表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第九章 私の……巫女の力が無くなる日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/417

第111部 家族で……銀座……


 1971年1月6日


*)銀座……二人のデート……のはずが


 明日の転校兼新学期に向けて大地と二人で服の購入へと行くのだが、父としては未だに私が本当に転校してくれるのか、信用仕切っていない素振りなのだ。


「亜衣音、お父さんは明日からの打ち合わせに国際文化大学高校に行くが、一緒に行かないか。」

「うん、銀座までおねがい。」

「バカ、独りで行ってろ!」

「やだ、大地と行く。お金頂戴!」

「ギャビ……二万円……、行ってこい、聖徳太子うまやどのみこ!」

「ありがとう……。(巫女の私に喧嘩売ってるの?)」


 と、言うことで軍資金の二万円を握り締めて、イザ!……ホコ天へ! お父さんとお母さん、それにカムイコロさんが小さいマイカーに乗って出かけていく。ならば私と大地は乗れないよね、明日に延期したんだ。



 翌日になった。私はルンルンになって大地に声を掛けようと探していたのだが、見つけた部屋は、な、なんと、母の化粧室に居た。その小部屋から大地の代返が兎に角返事が返ってきたのだ。なにかな~……?


「大地~、行くよ~!」

「は~い、亜衣音、もう少し待って!」

「お、お母さん……?」

「そうよ、今日は穣さんを蹴って亜衣音ちゃんと銀座に行くことに決めたの。私だってのんびりと買い物に行きたいわよ。」

「へ~そうなんだ。で、大地は?」

「おんぶに抱っこ、今二人を抱いていくわよ。」

「?……、もしかして、前と後ろなの?」

「私、疲れるのはきらいなの。亜衣音ちゃんにも後でお願いね。」

「私と大地の娘みたい、ヤダ!」

「ふふふ……、お似合いだと思うよ。」


 私たち五人が玄関先で屯していると、影からなにやらの視線を感じる。きっと澪お姉さまや明子さんらが物珍しそうに見ているに違いない。それぞれに双子が出来てしまった、もう……自由が利かない。定期検診では良くカムイコロさんが引っ張り出されていた。「俺の昼寝の時間が~……。」と。いつもぼやきながらも付いていくのだから、カムちゃんは優しい。頼まれたらイヤとは言えないのか、私は何にでもイヤだと言う。大地も家族の頼みには絶対にイヤだとは言わない。


 あの二人も自由にお出かけしたいよね、大地。


「お前、全然言うことを聞かないだろうが。」

「え~なんで。これって、娘の特権よね。」

「バカ言え、それだけお前が怖いのだろうよ。」

「怖い?……私が?……なの?」

「そうだろう、昔の行いを思い出してみろ!」


「そうよ~、大地くんは良いことを言うわね、ありがとう。」

「え~お母さん、なによそれ。もう昔の事は忘れたわよ。でも、どうして大地が私の汚点を知っているのよ……! ね?」

「へへ~ん、内緒さ。」

「うんうん、内緒だよね。」


 烏丸から電車に揺られてはるばると銀座まで出てきたが、人ばかりで主に若い男女はいいとしても、グループで道の真ん中を歩くのは良く目立っていた。


 中には団体さんで……鼓笛隊とかもうあり得ない。主に大地がフザケタ格好した人をバカにしているが、


「うんうん、今の大地もそう変わらないからね。」

「いいや、この銀座では俺が一番目立っている。あ~俺の人生、こんなに目立っていいのだろうか。」

「大地くん、ごめんなさいね。直ぐに亜衣音に替えるからさ。」

「え~、やだ。重たいもん。前に後ろにさ、赤ん坊……。」


 この二人の赤ん坊、泣きもしないで周りを黙って見つめている。きっと頭脳優秀なのだろう、私の巫女の力よ!


「バカなの、亜衣音ちゃん……。」

「もう、酷~いよ、お母さん。娘にバカとはなによ。」

「え~良いじゃ無い。ほら、もうすぐ若者のお店に着くよ。」


 勝手知ったる銀座だという、沙霧さんだ。昔を思い出しては一番にはしゃいでいるのが、顔や目つきを見ているだけでその強い思いが伝わってくる。これでは子供をそっちのけ……か。


