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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第九章 私の……巫女の力が無くなる日

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第102部 ……人狼百号……製造計画


「おい、そこの一升瓶をよこせ!」

「ボス……小娘相手に酔狂がすぎますよ。」



 ゴーン、ゴーンと寂しく聴こえる除夜の鐘……が、一つひとつ聴こえる度に自分の命が……あの世に旅立つ年ののカウントダウンに感じられた。年の瀬を自宅で越えられるだけでも有り難いこのご時世だ、公園の土管で過ごすとか本当に……あり得ない。(年の世は誤字です、あの世と年の瀬の造語。)


「自分の煩悩の数だけでも、数えてやろうじゃん。」


 羊の数を数えるだけでも、私の頭からは血の気が引いていくのが感じられる。当然のごとく数える忍耐も無い。


「あは~、数えるだけ無駄かもしれない、……これって、死へのカウントダウンになるのだね。」


 頭によぎるのは、私の家族と仲の良いクラスメイトたちの笑顔。クロ……。それに北海道の家族……。


「もう……私の命が途切れれば、私の周りの人には危害が及ばないのよね、これなら、もう……万々歳だよ!」



 不意にここのクソ親父の喜んだ声が……私の耳の穴に……哀れみのように響く。


「太郎、年明け早々に長男が産まれるそうではないか(多分、俺の子だ!)」

「組長、ありがとうございます。(いいえ、俺の息子ですよ!)」


(どうして私には会話が本当の意味で聞こえてくるのだろう。組長の子だよ。)


 フン!……言ってろ、バ~カ。役にも立たない末端の組員への、この親父の祝辞が自分の今の生活とうり二つに思えた。第一に、産み分ける事は出来ないよね。お腹の子が男とは分からないだろうが、「このおたんこなすが~~~!!」


 私の心の声は誰にも聞こえない。あ~ぁ、なんだかな~早く死にたくなった、そんな感じだよね、大地……私、大地の子を産めなくてごめんなさい。


 母親がおっとりとした性格だったら、第一子は……長男なんだよね、知ってましたか? お母さん。でもね、巫女の家計は全部が娘なんだよごめんなさい。と、思ってもさ、ん~私もお母さんの子供だから、謝るのはお父さんにしようっと!


「亜衣音、謝る相手は大地くんにだろうが……俺にではないぞ。」


「あ、ホントだ、私の頭にお父さんの声が響いてきたな、大地……先に行く私を許して!! 大地の子供を産んであげられないのが、こんなに悔しいのって、これでは私も成仏できないよ。あの世で産める方法があればいいのにね。」



 現代では母親があの世に旅立っても、子供をもうける事が可能になっている。癌に全身を冒されて、痛みに苦痛を添えられても……長女を帝王切開で無事に出産された、とても若いお母様がいらした。我が娘とは一年の間しか顔も見る事が出来ない女性がいるというのに、私は健康でありながらも、愛した男の娘さ

えも産めなかったのだ、「これって……最低だよね!」


「バカ親父、もっと酒を飲ませろ!」


 うわぁ~、私……なにを言っているのだろう。自棄になっているのね。



「お父さんがこの女に酒瓶を口に突っ込むのが悪いのですよ!」

「あ*、すまんな。俺一人で飲むのも気が引けてな、でもいいじゃないか、この女も所詮は、飲んべ~なのだから。」

「あ*お嬢さん、もっと組長へきつく言って下さい。」



「私って……酔っているのね、一生のお酒の全部を飲んだ気がしてきたわ!」

「もう少し付き合えよ、人狼の始祖よ、」

「あ、お刺身に添えるつまの紫蘇よね? お父さん。」

「…………始祖・・・紫蘇??」(私は大根が好きなの、漢字で書くならば、つまと書くのよバカ女!)


「こんな人狼巫女を妻にできるものか!」


 バカ女の所為で私にそのとばっちりが飛んできた、そう、バッチイ……口で飲んでいた男の酒瓶が私の口に押し込まれたのだ。


 私には二度目の一生のお酒……一升瓶が口に突っ込まれた。……もう夢のよう。あの世の光景らしい光が見えてきた。


 白い人魂が舞う、暗い人たちがいる暗い組事務所……。そこはローソクの明かりが唯一の灯り。とうに不払いで電気を止められているのは、私と同じか! いや私は未払い……。それでいて明日の宴会とは、踏み倒す気がマンマンの人たち。


 私の姿といえば、胸から足首まで一本のロープでぐるぐる巻きの、簀巻きのような感じだった。これってお母さん姉妹が好んで人狼を捕縛していた、当時の姿とい同じ目に私がなされているのね……恨みます……沙霧&澪霧姉妹め~!



