鍋
帰り道
「ブロッカーも飼われ始める時代になったかぁ。」
「言っとくけど、私のはペットじゃないぞ。」
「んー、まぁ、国の指令だもんね。」
「キ、キ、キ、キ。」
「ところでこの子達は強いの?」
「あぁ、強いよ。初めて会った時は私は死を覚悟したなぁ。」
「あーちゃんが?」
「私だってブロッカーと対面したら勝てないよ。あくまで奇襲をかけるに徹してる。」
「そうなんだ。あーちゃんは強いから真っ向勝負してると思ってたけど、違うんだね。私は罠作ってるよ。」
「それもいいな。」
「キ、キ、キ。」
日が落ちるまであと少し。
「今日別れたら次いつ会えるかな?」
「さぁな、今回はいつぶり?」
「もう、2年は会ってないよ。会いにも行けないから。声だって2年も聞けてないもん。」
「そうか、でも、普通の人からすればそれでも短い方なんだとは思うけどなぁ。」
「そ、そうかもしれないけど…」
「アルファ、私たちはもう戻れないんだ。受け入れるしかないよ。大丈夫、次はすぐ会えるから。」
「……………うん。」
「キ、キ、キ、キ、キ。」
家に戻った栄たちは全員で鍋を囲んでいる。
「で、なんで高嶺までいるの?」
「なんでって呼ばれたから。」
「チッ、」
(これで今日はアルファも諦めがつくだろう。朝やったから、夜はもういいからな。)
「言っとくけど、君に可能性は万に一つもないから、宇宙が滅んでもないから。」
「それはそっちの方だろう。」
「残念でしたー、あーちゃんは私と付き合うことになったんですー。」
「茜ちゃん!?本当!?」
「なってない」
「なんだ、ほら。」
「でも、考えてくれるって言ってくれたから、君よりはあるよ。」
「え?本当に?」
「ま、まぁ、考えるくらいなら。」
「なんで俺は考えてもくれないの!?」
「それはおまえが……やっぱやめとくよ。」
「え?なんで?」
「いいから。」
(あーちゃんの断る理由知らないのかな?それは好都合だ。)
「でも、私たちはきちんとエッチなことしてるから、もうすぐなんだよ。」
「はっ、そんなもん、なんの自慢にもならんわ。」
「嘘だ、あーちゃんはやってないって言ってた。」
「俺は結婚してからするつもりだからな。手を出してないだけだ。」
「おまえら食事中にそんな話するな。」
栄が鍋の中身を取りながら一言発した。
「キ、キ、キ、キ。」
「すみません。」
うなづく二人。
「おまえらの方が行儀はいいみたいだな。」
「キ、キ、キ、キ、キ。」
「そうか、おまえらもネジばっかりは嫌かな?今日はこれあげるよ。」
栄はそう言うと、鍋の中に入っていた白菜をブロッカーに投げた。ブロッカーはそれをキャッチするとものすごい速さで吸収した。
「あ、早いな。やっぱり、他のも食べさせるべきか?」
「キ、キ、キ、キ、キ。」
栄は笑顔を見せていた。アルファと高嶺は目を合わせ両者は小声で話す。
「私の方があの子を守れるよ。君はブロッカーに対抗できない。」
「守る形にはいろいろあるだろ。」
「それでも私の方が良い。」
「それはどうかな?」
「諦めてよ。君にチャンスはないよ。」
「は?なんで?」
「なんで、か、それは私がいるからだね。」
「はは、余計にわからん。」




