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三犬と飼い主  作者: 洋梨
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始まり

ある日突然現れた謎の生命体。それは突然街を食べ始めた。人、動物、建物、その全てを。人は必死に抵抗した。しかし、如何に強力な化学兵器を使おうともその生命体は死ぬことはなかった。…………しかし、今現在はその生命体と共存している。これはその生命体とある一人の女性のお話。

[一体どのくらい経ったのだろう?]

[世界はどうしたのだろう?]

[私には何ができるのだろう?]

そんな思いを巡らせつつ、私は歩くのでした…こいつらと…

「キ、キ、キ、キ。」

「なぁ、なんでおまえら、私についてくるんだ?」

「キ、キ、キ。」

(はぁ、何言ってるか全然分からん。)

そう思いながら、女性はただただ街の大通りを歩いた。その後ろを生命体はついていく。

「先輩!」

そこに現れたのは一人の男性。

「ん?あれ?高嶺?どうした?こんなとこで。」

「いえ、"ブロッカー"について調査していまして、たまたま通りがかっただけです。」

「なら、こいつらもらってくれよ。」

「その子たちは先輩のペットなのでは?」

「なわけあるか。勝手についてくるんだよ。」

「ところで先輩、その槍なんですか?」

高嶺は女性が手に持つ一つの物に視線を落とした。

「槍。」

「そんなこと聞いてないです。というか私言いましたよね?槍って。……勤務中でもないのに、持ち歩くのはご法度ですよ?」

「んなことはわかってるよ。ただ、」

「ただ?」

「私は地方支部の討伐部門の人間だけど同時に緊急対策本部の人間だから。」

「だから?」

「だから、えっと、いつでも、勤務中、みたいな?」

「アホですか…」

「うっ、」

「そんなに武器を持ちたかったら、免許取ればいいじゃないですか。」

「うーん、頑張ってはいるんだけど、なかなかね。」

「あ、そういえば、今日本部で特別会議がありますが、先輩どうしますか?行きますか?」

「私は現場の人間だからなぁ、会議に出ても何も分からん。」

「でも、今回新しい発表があるらしいですよ?行きましょうよ。」

「んー、まぁ、暇だからいいよ。」

「キ、キ、キ。」

生命体が現れてすぐに、国は機関を立ち上げた。その名は"未確認生物対策兼討伐研究所"通称ブロッカー研究所。

その中でもその女性は色々な意味で注目されている。

「えー、ではまず初めにブロッカーについて今までで分かっていることについて振り返っていきたいと思います。」

(なんでこんな支部に本部の連中が来てるんだよ。しかもお偉いさんばっかり、空気が重い。)

「先輩話聞いてください。もう始まってますよ。」

高嶺は小声で話しかける。

「うん。」

「ブロッカーが現れたのは3年前。✖︎✖︎✖︎✖︎年です。この生命体は非常に貪食で街にあるもの全てを食していきます。形は非常に奇妙なもので人間の頭部に相当する部分は全て丸や三角形のような図形の形であり、身体部分は様々で特徴がかなり弾力のあるした金属的な物だと考えられております。また、再生能力が異様に高く、焼却、爆撃等で完全消滅を試みても、叶いませんでした。しかし、これはまだ、研究中で詳細は未だ何もわかっておりませんが、刃物のようなもので頭部を傷つけると溶けていなくなるという事象も確認しております。しかし、性格は非常に温厚だとわかっており、餌となるものさえあげれば街を食すことはありません。そのため、最近ではペットとして買う人まで現れているようです。これまでが今現在わかっていることですが、何かご質問等ございましたら、お尋ねください。」

「ふむ、溶けるというのは具体的にどういうことだね?」

(この爺さんはそんなことも知らないのか?)

女性はそのような態度に少し苛立ち、反抗的な視線を送った。しかし、女性は自分では気がついてはいない。

「なんだね?」

「・・・」

「あの、栄さん?」

説明していた男性が女性に声をかける。

「ん?」

「この方はですね、本日からこの対策本部に来られた方なので、何も知らないのも無理はありません。だから、その目はやめてください。」

「え?」

「先輩、スクリーンだけ見ててください。」

高嶺は栄の首を曲げた。

「ぐぅえ、」

話の中心の本部の人間はいい気持ちではない。

「すみません、続けますね。具体的に溶けるというのは、刃物を刺すとドロドロと溶け出し、そのまま蒸発することを言います。詳細は解明できていません。」

「ふむ、では、新しい発見というのは?」

「はい、最近の研究でわかったことですが、この生命体は放射能を吸収・分解することが分かりました。これを確かめるために、放射能濃度が高いところにこの生命体を送り込んだところ、その地域は浄化されて我々人間も普通に生活できるほどに治ったということです。」

部屋がガヤガヤし始める。

(へぇー、かなり有用なんだな。)

その後もかなり話し合いは進み、栄は頭をフル活動させながら参加した。そんなことがあった帰り道。

「おまえらは有用なんだな。」

「キ、キ、キ、キ。」

「時代が進んだこの世の中でも放射能は未だ脅威だからなぁ。ありがたいのかそうでないのか。」

「そうですね、ところで先輩はこのまま帰りますか?」

「あぁ、私は元々今日は休みだからな。何処に行くっていうのもないな。この三匹の世話もしないといけないし。」

「あはは、その槍で仕留められないのは残念ですね。」

「まぁ、刺して爆発されても困るしな。」

「そういえば、今日はその事話していませんでしたね。」

「初歩的すぎるから、忘れてたんだろ。溶ける際に爆発するかもしれないなんて、今時民間人だって知ってるよ。」

「ニュースに流れますもんね。」

「キ、キ、キ、」

「あ、もうお別れですね。じゃあ、また明日。」

「あぁ、さよなら。」

男性は歩いて栄に背を向ける。しかし、すぐに栄に振り向いた。

「あ、茜ちゃん、明日暇?」

「仕事。」

「それは俺もだなぁ、終わってからは?」

「まぁ、暇だな。」

「じゃあ、明日飲みに行こう、じゃあね。」

高嶺は再び背を向ける。

「はぁ、」

(茜、か…もう捨てた名前だな…サイボーグになってからは………もうその名前を知ってるのも残り少ないなぁ…)

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