 私の右側首筋に付けられた傷は、十cmはある。吹き出すように流れる私の血潮は、絶え間なく下に在るタライへと滴り……ボタボタと流れ落ちている。頬を流れる温かい感触の血潮は寒い事務所だからより鮮明に感じるのか。


(傷口が熱い……。)痛みはないが足の先が冷える感じが頭にまで下がってきた。


(人が死ぬとき、人魂が飛んでいるのが見えるというのは、……ほんとうだわ。一つ二つ三つ……もう六つにもなって私の周りを飛んでいるのね。)


「お母さん、お父さん。先立つ私を許して下さい。あ~妹たちの可愛い顔をもう見られないのですね。」

「当たり前でせう!」


 私の顔を覗き込む一人の若い女がほくそ笑んでいる。三白眼さんぱくがんの冷たい視線を送る嫌いな目つきは何処かで見た気がした。涙が上瞼うわまぶたに溜まっているからこの女の顔は歪んで見えているが、藍ちゃんのように見えるのは、気のせいだと思いたい。 


 それにさっきから私の目の前でくるくると回る私の人魂が、まるで走馬灯……。


「私の恨みは、こんなもんでは晴れないわ。いくら顔が白くなってもまだ呪われた巫女の血は残っているものよ。」

「……、お前の恨みはもう何年になる?」

「そうね、五、六年くらいかしら。いつもいつもこの女の顔を見ていると、吐き気と共に……私の尻子玉も抜けていく感じだったわ。やっと見つけたのよ。」


「もういいだろう。最後の情けだ、下ろしてやれ。」

「そやけどお父さん、尻を突いたらまだ出るんと、ちゃいますか?」


 女は私の尻を本当に突きだした。私はというと、その女の膝しか見えていない。

(藍ちゃんなの?)


「いや、やめて! 私はスカートなのよ。」


「いいわね、白いのも紅く染みて、そうね、いつぞやの花嫁衣装の時の情景を思い出させてもらえるわ。あの日は、お前の苦痛に満ちた顔を直ぐ横で見られたのが、最高に嬉しかった。」


「パンパン!……ボッッボン!……ボンボン!!」


 と、私は尻を、腹を、胸を叩かれた。その衝撃と一緒になってほとばしる私の血潮……。


「ほら、まだこんなに残っているわよお父さん。(大きすぎよね、この女は!)」


 私は叩かれる衝撃により、一瞬だが目の前にひらめいたスカートの柄が、この女のスカートが自分の高校の制服だと見てとれた。そう、この時に事務所の電気が点ったのだった。


「ボス、隣の家から配線を繋いできました、どうでやす?」

「こんな芸当が出来るのならば、もっと早く言え!」

「へ……い、すみません。」


 中年の男の声だった。自慢げに言っていた言葉尻がへこんでいくようだ。


「そやけどですね、やっと隣が留守になったんですよ。在宅中にはでけまへんて。」

「コロナで在宅勤務が長かったんだろう。ようやく故郷へ帰ったんだろう。それとも死んだのかな。」


 室内に灯りが点った事により父親からは無視された娘。面白くないのか、私にとっての……最後の一撃が尻から頭にもたらされたのだ。


 カッと目を見開いて……それから私の意識が跳んだ。


「尻子玉を貰うわ……カンチョ~!!」




「屁の突っ張りくらいではな~、それよりも配下の男衆に輸血や、一人に十ccやで!」

「へいボス。明日の祝い酒に全員が集まります! その席で打っておきます。」

「明日の正月が楽しみだわい……。料亭だな? そう言えばお前、ドクターを辞めたらしいな。」

「もう十分に臨床試験は終わりましたさかい……。」

「そうか、その花が明日に開くのだな。」

「……はい、ボス!」


 ツンツンと胸を突いて喜ぶ男から下ろされる私の惨めな姿を見て、喜ぶ……そうこいつは紛れもない藍の父親だ。


「バカな女だぜ、ついつい同情もしたくなるわ。」



 それから私は独り、組事務所に放置された。しかし、私のドクターが組員だと知れたのはいい。最後にはそうだとは考えていたよ、でもね、この組長とドクターは、とことん馬鹿だと考えたら、笑って天国へ行ける気分になってきた。だって私の身体に流れている巫女の血はね……と……だよね?



