思い
「あーちゃん?」
アルファがグラスに麦茶を入れて2つ持ってきた。
「何?」
「どうして爆発に巻き込まれたの?」
栄は麦茶を受け取る。
「ありがとう、そうだな。今回のやつは今までと違ったってくらいかな。」
「違う?」
「うん、今までは爆発型と蒸発型なら最初の溶け方が違ったから分かっただろ?でも、私があったやつは最初の溶け方は蒸発型で、油断してたところにいきなりドカンって。」
「……それは本部に言ったの?」
「……言ってない。……言うべきかなぁ?」
「どうだろう?好きにしたら?」
「これを言ってしまうとなぁ、国はまたサイボーグを作り始めると思うんだけどなぁ、」
「つまり、言いたくないと。」
「……うん。」
「まぁ、今はサイボーグの開発って人を拉致してきて、無理やり改造することが主流だもんね。私たちみたいに最初の方に作られたサイボーグは記憶が残されているらしいけど、最近の子達は記憶も消されてるって。」
「…………私はもう一つあるんだ。」
「どんな?」
「サイボーグだって爆発に巻き込まれたら、ただじゃあ済まない。爆発に会う頻度が上がれば多分、使い捨てにされる子達も出てくると思う。私はそれを絶対に阻止したい。」
「……今のこの国ならやりかねないね。でも、言わなければその分……」
「キ、キ、キ、キ、キ。」
「ん?あぁ、エサの時間か。」
栄は別の部屋に行き、ネジを数本持ってくる。
「えっ?それだけ?」
「あぁ、毎日少しだけあげていれば、家のものは不思議と食べない。」
「ほぁ〜、つくづく珍しいね。ブロッカーなんて、一食でビル一つ食べるくらいの大食感もいるのに。」
「あはは、そいつも稀な部類じゃないのか?」
「それもそうか。」
「………悪いな、アルファ。おまえ、ブロッカー嫌いなのに。」
「それはあーちゃんもでしょ?」
「おまえより嫌いじゃないよ。」
「嘘だ、友達や家族を食べられて嫌いにならないわけがない!!」
「……アルファ、私は友達はまだしも、家族のことはどうとも思っていないんだ。食べられたところで怒りも湧かないよ。」
「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!!!」
「アルファ、落ち着け。私たちはもう、被害者にはなれないんだ。我慢するしかないんだよ。」
「あ、あーちゃん…」
アルファはポロポロと涙を流す。
「私だって、別に憎くないわけじゃない。ただ、アルファよりは憎くはないし、私はもう踏ん切りがついてる。コイツらとも暮らしていかなくちゃならない。でも、だからってアルファにそれを強要するつもりはない。アルファが踏ん切りがつくまでただ、アルファのことを尊重するよ。」
「あーちゃん、あーちゃん、あーちゃん。」
「なんだ?」
栄はアルファはに優しい笑顔と声を向けた。
「ううん、なんでもない。」
「そうか、なら、早く寝とけ。明日はおまえは仕事だろうからな。」
「うん。」
アルファはすぐに夢を見始めた。栄はアルファの頭を撫でる。
「アルファ、おまえは頑張ってるよ、大丈夫。いつか乗り越えられる。妹さんだってまだいるしな……私たちは被害者にはなれないけど、加害者にだってならなくていいんだ。このままだと、おまえはあいつらと同じになってしまう。私だって、おまえと離れるのは嫌だ。確かに会う数こそ少ないけど、それでもおまえと会える時は楽しみなんだよ。」
アルファにその言葉が聞こえていたのかは知らない。それでもアルファの悪夢が和らいだのは確かな事であった。




