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彷徨える命脈  作者: 小倉紀能
7/14

第七章 戦い済んで日が暮れる

    1


 宵っぱりの朝寝坊にはまだ遅い夜でしかない午前二時。サトルは東名高速を御殿場に向けてレンタカーを走らせていた。擦れ違うのは明け方の到着を目指して飛ばす深夜トラックばかり。隣の席では頬に大きな絆創膏の安西が鼾をかいている。

《残念ね、市恵さんが一緒だと思ってたのに》

(るせえ! 純粋な取材の精神を妨害しないでくれないかなあ、お姉さま)

 二日後に再び訪れた『日本の自然を守る会』の事務所で、同行するのがまだ怪我も完全に癒えず、しかも、年配の安西だと告げられると「えっ!」と声を出して落胆をあらわにしたのは事実だ。安西さんは「不満でもあるのか」といった目でサトルを睨みつけたけれど、島田のオバサンは笑いを押し殺すのがやっと。両手で口を塞いで肩を揺すらせている。下心を見透かされたようで、あわてて言い訳した。

「あ、いや。怪我してるし大丈夫かな、なんて思って・・・」

「安西さんったら、自分から行くっていい出したの」市恵がいう。

 その通りと、腕組みし、口をへの字にしたまま安西がうなずく。

「あたしゃな、ついこないだまで現役の漁師だったんだ。あんちゃんが寝てる間に起きて働いていたんだよ。まだまだ負けんよ」

 相当な意地っ張りのようだが、よくよく見ればなかなか逞しい体つきをしている。黒服たちにいとも簡単に捻りつぶされてしまったのが嘘のようだ。その疑問を感じ取ったのか、目を小刻みにしばたかせると、安西はいくぶんうつむいて、怒らしていた肩もなだらかになっていった。

「こないだは、そのぉ・・・ちょっと油断した」腕組みを解いて、両膝頭を鷲掴み。「・・・ずっと気落ちしていてなぁ」ボソッと洩らす。

 力なく肩を落とした安西の背後に市恵が立った。肩に手を置き、他のメンバーにいう。「そうよ。安西さん、張り合いがなくなっちゃってて、それでこの間は負けちゃったのよね。本気だせば、あんなやつらなんか」

 といって、人差し指でピン! と弾く仕種をして安西の顔をのぞき込んだ。

「ね?」

 やさしく慰める市恵の微笑みは、やっぱり天使だ、とサトルは思った。安西が気を取り直すのを待って、市恵はテーブルの上に富士山麓の地図を広げた。そして、赤鉛筆で丸を書き入れた。

「ここいら辺でロケをするらしいわ。私が仕入れた情報はこれで全部」

 申し訳なさそうに唇を噛み、肩を竦めてサトルにいった。

「仕方ないさ。敵のガードが固いんだろう」

 市恵は、その通りというようにうなずく。

「近くにはガードマンやユニバーサル商事の社員がいっぱいのはずよ。だから、東名から間道に入るしか手はなさそうね。一時間以上歩くことになるけど、夜が明ける前に現場に侵入しないと・・・」

 結局、状況を判断して自分たちで潜入しなければならないようだ。

「ごめんね。頼むだけ頼んで、私が行かないなんて。どうしても手放せない用事があってダメなの」

「いいっていいって。ここは男にまかせときなって」

 安西はさっきの意気消沈もどこへやら。潜入取材を子供のように楽しみにしているのが、ありありとわかった。先日こっぴどくやられた黒服への復讐というのもあるのだろう。

 その晩、サトルは事務所は早寝して、零時を過ぎてから出立したのだ。夜中まで起きていた安西が、いまは隣で寝息を立てている。お腹のところで組まれている手は節くれ立ち、漁師であることをまざまざと証明していた。その手が、呼吸とともに気持ちよさそうに上下に動いていた。


    2


 御殿場のインターから一般道にでる。

 深夜なので走るクルマも少なく、県道をスムーズにクルマは走っていく。まだ映画のロケが近くで行われているような気配は見えない。堅いガードが現れたのは、人家の少ない林道に入ってからだ。始めに出くわしたのは普通のワゴン車で、いかにも不自然に道路脇に駐車してあった。車内は暗かったが、通り過ぎるときシートに人影がはっきりと見えた。安西を揺り起こして、そのことを告げた。

「そのクルマ、追ってこんのか?」

「まさか。警察じゃないんだから」

「じゃあなんのために停まっていたんだ?」

 安西は薄くなった頭に手を当ててひとしきり考え込んでいる。

「どっかに連絡しているんじゃないですか」」

「どこへ?」

「うーん。よくはわからないけど、もっと先にいる警備部隊へとか・・・」

 そういいかけたとき、マイクロバスが目に飛び込んできた。百メートルほど先に、道路を横切るような恰好で停まっている。これでは嫌でも停まらなくてはならない。ガードマン姿の屈強な男が、ライトを翳して停止するようサインを送っている。仕方なくスピードを徐々に落とし、マイクロバスの手前で停止した。

