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空色の約束  作者: 吉乃
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9love6前の喧騒

夜の渋谷を歩く。

俺と瞳ちゃんは4人の後をついていく。

しかしそこは渋谷で有名なサークルの代表達。

スペイン坂を抜け、センター街に出る頃にはすでに10人以上の取りまきが集まっ

てくる。

俺達2人は見失わないようにそのかたまりを追う。


が、無理だった。

なぜなら、センター街を過ぎ、駅前のスクランブル交差点を右に行く頃にはどこからともなく集まってきた各サークルのメンバーや、その繋がりの人達で50人くらいに膨れ上がっていた。


結局、9Love6前には瞳ちゃんに連れていってもらった。

だけど、店前まできてウンザリした。

クラブはビルの6階にある。

そこにはエレベーター待ちの人達がすでに50人はいた。

それに米倉さん達の集団が合流したもんだからエレベーター前は大混雑。

もう米倉さん達がどこにいるのかもわからなくなった。

とりあえず道に面したガードレールに腰掛け携帯で連絡を取る。


「あ、もしもし米倉さん?」

「おう、忍か。今どこだ?俺と一緒に入んないとお前らの年齢じゃ入れてくんねーぞ?」

「いゃ、すいません。何か圧倒されてはぐれました。今ビルの前です。エレベーター全然乗れなくて…」

「しょうがねーなぁ。とりあえず下降りるわ」

「ありがとうごさいます」


電話を切った。迎えに来てもらうことに申し訳ないと思いつつも、ホッとした。


一服しようとたばこをポケットから取り出した時、知らない男に声をかけられた。

と言ってもかけられたのは俺じゃなかったけど。


「あれ?もしかして中谷瞳じゃね?」


ブサイクなギャル男2人組だった。

どうみてもただ流行りに乗ってるだけのチャラ男もどき。

メッシュの入った長髪にキャップをかぶっているギャル男。

もう一人は顔の黒い鼻ピをしたデブ。

鼻ピが鼻くそにしか見えねぇ。


瞳ちゃんは、びっくりしたように

「はぃ、そうですけど…」

と答えた。

すると長髪メッシュが

「やっばり!俺、雑誌持ってるもん」

と言っている。

「あ、ありがとうごさいます」

と少し怯えたように瞳ちゃんが答えていた。

俺は瞳ちゃんがモデルだって事を再認識した。

結構有名なんだなぁ。

それで、どうしたらいいか少し迷った。

ただのナンパなら追い払えるが、ファンって言ってるしなぁ…。


でも瞳ちゃんはしきりにこっちを見てくる。

あれ?俺と一緒にいる所とか知られるとまずいのか?色々噂が立つと仕事に支障がでるのかな?とか考えてた。


そんな俺の存在には一向に気付かない長髪男は

「やべぇ、マジかわいい。なぁ、俺らと一緒に中入らねぇ?」


と、強引に腕を掴む。


「いぇ、やめてください。ちょ、ちょっと困ります…」

「いーじゃんよ。ドリンクおごってあげるからさ」

「いえ結構ですから」


ちょっとしたいざこざになりそうな気配がした。

これはやっぱ止めたほうがいいなと思いはじめた時、もう一人のデブ鼻ピ男が言い出した。


「あん?何だよ、芸能人気取りかよ。つーか写真とイメージ違うのな。声もあん

ま可愛くねぇし。何かムカついてきた。なぁ、俺を誰だかかわってんの?」


あ、コイツはファンでも何でもない。ただのバカだ。

そう確信した俺は、ガードレールに腰掛けたまま、呟く。


「知らねーよ・・・」


そう言い捨てタバコに火をつけた。

その言葉に反応した男達が俺を見た。


「あぁ!?何だ、お前?」


お決まりの返事が返ってきたところで俺はそいつらを見て、吐き捨てるように言う。


「金色の鼻クソつけたデブ猿なんて誰も知らねぇって言ってるんだよ」


さすがに怒ったようだ。眉間にシワをよせ俺を囲むようににじりよる。

しかし俺が一人なのを確認すると、途端にニヤニヤと下品な笑みを浮かべた。

俺はうんざりした。こういうときにこんな笑みをする奴は大抵、口ばっかのへたれ。

相手にすんのもバカらしい。


「はっ、かっこつけやがって。お前こそ誰だよ、なぁ!」

「・・・・・」

「何? びびってんの?つーかお前、俺らにたてついてココ入れると思ってんの?俺らエデンの代表とダチだよ?目障りだからどっか行けよ!」

「・・・・・」


そう言ってそのデブは俺の胸倉を掴んだ。


エデンは米倉さんのサークルだ。何だ、サークルにはこんな奴らばっかりなのか・・・。

やっぱりサークル入りは断ろう。こんな奴らといて何が楽しいのかわからない。

そう思ってしまったばっかりに俺は気づいたら行動に出ていた。


「猿がキーキーうるせぇんだよ!」


俺はタバコの火を掴まれたデブの腕に押し付けた。

そのまま腕と服を掴み、足払いをしてデブの態勢を崩した後、ガードレールの上にわき腹から投げ落とす。

相手が重かったため、俺も体勢を崩し、デブに乗っかるような形になった。

鈍い音がした。

そいつはそのままガードレールの向こう側に崩れ落ちる。

何か苦しそうに叫んでいる。

周りの視線が一斉にこっちに集まる。

近くにいた人達は下がり、俺の周りにはその男達と瞳ちゃんだけになった。


長髪の男は何が起こったのかわかっていないように固まったまま動かない。

俺は立ち上がり、長髪の男に向き直った。


「なぁ、目障り・・・」


というと、男はデブを見捨てて逃げていった。最低な奴だ。


その時にはかなりの人だかりが出来ていた。

しかし俺の周り3メートルには誰も近づいてこないが。

そんな中、人垣を掻き分け近づいてくる人物がいた。

俺は「あ、やべぇ・・・」と思った。

そう、その人物は米倉さんだった・・・。

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