……開票しろ!」

「はいはいはい……、」


 田中、雨宮、白川の三人で委員長の座をかけて投票となる。私は雨宮さんの誤解を解きたいので小声で話しかけるのだった。


「雨宮さん、私……父の性に戻りまして今は白川と言います。」

「……? あ、そうでしたの、知りませんでした。」

「うん、よろしく!」

「白川さん、決まったようですわ。」


「あっあ~ここに正の字で書いたように残念だな白川、おめでとう。そして田中、残念だったな。」

「うぐ~!」

「いいよ、どうだって!」


 杉田先生は二人に同じ様に残念だったと言うのよね、正しく捻くれ教師よね。


「田中、何だか嬉しそうで良かったな。」

「どうでも!」


「そうしたら雨宮、他の委員になりたいか。」

「文化委員になります。」


「だったら残りを投票してくれ。二番目が副だな。」

「二つの委員で重なったらどうしますか。」

「どうって、本人に決めてもらう。そのようなことはないよ。」


「あ、でしたら私たち二人で図書委員に立候補します。逃げられないようですので、先生?」

「そうだな、姉妹でバラバラもいいだろう……どうだぁ?」

「イヤです。」x2

「分った分った。皆、それでいいか!」

「異議な~し。」


「では書いてくれ。次席は副だな。」


 学級委員。白川、田中。

 風紀委員。荻野目、佐野。

 美化委員。青葉、木村。

 放送委員。広田、明神。

 図書委員。立花の姉妹。

 文化委員。雨宮、山本。


 と、決まった。


 無事にホームルームが終わった。とっくにチャイムも鳴っていたのに5分も休み時間に食い込んだ。


「孤高の女王様に決まったね。」

「茶化さないで……。」


「う~私、こんな性格だなんて~思いもしなかったな~。」


 私が憧れの東京に出て来たからかもしれない、何に対しても嬉しくて燥いでいたのだと推測した。人って環境により大きく変われる事を知ったのだ。藍は藍で東京へ戻れて喜んでいるしね、苫小牧で見ていた藍とは少し大きく成長したように見受けられたのだ。



「そうなの……かしら?」

「藍ちゃん、いつこの学校に転校が決まったのよ。」

「それは二日前に父が札幌の大学から帰って来たから、」

「いくら何でも昨日ではないよね。」


「ほら、これを見て!」

「そ、それは~転校許可書。うっわぁ~!!?」


 すると杉田先生の野暮用とは、藍の編入試験に携わっていたのだと今になって気がついた。


 本当に昨日の日付であった。藍の父は札幌の大学に勤めていたという事を初めて知った。また藍には妹が居て最初は母と三人で暮らしていた。藍は高校が決まってから苫小牧市に独りアパートで生活していたとも話してくれた。しかしだ、苫小牧でリカちゃん人形のお話はウソだったのよね? それを考えていたら藍に妹が居た事をスッカラカンに忘れてしまう。


 授業開始のチャイムが鳴っても女の子たちは鳴り止まないのだった。


「それもこれも貴女が『孤高の女王様』だったからよ。私は仲良くしたかったのですけれども、貴女が私を受け入れなかったからです。」

「恨んでいたのよね、最後は喧嘩もしたし。」

「わ、な、なんで二人が喧嘩してんのよ。ねぇ、どうして!」


「未来ちゃん気にしないで。もう二人仲良くなっているのだもの。」

「それはそうだけれども……私は理由を知りたい。」


「この亜衣音さんは鷹だったのよ私の性格は未来も知っているよね、参考書も沢山送ってくれたしとても助かったわ。」

「藍ちゃん一杯勉強したんだ。」

「でもね亜衣音さんには最後まで敵わなかったの。それでつい喧嘩を売ったのよね。中学を卒業するまで長かったなぁ~。」


「そんなの私には関係ありません、知りませんよ。」

「貴女はそうよね~でも買ってくれたし、負けてもくれたわ。」

「亜衣音さんは負けたの?」

「いいえ泣いて帰って行ったけれども、あれは間違いなく嘘泣きだった。もう許しているから白状なさい。」


「テヘッ!」

「まぁ!」x2

「今日はこれ位で許して!」

「亜衣音さん私もだよ!」

「え?……、何が??」


 授業開始から大凡の十分遅れで先生が教室に入ってきた。何でも杉田先生の計らいなのだとか。でもでも誰に対しての計らいなのかしらね。


「遅れたわね、皆はお喋りは済んだのかしら。」

「起立……、」

「やだ、現国の冷血女教師!」


 国立は某大学の国文科卒とか……この先生も何だか大変そうだわ。


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