ゲーセンで逆ナン?
「外人のセックスってやっぱ、激しいのかな?」
馨がUFOチャッチャーをしながらアホな事を聞いてきた。
「それはキャサリンの事か?でもやっぱAVは演技なんじゃね?ってゆーかあんなでかい声出されたら萎えるよ。あ、ちょい左…」
俺は横から指示をしながら答える。
「忍は、外人とやった事ある?」
「やった事は無いけど、前にホームステイに来た姉ちゃんがめっちゃアクティブに迫ってきたな。」
1年前にうちの親が留学生を受け入れた事があった。
「マ、マジ?うちは男だったからなぁ…。んで、どこまでいったの?」
俺らの学校はアメリカの学校と提携しているので、交換留学生を受け入れる家庭が多い。
来年には俺らもアメリカに修学旅行をし、ホームステイする予定になっている。
「入れる直前に親が帰ってきてマジ焦ったわ。それ以来、ジュディがアメリカ帰るまで二人っきりって状況はなくなった。」
「うわ〜、生殺しじゃん(笑)」
「マジ、もったいない事したわ。ところでホームステイしてた人と連絡取ってる?」
「俺のとこは、男だったからそれっきりだな。興味ないし。忍は?」
「全然。英語苦手だし。あっ、きたー!」
ガタン。本日3つ目のぷーさんゲット。
馨は天才的にUFOキャッチャーがうまい。これまで幾度と無くナンパした子にあげて来た。
あがり症の馨はナンパした子からの反応が鈍い。
緊張でしどろもどろになるから会話が弾まない。
最初は変な奴に捕まったと思われることも多いが、この特技のおかげですぐに挽回できる。
もともと背も高いし、顔も良い。性格が滲み出てるような優しそうな顔立ちなのである。
しかも最近は場馴れしてきている始末。
なので、最近数少ない俺の知り合いの女の子からの人気も高いのがちょっと悔しい。
「お兄さん達、めっちゃうまいね〜。」
突然後ろから声をかけられた。
振り向くと二人組の女の子が近づいてきた。
女の子といっても、20代前半といった感じだった。まぁ俺らにとってはお姉さんだ。
しかも可愛い。こんなラッキーを逃したら確実にバチがあたる。何とか会話を続ける。
「いや、うまいのはこいつっすよ。俺は基本指示役。」
「しかもあんまり役に立ってない感じで。」
と、すかさず馨がつっこむ。
「バっカ、俺のコインを投入するタイミングは絶妙だって、ばくざん先生に褒められたし。」
「コインかんけーねーし、ばくざんって古っ!」
もう、二人してテンション高いのがバレバレだったけど、お姉さん達は笑ってくれた。
逆ナンされたのなんて初めてだし、内心ビビってる。馨もビビってるみたいだ。
「お願いがあるんだけど〜、聞いてくれる?」
夏を先取りしたような格好のB系のお姉さんが言ってきた。
どうやらドナルドのぬいぐるみが欲しいらしい。
速攻で馨がとってやる。
「君達学校は?終わるの早くない?」
今度は清楚系のお姉さんが聞いてきた。
さすがに補導員には見えないけど、いつもの癖で、
「試験前だから学校は午前中で終わりっす。…あ、うそっす。サボりっす。」
途中から、バカらしくなって言い直した。
「なるほどね。そうやってかわすんだ。君達、いつもサボって遊んでるんでしょ。言い方が慣れてるぞ。」
B系のお姉さんが鋭い指摘をしてきた。
そのあと、一緒にプリクラとってマックに行った。
B系のお姉さんは八木沢美波さん。清楚系のお姉さんは三上百合さんといった。
二人は短大の時の友達で今は社会人の26歳だった。
実際は二人とも20歳くらいに見えたためちょっとビックリした。
俺らも簡単に自己紹介して、飯食って、番号交換して別れた。
いつもだったらカラオケ行ったり、ボーリング行ったりするのに、
なぜかずっとマックで喋ってた。
たぶん、このぐらいの年齢の人と遊んだ経験がなかったから、
ドコにいけばいいか分からなかったのかもしれない。
「何か変な感じだな。」
帰りの電車の中で馨がつぶやく。
「ってゆーか、ビビッたよな。」
「俺、どうしていいか分からず、ずっとお前頼みだったよ。」
確かにそうだった。馨は俺との会話になりがちだった。
「もっと話振れよ。最近結構がんばってたのに今日はどうした?」
馨は何か言いにくそうにしていたが、ふいに
「百合さんってめっちゃ可愛かったよな。俺、緊張してて…。」
あ、こいつ惚れたな。
「マジか。お前キャサリンどうすんだよ。」
「別にキャサリン俺のもんじゃねーし。ライバル多いし。」
「ヤリマンだしな。」
「ヤリマン違うし。えっ?ヤリマンなん?」
「さぁ?」
「もぅ、何だよ。キャサリンかぁ…。」
馨はキャサリンと聞いてまた無口になった。
これまで女の事で思い悩むという経験は俺には無かった。
「ってゆーか、お前ホント年上好きだよな。」
「来る者拒まずの忍には言われたくねーし。」
確かに、俺は貴重な出会いを大切にしてきたために、
好意を持ってくれる子が俺のタイプという最悪な発言を仲間内でしている。
基本的に本気で好きになった女なんていなかった。
「でもまぁ、相手にされないだろうし、引き続きキャサリン狙いでいいんじゃね?」
「えっ、やっぱ無理かなぁ。」
「当たり前だろ。俺ら金ねーし、ガキだし。ただドナルドが欲しかっただけだろ。」
馨は舞い上がっていたが俺は結構冷静だった。
最近でもよく米倉さんに遊びに誘われ年上の女性と会話する機会が多いが、
高校一年生の俺の事を男として見る人はいなかった。
ってゆうか基本的に米倉さんの事を好きな人が多く、
俺はその人たちの恋愛相談につき合わされるってゆーのがパターンになっていたせいもある。
結局それ以来美波さん達とは、連絡は取り合うが会う事は無かった。
なぜなら普段勉強しない俺らには地獄のような期末テストが始まってしまったからだ。
そして高校生活最初の夏休みに突入した。