「大地、子供がひとり増えているんですけど。」

「大きい子供だからさ、いいだろう俺たちは別行動で!」


 二人でさっさと先に進んでいたら、暫くしてデパートの恒例のアナウンスが聞こえてきた。


「迷子のお知らせです……、」x2 「お客さまのお呼び出しいたします。」x2


「ほら、もう呼び出しだぜ。」

「そうだね、水脈の名前を呼んでも、この子は歩けないよ。」


 人並みに揉みくちゃにされれた沙霧さんだ、すっかり人に酔っていた。朝一に頑張って綺麗に整えたであろう黒髪に、方々から幾筋もの髪の毛が跳ねている。


 私たちを見つけて発憤するのか……沙霧さん。



「もう……これしかない。最上階のレストランよ!」


 デパートの定番だ。屋上には幼児を相手にした遊園地、遊具が置いてある。そこを目指して進む家族連れの人波。そんな人たちを見つめていたら母がさっさと注文をしていた。レストランの入り口で既に決めていたと思われる、冷たくて美味しい綺麗に見えるアイスの類い。


 主に蝋細工で作られるメニューのサンプルだ。今では化石になってしまっているのだが、一世を風靡したサンプル業界だ。レストランで使用するお皿や食器をも利用して、食欲をそそる……綺麗なサンプル。


 サラダのレタスだって本物ソックリ。これは緑色に染めた鑞を熱して水に流し込んで作る。他のメニューにおいても色んな物を使って、実際にフライパンで炒めて作るものもあるのだ。宙に浮いたスパゲッティのフォークは、最初こそ驚いて見ていたが、何処にでもある形になってしまった。



 母は、お母さんは、沙霧さんは、この人はもう、ご満悦……なのだ。


 もう、女の子の食べるパフェを見て、匙を突っ込んで、口に運んで、ほころびる母の顔。すっかりと童心へ戻っていた。


「俺も食いたい。」

「いいわよ、そこであ~んしてなさい。」


 食堂の椅子にまともに座れない大地は、背もたれを右にして座っている。背中の水脈が邪魔で上手く座れないのだ。だから大地だけは横を向いて……私の方を向いて座っている。アイス一匙を大地に口に入れる間に、私の口には……二匙を運ぶ。


「俺、恥ずかしいよ。」

「これでは……本当に子連れの家族みたいだね。」


 パワースポットで気力を満タンに充電できた沙霧さん、この後の買い物が凄いのだ、私と大地の服は適当で、多くの服を買い込んでいく。大地は何処かにクラスメイトが居ないか探しているありさまだ。大地と一緒になって小さな口を開ける妹の小百合が……かわい……そう!


「お母さん、そんなにいっぱいの服、誰が着るのさ。」

「うん、澪がね、欲しがっているのよね~、困ったちゃんだわさ。」


 双子だよね、お母さんたちは。澪お姉さまではなくて、きっと自分用だよね?


「そう言えばさ、お義母さんと澪さんはたまに着る服を取り替えているよね。」

「大地、他の女に興味を持たないでよね。」

「……!」


 大地の口数が止まってしまう。母やその姉妹を他の女扱いにするこの巫女の根性は素晴らしい、天下無敵だろう……。


「……あらやだ、私が黙らせたのかしら!」


 私としたら、やはり冷たい性格なのだろうか、やや疑問にも思ったりした。


「そこいら辺が怖いと思われているだろうぜ。」


 大地のもっともらしい解釈だが、的を射ているようで心に突き刺さるものがある。


「大地、この服を当ててみるから一人下ろして頂戴。」

「あぁ、助かったぜ。もう、館内の熱気と前後の熱気で暑かったんだよ。」

「そ、そうよね。いいわ、一人貰っておくよ。」


 いくら自分の妹と言えども自分の娘ではない。すっかりモノ呼ばわりしていた。大地に似合いそうだと思ったら即購入。こうしないとね、一人歩きの母に付いて行くのがやっとなのよね。



 それから別のブティクに入った沙霧さんだ。出てきた母に一言。


「お母さん……綺麗!……若いわよ、」

「あら、嬉しい!」


 と、言いながら私と大地に渡した手提げの紙袋には、さっきまで着込んでいた服しか入っていない。試着した服を着替えずに清算して出てきている。


 コンテンポラリーに決めているね!……沙霧さん。


 これが、なんと、三店舗も続くのだった。どうも三着目が気に入ったらしい。前の二着は私と澪お姉さまの分かしら? でも、高校には着ていけるファッションじゃないわね、派手すぎよお母さん。


 その後の子供じみた沙霧さん……大人買いが止まらない。私の分とは考えずに衝動買いの連続なのだから、


「このうちの数着は私が頂くんだよ判る?……大地。」


 こう言えば大地は、


「お前が得するんじゃ……いいじゃねぇの?」


 時期に大地の歩く速度が遅くなり、今ではベンチでオシメを替えているが、その後は大地も含めて三人がベンチを温めている。四人目は母に文句を言うのよね。


「お母さん、……まだ頑張るの?」

「うん、もう少し、お日様は出てらっしゃる!」


 こりゃ~まだまだ帰らない沙霧さんだ。私もフライポテトを四個買って大地の横に座ることに決めた。私と大地がフライポテトを食べ出したら双子も欲しがる、


「ダ~メ、二人で四個たべるんだからね!(私が三個よ!)」


 ……泣き出した。


「これで買い物は終わりよね、お母さん。」


 泣く娘に視線を送り……、


「亜衣音ちゃん、私の代わりにお乳をあげてね!」

「ギャピ……、」


 もうまともな言葉が出なくなっていた。あんたはそれでも母親か!


