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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第九章 私の……巫女の力が無くなる日

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第110部 最後の一人の巫女……



 1971年1月5日


*)特命……



 お昼からはお爺ちゃんが来てお父さんと、カムイコロさんについて協議がなされたのだが、私は知らない。だって黒川家で行われたからね。



「カムイコロさん、実はお願いがあるのだが、小金井市まで行ってはくれないか。そこには有名な国際大学の付属高校が在ってな、主に帰国子女を受け入れているのだが、そこに気になる生徒が居るんじゃよ。」

「へへ~、レッサーベアとか?」

「パンダではないよ。れっきとした日本人ですよ。」

「えへへ……俺にその高校へ入学しろと?」

「違う、断じて違う。こんな大きな歳増し女は生徒にはなれん。」

「おう、随分な言い方じゃないか、一遍しんで……。」

「俺は先の戦争で死に切れんかった。おう、殺してくれるのなら歓迎するぞ。」

「お父さん! そんな言い方ではダメです。後は私から説明いたします。」

「お義父さん、お酒でも召し上がっていて下さい。」

「希望通りに十勝の山奥に放り込んで置いてきてやるぜ!」


 カムイコロさんが怒る理由は、恐らくはこんな事だろうか。……クマという単語が~、


「女の仕事の後に見た年齢は、五歳増し位に見える原因は目の下のクマ? 何を言ってやがる。俺は夜も寝らずに夜警に努めていたからだぜ!」……か!




 夫婦喧嘩がどうなったのかは判らないが、お母さんも居た。この場はやはり私の両親には先に通す案件なのだろうか。私は杉田家で私の過去の事が話されていたので、私はこの場には居ない。寧ろ、外されていたと言うべきか。