 翌日は午後の二時からの宴会で、傘下の組員の百名からは宴会場の大広間の横の小部屋にて組員一人につき、私のけがれた血液が輸血されるという。


「これで撃たれた銃創を直ぐに治せるのだな。」

「はい……組長……。特に組長とお嬢さんには百ccを輸血致します。」


 一人につき十ccならば全部で千ccなのだが、私の全部まではないが自覚でおおよその九十%は抜かれただろう。残りは何処かに保管されている? 事務所で抜かれる前に銃創で流していたのだろうか。


 事実は、幾重にも巻かれたロープで止血されていた。特に腹にきつく巻かれたせいか、内蔵の血が残っていた。


 それって、人も動物も生きていられないよね!? 私は逆さまに吊されているから、脳には十分に血はあっただろうが、しかし心臓に回せるほどの血液は無い。ならば、なぜ……夢を見られるほどの意識があるのだろうか。

*:(人の血液の量は体重の8%。だから私は四リットルは持っている。)



 床に下ろされたから血液が循環しだしたというのだろうか。クロが夢に出てきてくれた。重たい瞼は開けることが出来ない、だからこれは夢なのだ。


(クロ、最後に会いたかったよ、大地……美保を嫁に迎えてね!)

「ブヒ……、」

(そうか、私の夢に出てきてくれたんだね、ありがとう……クロ。)

「ブヒヒ~ン!」

(雷神……よね、大地と仲良くしてね、美保にもお願い……、)

「ブヒ!」「ブルルル……。」

(クロ、豚さんの鳴き声は……もうダメだよ、)

「ブヒ!」「ブルルル……。」


(もう二人とも……バカなんだから、しょうがないなぁ~。)

「ブヒ!」「ブルルル……。」

(私を食べてくれるのね? うんいいよ。でも美味しくはないよ……お休み、)

「ブヒ!」「ブルルル……。」


 クロは床に跪いて、雷神は私を咥えてクロの背中に乗せてくれた。


(クロ……跳ぶの?……。)

「ブヒ……、」

(お母さん、ごめんなさい、先に行きます……、)



 その後、関東で三番目という辛苦を嘗めらされていた暴力団が、忽然と姿を消していた。事務所はいつもの風景のように、酒を飲んだ湯飲みは残っていたし金庫に至っては、師走に行われたカツアゲがそのまま残っていたという。そうだ「くらます」という漢字がよく似合うのかと思った。


 この事務所を訪れたのは、料亭の専務……昨日の宴会の代金の集金に来たので早くこの情報が警察の元に伝えられた。床に染みついた血痕がオゾマシイから? 踏み倒されるはずの宴会料金、無事に回収されたが、それは半年後の警察署経由からだったので笑えない。



 私の……死体は……そこには無かった……という……。





 私は人魂になって帰宅しているのか、家族の会話を聞いている。


 豊前の一粒牡蠣。やや小ぶりな感じがしたが、540円程度だったから買っておいた。今日、細君が湯がいてくれたが鍋のお湯がかなり……多かったかもしれない。味が……薄い……。湯がいた時間が長すぎただけ、俺の指示が悪かったらしい。


「亜衣音、いつになったら帰るんだい。」

「ちょ、ちょっと、お父さん、何言ってくれていますの!!」

「沙霧……娘の事だよ?」


「娘は居ませんよ、子供は息子の大地だけですよ、穣さん。」


「お父さん、いいのよ、大晦日だもの、好きなお酒を飲んで、それから私の事、全部忘れて……欲しいな!……お母さんのようにね、」


なろうの更新を行っていましたら、なんと! NHKの受信料の云々の広告が

出て来ました。ネット愛用者にも受信料を払え! と、言うのでしょうか。

NHK……反対。テレビ……要らない。テレビはその時の時間が完全に他の作業が

出来ないからだ。テレビの前に釘付けになるのが……いやなのだ、だって、私は……





    落丁ありの……               気分やさんだから。

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