「大地、いいから帰ろう……。」

「あいよ、そうするか、なぁ~娘たち。」

「……!」


「お母さん、先に帰るね!」


 勿論、買い物に夢中な、あの女。返事のへの字もない。だがしかし、母の帰宅は父とカムイコロさんと一緒になって帰宅した。あのお気に入りのスーツでだ。


 そんな三人を玄関先で見つけた大地が私に皮肉を言った。


「お前は出汁だしじゅるに使われたんだぜ!」

「うん、そのようね。一番張り切っていたのがお母さんだったな。これではさ、服の買い物だけ済ませて後は転校しません、と、言ったら怖いだろうね。」

「この作戦、観念して転校してやれよな。」

「うん、……善処します。(妖怪め!)」


「ただいま~……。」

「お帰りなさいお母さん。随分と機嫌が良いみたいだけど?……あ~お父さん!」

「おう、亜衣音。国際文化大学高校は綺麗で良かったぞ。」

「お父さん!……綺麗なのは、沙霧さんだよね。いっぱい褒めてあげたのね?」

「あ……いや、……その……。」

「亜衣音、こいつ、嫁さんをベタ褒めだったぜ、お陰で俺の腹が捩れてキツいったら、ありゃしない。」

「うん、カムイコロさんもありがとう。明日から登校いたします。」


 お母さんったら、ちゃっかりと一人で美容院まで行ってるだよね、どう思う?……大地! そういう目つきで大地を見ていたらさ、大地ったら、もう食い気だよ、


 何の事はない、亀万の車で配達されたお爺ちゃんとお婆ちゃん。お寿司と一緒になって現れたのだ。


「あ、後で小っこいのが走ってくるから、湯を沸かせてやれや、亜衣音。」

「うん、直ぐに用意しておく。で、あの双子、自分も転校するとか言わなかったかな。(湯を沸かせてって、80度でいいのかな?)」

「言っているな~、耳タコになってしまった。二人を許すとな……。」

「そうね、もっと増えそうだね。」


 この双子、前回会ってからそう日数は経っていないのだが、一回りお肉が増えたように見えた。巫女になってさらに身体を鍛えたのかな。


「亜衣ね~……ちょっと外に出て見ろ!」

「お父さん……なによ~も~……え、え”……なに!?」

「ほら!……」

「へ~、橋の上に捨てられていたんだ!」

「あ~亜衣音は橋の下で拾ってきたんだ。」

「へ~そうなんだ、ありがとうございます。お父様!!」


 日産・セドリックの新車がそこに在った。きっと私と大地も乗れるようにと、大きな車に買い換えたに違いない。であるからにして、お爺ちゃんは?


 今日の新車は、いったい誰の名義なのか気になるところだ。今日乗って行った可愛いベルリーナは、小っこくて良かったのに……。




 国際文化大学高校…………



 この高校の校門を入った処には、カイヅカイブキの植木が在る。面白い事にこの九本の木がモアイ像の形をしているらしい。これは南米からの帰国子女が創りあげたらしいと、有名になっている。


「俺ならば、ベア~を作るかな。」


 とは、勿論カムイコロさんだ。みんなで笑っちゃったよ。見てみたい、明日にはそれが拝めるのか。


 珍しい……お母さんが未だにスーツを着替えずにいて、お爺ちゃんにお酌をしている姿が見られた。これは母の過去のひとコマを再現したようで、何とも言えないそう女の私には複雑に見えていた。続いて澪お姉さまも着替えていた。


「へ~お母さんが二着目に着ていた、ヒラヒラの洋服だよね。お母さん……姉妹においても随分と意地悪なんだね、澪お姉さまの体格に似合ってないよね、これ、お母さんが狙っていたんだね?」


 澪お姉さまは少し太ったのか、邪魔なものは腰を振って横にずらすという芸を身につけている。飯台でも椅子でも、果ては徹さんでも……腰を使って撥ね除けるのだった。ヒラヒラの洋服とは、別な意味でも値札がヒラヒラしていたな。


「これが大人の社会なのか……お~~~イヤだ! 値札付いてるし!」

「あら、ヤダ……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