危機感
栄は高嶺の部屋でまったりしている。
「悪いな、看病してくれて。でも、もう帰るよ。明日も仕事だろうしな。」
「今日は連絡しないから明日は休みだよ。」
「それはおまえが責任問題になるだろ。」
「大丈夫だよ。治療が終わったからって俺に投げてきたんだ。俺以外茜ちゃんの容態はわからないよ。医務班も目覚める時間は分からないと言ってたからね。」
「はぁ…本当に人間扱いされてないなぁ。」
「………そうだね。」
「あ、そういえば、あいつらどうなった?ブロッカー。」
「あぁ、あの子達なら茜ちゃんの部屋に戻ってるよ。」
「はぁ?!」
栄は驚き勢いよく立ち上がる。
「茜ちゃん、体に触るよ。」
「あ、うん。」
栄はその場で座った。
「戻したら駄目だろ。」
「エサはいっぱい与えたし、当分家のものは食べないと思うよ。」
「おまえ…そういう問題じゃなくてな?私といたからあいつらの悪さも監視できてたんだぞ?あいつらだってブロッカーなんだ。急に人を襲ってもおかしくはないだろ!?」
「それなら大丈夫。家に監視カメラつけてきたから。ちょっと待ってて。」
高嶺は別の部屋にパソコンを取りに行く。栄は何気なく言った高嶺の言葉に身震いした。
「というか、監視カメラなんだから監視してなくちゃいけないだろ。後、人に家に勝手にそんなものつけるな。」
「まぁ、まぁ。実はさっきまでは見ていたんだけど、その時はおとなしかったよ。」
「そうか、それなら良いけど、後で外せよ。」
「えー?」
「おい、」
「わかってるよ。後でちゃんと外すから。それよりもだ。これは………まずいな。少し目を離したすきにいなくなってる。」
「はぁ!?それは、」
栄はすぐに高嶺の部屋を飛び出した。そこで何かにぶつかる。
「キ、キ、キ、キ、キ。」
「あ、やっぱり来てたか。」
「やっぱりってなんだ?」
「うん、どうしても寂しくなったらここにおいでって言ったんだ。どれだけの知能があるか調べておきたかったし。」
「おまえ…それでもし、」
高嶺はブロッカーのそれぞれの図形部分をひと撫でした。高嶺の指には小さな黒い物質が付いている。栄はハテナな顔。
「GPS、実はこの子達が何処かにいるかは俺の時計に表示されてたんだ。ものすごい速さでこっちに来ていたから、街に被害は出てないはずだよ。ものを食べる時はかなり遅くなるっていう特徴を踏まえればね。」
「だからなんだ、危機感がなさすぎる…危機感がなさすぎるぞおまえ。」
「否定はしない。」
「あぁ、今回はたまたまの結果何もなかっただけで、何かあったらどうしてたんだ。どうにもできないだろ。」
高嶺はソファに腰掛けた。栄は突っ立っている。
「先輩、一つ言ってなかったですけど、実は国からの指令があります。」
「?なんだ?」
「三匹のブロッカーをペットとして飼育しろ、殺害や危害を加えることは禁ずる。飼育で発見したブロッカーの特徴は逐一報告すること。という簡単な指令です。」
「お、おまえ、なんで言わないんだよ。私がもしこいつらを殺してたら、おまえの責任問題だぞ!!」
「私はあなたに自由にして欲しかったんです。ついてくるブロッカーを殺すのかそれともペットにするのか、私は一個人としてあなたを尊重したんです。国の指令なんかは聞かなくて良いんですよ。」
「………」
「俺は君に対する国の態度が気に入らなかった。だから、もしそれで俺が茜ちゃんと同じような道を辿るようなことになっても俺は別に
「ダメ!!絶対ダメだ!!高嶺、お願いだから、そんな考えは捨ててくれ……私はもう、嫌なんだよ。」
「……ごめん、意地悪しすぎた。」
「本当にやめてくれ…」
「うん。」