似てる
「あー、疲れたー、」
「まさか栄さんが辞めるとは思わなかったが、ある意味良かったのかもしない。が…そうも言ってられないなぁ…」
「そうだなー、あ、噂をすれば、あれ?今日は槍持ってないな?」
「もうブロッカーを狩る必要がないからいらないだろ。」
「んー、まぁ、そういえばそうか。」
「それより気になるのは一緒に歩いている人だ…誰だあれは?」
「あぁ、そういえば誰だ?……おい、あれアルファさんじゃないのか?」
「な訳あるか、似た人だよ。」
「えー、あんなに似るか?」
「双子とかなんじゃないか?」
「あー、なるほど。あ、こっちに気がついたぞ。」
「まぁ、いいだろう。別に急ぎの用はないし、挨拶していこう。」
「港、三池、久しぶり?」
「久しぶりですね。元気してましたか?」
「あぁ、もう元気だよ。」
「良かったですよ。ところで、その人は誰ですか?」
「あ、私はベルマ・ベータです。アルファの妹です。よろしくお願いします。」
「あぁ、なるほど。双子ですか?」
「いえ、一つ違いの妹ですよ。」
「それにしては似てますね。」
「はい、よく言われます。髪色が異なるってくらいでしか見分けがつかない人が多くて、」
「栄さんは分かりますか?」
「あぁ、目元が違うな。あと、笑った時の歯の見せ方とか。」
ベルマは恥ずかしそうに口を押さえた。
「え?目元?分かるか?」
「いや〜?全然?アルファさんの写真とかあります?」
「あぁ、えっと、どれがいいかな?あー、これがいいな。」
(まさかの栄さんとの2ショット…これは気まずい…)
「え?何か違うか?」
「………いや、俺にはなんとも?」
「おまえらそれでよく調査できてるな、もっと目を良くしろ。」
「はい、すみません。」
「あー、あー、あー、違います違います。この人が特別なんです。私たちは見分けつけられたことないんですよ。カツラ被るとホントに見分けつけられないみたいで。」
「え?そんなことない。全然違う。」
「それは君がお姉ちゃんのこと大好きだから分かるの!!普通分かんないんだって!」
「いや、分かる。」
「頑なだなぁ…」
「お、おい、やりとりまで似てるぞ。」
「あ、あぁ、髪の色が変わったアルファさんがいるみたいだ。」
「あ、おまえら高嶺に伝えて欲しいことがあるんだけど。」
「何ですか?」
「アルファを殺した奴らが、襲ってきたから返り討ちにした。死体はブロッカーたちが食べたし、跡も残ってない。それだけ。」
「はぁ!?栄さん!?あんた何やってんすか!!」
「おい、やめろ。」
「あ、あぁ、悪い。」
「栄さん、それは本当ですか?」
「うん。」
「それはまずいですね。」
「まずい?サイボーグの殺し合いは御法度のことか?」
「それについてはアルファさんの件で今更ですが…外部の人間が機関の人間に手をあげることに関して最近制度が厳しくなって、もう、ぶつかっただけで死刑になるレベルで厳しくなってます。」
「はぁ!?それは意味わかんないだろ!!」
「栄さんが抜けたことで、機関の上層部は報復を恐れたのでしょう。……とは言っても、我々が報告しなければ民間人に対して何事もないのでそれでいい話なのですが……栄さんの場合は今回いいとしても…こちらはそれを報告しなければなりませんし、それに……」
「何かあるのか?」
「いえ、最近街の方で不満の声が出ていて、もう抑えきれないのではないかと。」
「不満?あぁ、あの過激組織か。」
「栄さんが抜けたことで怖いものはなくなったと思い込んだ連中が攻め込んでくるやもしれませんし、そうなると、こちらとしても報告しないわけにはいかないですが…そうなると全員死刑という結果になってしまって…」
「あー、色んな問題があるんだな。」
港、三池、栄で唸っているところにベルマは口を挟む。
「武器貸しましょうか?」
「あぁ、そういえば、ベルマは銃を使ってたな。何丁か持ってるのか?」
「うん、でも、そうじゃなくて、捕縛用の武器。」
「捕縛用?」
「ブロッカー対策として作ったものだけど、ブロッカーは何でも溶かすから意味なくて、最近では戦闘車とかを捉えるために使われてる。」
「そ、それは大層なものを……」
「でも、そこまで攻撃的な武器じゃないし人に使っても大丈夫だとは思う。いりますか?」
「……はい。頂戴します。」
ベルマたちは栄の家まで戻る。




