味覚
「お義姉さん、おはよう……昨日はごめんね!私こんがらがって、あんなこと。」
「ベルマ、無理に明るくしなくていい。辛いなら私を頼ってよ。私も姉なんだ…アルファには負けるかもしれないけど、それでも頼ってほしい。」
「お義姉さん…じゃ、じゃあ、ご飯作ってほしいな、なんて…あはは、ごめんなさい……」
「ん?なんで謝るんだよ、いいよ。作ってあげる。アルファ一押しの私の腕をみるがいいわ。」
「あはは、お義姉さん、ありがとう。」
ベルマは栄の料理する姿を片時も目を離さずに見ていた。
(お姉ちゃんは、この姿が好きだったのかな?)
「はい、どうぞ。」
「わぁ!!親子丼だ!!」
「そ、そんなに好きなのか?アルファは味噌汁が好きだったけど…好みが分からないから無難にしてみた。」
「ん!?あ!!あはは!!」
ベルマは恥ずかしそうにしている。
「早く食べな。」
「うん、いただきます!」
ベルマはウキウキしながら食べ始めた。
「お義姉さん、これ、しょっぱいよ。分量間違えてない?」
「え?うそ?」
栄はベルマの親子丼をつまむ。
「ん?普通だな、美味しくできてると思うぞ?」
「え?」
「え?」
「もしかしてお義姉さん、味覚音痴?」
「いやそんなことはない。アルファは美味しそうに食べてたし、高嶺も、よし、高嶺に聞いてみよう。」
栄は高嶺にスピーカーで連絡を取る。
「あ、高嶺、おはよう。唐突で悪いんだけど、私の料理どう思う?」
「おはよう。どうって何?」
「美味しいとかまずいとか、」
「んー、そうかぁ、んー、正直言うと普通かな。特別不味くもうまくもない。強いて言うなら、少し塩気が強いな。」
「あ、そう……」
ベルマはくすくす笑っている。
「ああ、でも、アルファは美味しいって散々言ってたから、サイボーグと俺とでは違うのかもしれないよ。がっかりしないで。」
「励ましありがとうございます。それでは、さようなら。」
「あ、あか
ブツ
「ふ、ふふ、あはは、お義姉さん、あはは!!」
「笑いすぎなんだけど、」
「ごめん…でも、興味深いね。旧型は塩気強いものが美味しく感じるのかな?ミネラルはたしかに多いほうがいいけど、それはミネラルに限ったことじゃないし、お姉ちゃんとお義姉さん両方味覚音痴ってことかも?あはは!!」
「笑いすぎだって。」
「ごめんね、料理教えようか?」
「いや、いいよ。アルファとの思い出の味だし、残しておきたい。」
「そっか…でも、君の味覚で他のやつ食べても美味しいの?」
「うん、それは大丈夫。なんでも美味しい。」
「やっぱり、ただの味覚音痴なんじゃないかなぁ?」
「うん、本当にそっくりだなぁ…」
「何が?」
「こっちの話。」
「ふーん。」
「アルファ、間違った、ベルマ、今日どこか行くか?」
「ん?あはは、私とお姉ちゃんは似てるからね。よく双子だと間違われるよ。髪色以外お母さんもよく見分けつかないって言ってたし。」
「んー、似てるけど、目元とかが少し違うなぁ…見分けつかないことないんじゃないか?」
「比喩表現だよ。それくらい似てるってだけ。」
「あぁ、そういう。で?いくか?」
「んーん、ここにいる。どこにも行きたくない。」
「そうか?じゃあ、散歩にでも行こうか。」
「行かないって言わなかった?」
「私はおまえの言った通り、見張りは続けるよ。けど、おまえは一人にしておけないからな、気分転換がてらついて来い。」
「キ、キ、キ、キ、キ、キ、キ。」
「おまえらはいつも勝手についてくるだろう。」
(言ってること分かるのかな?)
「さぁ、行くか、ほら、ベルマ、おいで。」
「あ、うん。」




