友人
栄とアルファたちはあるショッピングモールの中の古着専門店に来ていた。その様子は仲睦まじくまるで仲の良い姉妹のようだと後に店員は語る。ブロッカーたちはショッピングモールの預かり場にいた。
「キ、キ、キ。」
「あーちゃん、これとかどう?」
アルファは栄に白のワンピースを渡す。
「なぁ、これ意味あるのか?」
「意味?」
「私らはほとんど休みもないし、こういう私服着れるのなんて、月一回あるかどうかだろ。」
「その月一回をどうして楽しむかだよ。」
「そういえば、アルファは昔からこういう布系のものとか好きだもんな。」
「うん、何か暖かさを感じるんだ。」
「そっか、でも、これは着ない。」
「えー、なんで?」
「私には似合わないからな。」
「そんなことない!絶対似合う!かわいい!エロい!かっこいい!」
「余計な言葉混じってるぞ。」
「じゃあ、これは?」
アルファはいわゆるゴスロリのような服を栄に手渡した。
「これは……もっと似合わなさそうだな。」
「じゃあこれ!」
そんなやりとりを数回繰り返した後二人は何事もなかったように店から出てきた。
「結局は何も買わずじまいかぁ、あーちゃんのワンピース姿みたかったなぁ。」
「あはは、まぁ、機会があればな。」
「まだどこか行く?」
「いや、ブロッカーたちがこの時間エサの時間だし、長く放っておくと何しでかすか分からないから、早く迎えに行かないとな。」
「異端児だからねー。どう豹変するか、見当がつかないって感じだよねー。」
「でも、今日は楽しかったよ。ありがとう。また、しばらくは会えないけど、次会うときもお互い元気な姿がいいな。」
「待って、今別れる話してるけど、夜までいるよ?」
「え?なんで?朝早くは流石にしんどいだろ。用もないのに。」
「別に深夜に帰ればいいよ。家で何か美味しいもの食べたい。あーちゃんの手料理とか。」
「私のか…仕方ないなぁ。」
栄は嬉しそうな顔をした。
「何はともあれ、まずは迎えに行かないとな。」
(完全にペットの扱いだと思うよ。あーちゃん。)
その時のブロッカーたちはただじっと待っていた。
「あ、いたいた。」
「キ、キ、キ、キ、キ、キ。」
「しかし、おまえらはまぁ、大人しいな。」
栄はネジを渡しながら辺りを見渡した。アルファは他のブロッカーたちを殴っている。
「アルファ…暴れてたからって一応ペットなんだから殺すのはダメだぞ?」
「分かってるよ。ねぇ、あーちゃん。」
「何?」
「野良とペットでこんなにも強さが変わるなんておかしいよね?」
「それはまぁ、そうだけど、ネコだってそんなもんじゃないか?」
「ネコ?あぁ、あの絶滅危惧種の。」
「そう、あれも飼われている子と野良の子では野良の子の方が強いらしいよ。」
「ホント?」
「さぁ、知らない。」
「でも、あーちゃん、ネコ好きなんだね。」
「うん。よく画像とかで見てるよ。」
「私は?好き?」
「ん?あぁ、好きだよ、親友だもんな。」
「んふふー、私も、恋人として。」
「だから、恋人じゃないって。」
「頑なだなぁ。」
「ほら、こいつら食べ終わったから帰るぞ。」
「はーい。」




