第112部 女たちだけで……団らん……よ!
1971年1月6日
*)双子の姉妹はいつまででも双子だ。体型も世につれ同じなのだ!
「へ~お母さんが二着目に着ていた、ヒラヒラの洋服だよね。お母さん……姉妹においては随分と意地悪なんだね、澪お姉さまの体格に似合ってないよね、これ、お母さんが狙っていたんだね?」
澪お姉さまは少し太ったのか、邪魔なものは腰を振って横にずらすという芸を身につけている。飯台でも椅子でも、果ては徹さんでも……腰を使って撥ね除けるのだった。ヒラヒラの洋服とは、別な意味でも値札がヒラヒラしていたな。
「これが大人の社会なのか……お~~~イヤだ! 値札付いてるし!」
「あら、ヤダ……!」
「お母さんも澪お姉さまも、同じ体型に見えるよね。大地、そう思わない?」
お母さんと澪お姉さまは姉妹……なのだが、初めて着る服によってか、まるで別人のように感じてしまった。今までが姉妹で服を回していたからだよね?……この貧乏人が!?
「あら亜衣音、着古した服を姉妹で着て何が悪いのよ。」
「うん、だってどうかした拍子にさ、どっちがお母さん……なのか、解らなくなるんだよ。だからさ、大地なんか声を掛ける事がないでしょう?」
「あら大地くん、そうなの?」
「は……い、いつも呼ばれるまでどちらがお義母さんなのか解らなくて、俺から声を掛ける事が出来ません。間違ったらどうしようかと、先に考えてしまってどうしてもの時は亜衣音に頼んでいます。」
「澪!……ちょちっと!」
「なによ沙霧。」
「今日からあんたも大地くんの母親になりなさい。男の子が居ると母も綺麗になるらしいわよ!」
「へ~そうなんだ、今度誘惑しちゃおうかな!」
「ダ~メ~! 澪お姉さまも飲み過ぎです。妹たちにもアルコール分を含ませて飲ませる気ですか!」
「うふふ・・・。亜衣音ちゃんも焼き餅を焼くんだ、……か~わい!!」
「バコ~ン!!」
「痛いだろが、なにしやがる。」
「大地が悪いのよ、他の女に声を掛けないで!」
「ひで~な~、そんな事出来る分けないだろうが、それに、あの双子……熱湯でゆで上がってきたぞ。」
「あ!……そうだった。碧と翠を風呂に沈めていたんだったわ。ホント! 蟹みたいに真っ赤だわ。」
お爺ちゃんが湯を沸かせておけ”と言うのが悪い。湯の温度とはどれくらいから言うのだろうね、大地。
「ショウコウさんの教団よりもマシですわ、お姉さま……。」x2
この双子、いったい何処の教団で修行してきたのだろね、胡座をかいて宙に浮くという修行だったら笑える。宗教とは酷いもので、かのローマ帝国もキリスト教を受け入れて東西に分裂し、やがては消滅していく。ローマ帝国の文化は全てを切り捨てるというのだから、当時の教会の威厳は恐ろしいもののようだ。
「ほらほら、冷たい水を持ってきたわ、飲んで、飲んで……。」
私は湯上がり冷たい水をコップに二つを用意して、立花の双子に差し出した。
「お姉さま……ありがとうございます。」x2
そう言って私からコップを受け取った二人からは、身体の熱が伝わって来ないのはなぜだろう。頬はあんなに朱いというのに。
「お姉さま……お酒ではないですか!」x2
「どうして……?」
「お風呂に浮かせて頂いてきましたが、まだ飲み足りません。」
「あんたたちは~……しばいてやろか!」
「え~、お酒をしばく……の間違いですよね?」
「亜衣音、負けたようね。」
「う~お母さん……、この二人にお酒を飲ませてもいいの?」
「大丈夫よ、親がお爺ちゃんですもの、寛大ですわ。」
「へ~……大地、風呂行くわよ!」
「イヤだよ、俺になにされるか、解ったもんじゃない。」
ここで澪お姉さまが助け船……なの?
「亜衣音ちゃん、妹たちを全員お風呂にお願いね!」
「ギャビ……!」
「おんぎゃ~、」X6
「ほら、全員ち~ママとお風呂に入りたいそいうだよ。」
「大地……行くわよ、もうヤケクソよ!」
大地が中間にたって妹の受け渡しをして、私が洗い子役。六人も居ればゆうに小一時間では済まない、私の方が茹で蛸になってしまう。これでは堪らないので、
「大地、碧と翠の双子を連れて来なさい、序でに牝剥いておいで!」
「ラジャー!!」
直ぐに双子は悲鳴と共に風呂場に放り込まれてきた。可愛そうな大地は顔面に多数の爪痕が……。(牝にひんという読み方がありました。「引ん剝く」よりもいいかもしれないと思い書いてみました。)
家の風呂は、女の六人は入れなかった……。湯冷めした女の子の三人は風邪を引いてしまう。私は卵酒を作って飲む……三人前も作ってしまうが。
「明日は転校初日で入学式も兼ねているのよね!」
「お姉さま……だけ、ずるいです!」X2
ずるいと言われて双子にも卵酒を飲ませる。だが、二人はイヤな顔はしないものの、その後の会話が微妙にずれていたのは、私だけだった。
若い女たちは男の宴会には向かない。酒を飲む訳ではないのだ、つまらない。食べるものを食べたらもう、おさらばでいいわよね。そういう事を双子に話したら、
「私たちもお姉さまと一緒に寝ます!」
「いいわ、でもお布団は大地の分しかないわよ。」
「いいですよ、二人で仲良く眠ります。」
そう言いながら立花のもう白川に変わったかな。双子はそれぞれが学生カバンを持って私の部屋にやって来たのだ。制服は母のお化粧部屋に掛けているという。
母があたりめを持って部屋に遊びに来た。何か裏があるはずのなだが、最後まで読み取れなかった。
この時は姉妹で服を交換していたらしい。事実は澪お姉さまだったとは……。そうよね、お母さんがあたりめを持って来るはずないわよね。
「これね、あたりめをバターで炒めたのよ、とても美味しいのよ!」
「これって、徹さんの好物ですよ~。」
「へ~、徹さんも、案外楽ちんなんですね。亜衣音ちゃん良く知ってたね。」
母は私にちゃんを付けて呼ばないのだが、服ですっかり騙されていた。あ、私にご機嫌とりするときはちゃん付けで呼ぶこともあったかも。
「明日は新しい学校だから、もう休みなさい。」
と言って部屋を出る母なのだが……、私は未だに騙されている。こんなのは初めてだよ。
「そうね、家から高校へ行く方がいいわよね。」
「はい、お姉さま……ご一緒させて頂きます。」
「今晩だけだからね、二日も大地を放っていたら、あいつ、オオカミに変身するのよね。」
「うらや……ましいです、今晩……、」
「ダメよ、大地は貸してあげないからね、夜這いをしたら許さないんだから。」
「はい、明日が楽しみです。」
夜這いを仕掛けたのは大地の方だった。夜中に一騒動が起きる。
翌朝……。
「さ、お姉さま……一緒に登校ですわよ!」X2
「え”””……!」
狸ジジイだけあって、最後まで秘密にされた双子の転校。笑うジジイの笑顔の裏に隠された秘密……が、まだ幾つもあったのだ。
国際文化大学高校・・・楽しみだな!
「お母さん、あたりめのバター炒め、美味しかったよ。」
「え……? 何の事かしら?」
「え……? 何だろうね。」




