憎しみ
「悪いな、高嶺呼び出して……」
「先輩の聞きたいことは分かりますよ。けど、その質問には今のあなたの状態では答えられません。」
「………なんで?」
「なぜ死んだか?ではなく誰が殺したのか?を教えてしまったら、あなたはその人たちに復讐するでしょう。それは困ります。」
「……ふざけんな、ふざけんな!!」
栄は高嶺の胸ぐらをつかんだ。
「なんで、なんであいつが殺されなきゃいけなかったんだ……あいつが何したっていうんだ……あいつは皆の為に頑張ってたんだぞ………」
「死体の状況からして殺したのは明白…それはあなたでも分かることですが、この先は本当に教えられない。」
「………なんで、くそ、くそ!くそ!!くそ!!!」
栄は地面を割った。
「……悪かった…少し取り乱したな、ごめん。」
栄はその場をフラフラと後にした。
(死体の状況からして、ブロッカーに殺されたとは言えない…ならもうサイボーグを殺せるのはサイボーグだけ…茜ちゃんが他のサイボーグに手をかけるのだけは阻止しなければ。)
(誰が…誰が…絶対に許さない……必ず殺してやる…)
その翌日高嶺と栄はアルファの死体が保管されている場所に赴いた。
「では、私は少し御手洗いに失礼します。長くなるかもしれません。」
「ありがとうございます。」
「……アルファ……」
アルファの死体には布がかけられていたが、腕だけは布からはみ出していた。栄はその手を握る。
「…………………………………」
栄は言葉が出ない。その代わりに大粒の涙が大量に溢れている。
「ベータの死体が見つかった時、ベータの死体は見るに耐えないほど無残と伝えました。なのでその身体は医務班が修理してくれたからだそうです。」
「…………………………」
「茜ちゃん、これは幼馴染としていうけど、絶対に復讐なんてしちゃダメだよ。それこそアルファが報われない。」
「報われないってなんだよ……じゃあ、アルファを殺したやつを野放しにしたらアルファが報われるのかよ!!!そんなわけないだろ!!!!」
(これは本当にまずい。もう何したって火に油だ…)
「アルファ……もう一度だけでいいから……触ってくれよ……お願いだよ……」
栄はアルファの手を自分の頰につけた。
「あらら〜?お姉さんが例の栄さんすか〜?」
ある一人の男が部屋に入ってくる。栄は無視する。
(こいつ!!!まずい!!!!!………落ち着け…俺…まずは離さないと……)
「今取り込み中なので、後にしてもらえますか?」
「はぁ?やだよ、バーカ。」
高嶺は溝を殴られ、膝から崩れ落ちた。
「高嶺?なんだ、おまえ?」
男は栄の前まで行った。
「何死体の手なんか握ってんだよ!!」
男はアルファの死体ごと台を蹴飛ばした。
栄は転がった台と抱えたアルファの死体を元に戻した。
栄はその後一瞬で男を押さえつけた。
「おまえか……アルファを殺したのは?」
「はぁ?そんなの
「おまえが殺したのか!!!!!」
「…はは、当たり前だろう?」
「………分かった、覚悟しろよ。」
男の身体からミシミシと音が聞こえる。
栄は男の腕、足、腰を順に砕いた。
「一つ聞く…おまえ以外にもいるな、アルファのことを殺した奴が、だれだ、答えろ。」
(こ、こいつやばい、アルファってやつはそうでもなかったがこいつはやばい、一人で敵う相手じゃない。あの時みたいに四人いれば…)
「答えろ!!!!!」
「俺一人だ。」
「嘘つくな…おまえ程度のやつがたった一人でアルファに勝てるわけないだろ…」
「はっ!悲しいねぇ…そうさ、俺以外にもいるさ、でも、教えるかよ!!バーカ!!!」
「そうか、死ね。」
栄は男の首をへし折った。




