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空色の約束  作者: 吉乃
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プロローグ

 その日もいつもと変わらない風景だった。

 長く降り続いた梅雨も明け始め期末テストの空気が教室に蔓延している。

そんな空気とは正反対に外は初夏を告げる青々とした空が広がっていた。

俺はいつものように学校の屋上に集まり、紙パックのコーヒーを片手にタバコを吸っていた。

「つまんねーな」

 ふと独りでに言葉が出てしまう。


 俺は半村忍(はんむらしのぶ)。高校一年になった。だが何の新鮮味も無い。

新しい環境に対する期待も、ときめきも皆無だ。


 なぜかって?


 俺は教育熱心な母親の影響で中学受験というものをさせられた。

小学校の時は勉強しなくても成績が良かった。

背は小さかったが運動神経もいいほうだった。

地元のサッカークラブでもレギュラーだったし、学年の持久走大会では常に2位。

だからクラスでの存在感はそこそこあったし、女の子から手紙をよくもらっていた。

 でも小学校5年の時、大好きなサッカーを突然止めさせられて、勉強しろと言われた。

無理やりやらされた為、塾をよくサボってゲーセンにいることが多かった。

そんな俺が名門校に受かる訳もなく、かといって公立中学に行くでもなく、中途半端な私立の男子校に入学した。

俺は入学前、行きたくないと言った。

しかし、大学までエスカレーターで行けるんだからと説得され渋々行くことにした。


 この中学生活が最悪だった。


 クラスメートは同じような価値観の親に育てられたそこそこの坊ちゃん達。

毎日満員電車に揺られ、学校に通う。

一度、やめたサッカーをまたやる気にはならず、何となくゴルフ部に入った。

中学にゴルフ部があるなんてなんとも私立って感じだろ。

 だが、部員は気持ち悪い奴しかいなかった。

今でこそ、遼君効果で学生ゴルフが脚光を浴びているが、その当時は超マイナーなスポーツ。

オヤジくさいスポーツだ。入った後に後悔した。

でも気付いたときにはもう遅い。

今さら他の部には入れないような雰囲気になってしまったし、転部してまで作り上げられた空気に溶け込む気力も無かった。


 そのうち地元の友達とも疎遠になった。そしてクラスでの居場所も失っていく。

俺は身体の成長が比較的遅く、あれだけ良かった体育の成績も中の中になり、小学校の時に勉強ができた奴らに囲まれ、勉学の成績も落ち込んだ。


 生まれて初めて挫折した。ポッキリと。


 そこから這い上がるような精神力も育んでこなかった。

そして中学2年の時、あまり学校へ行かなくなった。


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