「カムちゃん……お願い!」

「沙霧、いいぜ。引き受けた。で、何をするんだい。」

「はい、亜衣音の護衛が目的です。あの子はまだ巫女の力は戻っていません。この前の騒ぎは本当に花火だったようです。」

「偶々(たまたま)だったのかい?」

「はい、そこのノンべぇが言う事が本当です。あの子にはあんな大それた巫女の力はありません。」


「で、何をするんだい。」

「それで思いついたのが、あの騒動はあの子が行った事にしておいて、今後の巫女の力は使わせない……いいえ、使えないと思い込みをさせたいのです。」


「で、何をするんだい。」

「亜衣音も驚いていたでしょう? だから大地くんを一緒にお風呂に入れさせたのも私が考えての事でした。」

「あ~、あの時は流石の俺も驚いて多摩川に逃げ込んで、その後は亜衣音と脱衣室で一緒になったわな。随分と育っていたぜ!」

「まぁ嬉しい……。」


「で、何をするんだい。」

「はい、カムちゃんにも、その高校へ入って頂きます。これはお義父さんの力で手筈が整いました。喜んで下さい、お仕事ですよ。」


「で、何をするんだい。」

「カムイコロさんには、体育の先生となって三学期だけですが教師になって貰います。今の先生は少し毒を盛りまして休職して頂きます。」

「穏やかではないね、そう簡単にいくのかい?」

「いかせますよ、事は簡単です。既に病院送りは済んでおります。」

「なんだ、知らないのか。」

「……、ー:)””」


「で、何をするんだい。」

「そうですね、そこの高校へは亜衣音を転校させて、カムイコロさんは差し詰め体育の科目と担任の先生になって頂くことです。」

「なんだ、」

「残念ですが、JKではありません。」

「そうか……面白れ~、行くぜ!」

「ありがとうございます。そこに居ると思われる最後の巫女を亜衣音と一緒になって探して欲しいのですよ、出来ますよね?」

「いいぜ、俺に行くところは無いから行くぜ。」

「ありがとう、カムイコロさん。」

「で、あんたも来るのだろう?……穣さん。」


 雲行きが怪しくなる。


「いや、私は……お父さん! もしかして俺もか!」

「言っていなかったか、穣も沙霧も行くのだぞ。」

「お義父さん……。」

「酒を飲み過ぎたかな。」


 自宅からその高校へはおおよそ六キロほどしかない。今の高校と変わらない通勤距離らしいと、お爺ちゃんは説明していた。


「私は何なのですか!」

「用務員でも保健の先生にでも何でもいいぞ、希望を叶えておく。」

「そんな、無責任です。」

「沙霧は今でも俺の直属の部下のままだぞ。給料は入っているだろう?」


「あ”……え”……そうです、仕事……行かさせて頂きます。」

「行かせて頂きます、だろう。教師にはなれんぞ!」

「大きなお世話です。第一に娘はどうするんですか。まだ乳飲み子ですよ?」

「ここには二人も控えておる、それぞれに一つずつ預ければいいだろう。」

「そんな~……。」

「二つが三つになっても、そう違いはないだろうて。なんなら家の婆さんも貸すぞ。」


 鬼の居ぬ間にとんでもない計画が実行される事に決まった。私は仲のいいクラスメイトとはお別れである。


「寂しいな~……。」


 それから私は両親に呼ばれた。


「亜衣音ちゃん、あんたはロシア語ができるわよね。」

「えぇ、麻美さんに習いました。でも上手ではありませんよ、それが何か?」

「亜衣音、ゴメン!」


 お父さんが私に謝って一つの学校のパンフを差し出す。そこには、


「国際文化大学高校……」ようはキリスト教関係を基軸にした教育機関である。とある大学の付属学校のようなものであるが、


「へ~、この学校は新しそうだね……ロシア語……帰国子女……私……。私????」

「すまん、そこに入学してくれ。ほんの一学期だけでいいから。」

「え”……そんな、私は級友たちと離れてしまうの?」

「俺も母さんも行くらしい、どうだ!」

「で、目的はなにさ。お爺ちゃんよね、あのジジイは何を企んでいるのよ。」

「八人目……、その巫女がいるらしいのだよ。それを探し出せとの、元総監さまがご命じなのだよ。」

「ふ~ん、イヤだ。行かない。」

「でもさ、もう籍は……無いようだぜ。あるのは新しい高校だけだ。もう行くしかないよな?……亜衣音ちゃん??」


「お父さん、大地はどうなるのよ。」

「あ……大地君も一緒だよ。」

「お父さん……大地のこと忘れていたでしょう。だから行かない、高校なんか行か

 なくていいもん!」

「成績はどうせ、ビリッけつなのだから、気楽に通ってくれ。」

「どうしてビリが確定しているのよ。」

「亜衣音、英語は出来たか!?」

「普通の下だよ。入院ばかりだったから、流石に英語はもう付いていけないな。」

「だろう??……この高校のクラス分けがな、特殊でな、帰国子女を受け入れるという大義名分でさ、英語の成績で分けられるのだよ。」

「ん~~ん、私、ロシア語ができるを、お父さんは知ってたの?」

「有名な語りぐさになっている。あの教師をキャフンと言わせたらしいじゃないか。」

「あ、あれは……ロシアのスパイだったから追い出しただけだよ。だから学校から追い出されていたのでしょう?」

「そうらしい。校長は話してくれないので判らないのだな。また、突如居なくなった担任の教師は、多分、今度の高校に居ると考えている。あれも狸のコマだろう。」


「狸って、お爺ちゃんをそんな呼び方してもいいのかな?」

「狸は狸さ、何を目的にして、何を、誰が、とか、俺でもサッパリなのだから。酒でも、ハニートラップにも掛かりはしない。ホンと、妖怪ジジィだぜ。」


「そうなんだ、だったら大地と一緒に学校見学に行ってくるよ。」

「その、なんだ。新学期の始業式に、いや、から行ってくれ!」

「ウグ~!!」


 大地は私が転校すれば自動的に付随する男だ。イヤとは言わせないのだから、今のこの時には呼んでいない、と言うのがお爺ちゃんの考えらしい。両親が大地の事をすっからカンに忘れていたのが、その証拠だろう。


「お母さん、そこの制服は間に合うのかな。」

「大丈夫よ、今の制服で始業式を無事に済ませればね。」

「無事に……ねぇ~。もしかして……私服なの?」

「あたり~……そうなんよ。亜衣音、良かったね!」

「うん、嬉しい。お父さんが服をたくさん買ってくれるんだね!」


「இஇஇ……。」+「இஇ……。」=「ギャピ!」x2


 もううちの両親は考え無しなのだから。もうお爺ちゃんに直訴するしかないか。大地の服はとても少ないのよね、いつもが……入院服だからさ。


「男は……三着在れば十分だ。と、言うに決まっている……大地だから。」

「それ俺に言っているんだよな、大地の言う言葉ではなさそうだ……沙霧さん。」

「あら~穣さん、良くお分かりですわ。後は……ヨロピク……ですわ!」

「う~ん、大地と買い物に行きたい、銀座とか!」

「……ドテ!」


 お父さんは私の一言で、ズッこけていたし、お母さんは、うふふ・・・と笑っていた。急いで大地に報告へ……行けば……。


「一人で行けば……。」

「……だよね~、私、どうしよう、ねぇ大地。私どうした……、」

「好きにしなよ、俺がホイホイと付いてくると、考えていたのか?」

「うん!!!」


 私は自信を持ってそう答えた。大地は私の顔を見て一瞬気が引けたようだ。


 そうだ、ここは女の意地で押しまくるのだ。


「だ~いち!……。」

「やだよ、俺抜きで行けよ。」

「お父さんとお母さんも一緒に通学するのよ。だったら大地は新学期から独りで歩いて通学するのよね。」

「車……楽できない……疲れる……。」

「うん、そうなるね。」

「転校……勉強……キツい……どんごじり……留年……?」

「ウン、そうそう。でもね、どんご尻は私で確定だからさ、そこは安心してもいいわよ。だって、数学なんか既に放棄しているもん。」


 そうだ、どちらかというと数字には弱い性格らしいのだ。連立方程式が限度だったらしい。これって中学並の頭でしかないな。あ~一年生では百点だったのにな。それに……英語も付いていけてない。


「お父さん、編入試験は無いのよね。」

「あるだろう、実力を見てからクラスを決めるそうだ。なに、二人とも優良だろさ、な?」

「可否だよ……今では二人とも……ね。」

「う……っ!」


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