学校での日常
今は俺と馨と貞二の3人を中心に常時10人ぐらいで行動する事が多い。
その日もいつものように屋上でタバコを吸っていた。
相変わらず、女ッけはゼロ。男子校だから当たり前だ。
馨は壁にもたれながら、もらったヤンマガを読んでいる。
貞二は他の奴らと昨日テレビでやっていた格闘技を再演して楽しんでいる。
俺はというと最近知り合った女がウゼぇ、と周りに嘘を付きつつメールを打ちまくる。
プーさんのぬいぐるみが欲しいと返ってきた。そーいや誕生日が近かったな。
「馨、午後からゲーセン行かねぇ?」
話しかけると、ヤンマガを読む手を止め、ちょっときょどりながら言ってきた。
「えっ、で、でも次、キャサリンの授業だぞ。」
キャサリンは英語の若い外人教師で、女がいない男子校にはとても重要な授業だ。
そして馨はひそかにキャサリンに惚れている。
男子校では好きな女がいてもあまりそれを表さない空気がある。
ただでさえ出会いが少ないから大半は彼女がいない。だが興味はある。
潜在的にみんな近くの女を意識している。したがって抜け駆けは許されないのである。
そして授業をサボると唯一の接点を失う事になるのだ。
そんな俺も、ひそかに音楽の片瀬先生がお気に入りだ。
高校に入り選択科目を選ぶ際、音楽と決めていた。
でもその時は、まだボケジジイが担当教師だった。
だが、桜も完全に散る頃になるとジジイも病気で学校を辞めた。
後任の教師は音大を出たばかりの22歳の女だった。
音楽を選ばなかった奴らはこの世の終わりのごとく嘆いた。
片瀬先生との会話はある種、音楽を選択科目に選んだ奴の特権になっている。
おかげで音楽の授業は今のところ皆勤賞だ。
そして、馨にとってのキャサリンの授業の重要性を熟知している俺は、強く誘えなくなった。
「まぁ、一人で行ってくるわ。」
そう言うと、馨は困った顔をした。
そして色々と葛藤し天を仰いだり、こっちを見て何か言いかけた。
だけどうまく言葉が出てこない。
馨はすごく優しい奴だ。いつも何でもいう事を聞いてしまい、
頼まれると断われない性質なのである。
俺はそんなこいつの性格が好きだ。
「わかった、わかった。キャサリンをからかってからでいいから、一緒に行こうぜ。」
俺がそう言うと、安心した顔を浮かべたと思ったら、申し訳なさそうに
「ご、ごめん。」
と言った。何か無性に可笑しくなり二人で笑った。
タバコを排水溝に投げ捨て教室に戻った。