 髭を生やした頑丈な顔の男が運転席の横に近づき、ウィンドウ下げるようにジェスチャーをする。サトルは、わずかだけ窓を開けた。

「どこへ行かれます?」

 どこへ、と問われても答えに窮してしまう。この先にはロケが行なわれる予定の演習場があるだけなのだから。

「ちょっとドライブ。・・・なにか?」

 ドライブという言葉にガードマンはチラっと隣の席の安西を見やった。男同士、それも、親子のように年の離れた二人が深夜のドライブはヘンだと思ったのだろう。

「この先は、一般の人は立入禁止ですよ」

「事故でもあったんですか?」

「いや、映画のロケでね」

 正直にいうところをみると、雇われガードマンに違いない。それに、顔つきほどつっけんどんでも、威圧的でもない。

「映画かあ・・・」初めて聞いたようなふりをする。「だったら、見学とかできないの?」

「ダメダメ」ガードマンは顔の前で手をひらひらさせた。

 これ以上聞いても逆に疑われるだけだし、法的な許可もとってあるのだろう。イザコザを起こしてもムダだ。「わかりました」と素直に引き返すことにした。

 バックミラーに、ガードマンが無線機で連絡している姿が映っている。さっきのワゴンに、ちゃんと引き返すか確認しろとでもいっているのだろう。安西は腰を座席の前のほうにズラした恰好で、ムスッとしたまま少ない髪をいじり、ワゴンを見やった。

「お手上げかい」

「あきらめないで、脇道がないか探してくださいよ」

「なんとか潜り込まんとな。こう見えてもワシも漁師の端くれ。目には自信がある」

 背筋をぴっとのばし、フロントガラスに顔を押しつけて森の裂け目を捜しはじめた。五分もたたずに安西が大声を上げた。

「そ、そこ!」

 サトルは急ブレーキをかけた。

 安西の額がフロントガラスに当たって鈍い音を立てた。

「ててて・・・わしゃこれでも怪我人だぞ」顔をしかめ、苦々しくいう。

「だって急にいうから・・・」

「探せっていったのは兄ちゃんだ。めっけたから、そういっただけなろ。なにかい、ずっと過ぎちまってからゆっくりといえばいいってのか?」

 ひねくれた言い方に、「はいはい、すいませんでした」と素直に応じる。

「相棒としゃ、問題だな、え、兄ちゃん」

(口の減らないオッサンだ。だれが好き好んでパートナーなんかに・・・)

《抑えて抑えて。根はいい人なんだから。喧嘩しないで上手くやってよ》

(わかったわかった)

 安西の言う横道は、とうてい道と呼べるような代物ではなかった。傍目には森がわずかに後退しているだけで、茂った緑の下にクルマを潜り込ませるのだ精一杯だった。

「クルマが入れる道なら、誰かが見張ってるに違いねえ」

 もっともだ。

「道なき道を進むっていうわけですね」

 二人は下草を集めてクルマを覆った。


    3


 暗闇では地図と磁石が頼りだった。

 二人はペンライトで地図を照らして現在地を確認した。あとはロケ地への方向を確かめて、藪の中を一直線・・・というはずだったがだいぶ苦労した。道らしいものはまるでない。奥に入れば樹々は密集しだして行く手を阻む。下草は腰まで伸び、蔦や梢が絡みあっている。一〇メートル進むのに一〇分以上かかってしまう始末だ。だんだん空が白みはじめてくる。焦りがサトルの肩を圧迫しはじめてきたとき、突然、視界がパーンと開けた。

 穏やかな丘陵地帯が果てしなく広がっている。所々に茂みがあるくらいで、広大な富士の裾野は朝靄に煙っていた。嬉しさで二人は大声を上げそうになった。それを止めさせたのは、無線機を携えたガードマンや黒服の男たちの存在で、あわてて頭を引っ込めた。

「かなりガードが厳しいですね」

 サトルは望遠レンズをつけたカメラを覗きながらいった。監視は百メートル間隔ほどに配置されている。サトルたちのいる茂みから、次に身を隠せそうな位置に移動するには数分はかかるだろう。その間、ガードの連中に発見されない保証はない。いや、必ず見つかってしまうに違いない。ロケ現場はもう目と鼻の先。しかし、進めない。さてどうするか。いらいらが募っていった。

 ガードの連中に異変が起きたのは暫くしてからだった。一番近くにいたガードマンに何か連絡が入ったらしく、尻に火がついたように左に向かって走り出したのだ。

「なにかあったのかね?」

「さあ?」

 もう一人のガードマンが右からやってきて、これも左へ走っていった。

「あっちの方で」と安西さんは左を指差した。「事件でも起きたと見える。・・・すると」と右手の方を見た。「こっちはノーガードってことになる。それに、もうこっちからガードマンが走ってこない・・・」

 同意を求めるようにサトルを見て、舌なめずりをした。

「オーケー」

 頷きあうと,一目散で茂みから駆け出した。周囲をうかがうゆとりもなかった。とにかく走った。サトルは高校を卒業して以来こんなに走ったのは初めてだというくらい懸命に走った。足が重たくなってくる。安西の背中がしだいに離れて行く。

(オッサンに負けちまうのかよ!)

《情けねーの。ほら、茂みまであと少し! がんばるがんばる!》

 濃い緑を茂らせた樹木が数十本、身を寄せるようにして生えそろっている。安西の姿がその小さな藪の中にスルリと消えていった。サトルも必死の形相で、ひきつり気味の足を懸命に前に動かし、小さな茂みの中にカラダをダイビングさせた。枝が顔や腕をしごいていくのがわかった。だが、痛みなど感じなかった。倒れ込んだまま、暫く動くことができなかった。目を開けると、安西の勿体をつけたようなしたり顔があった。

「若いのにだらしがねえな。足ぃ引っ張るなよ、兄ちゃん」

 そういわれても仕方がないものがあった。ピンと張りつめた朝の空気をまともに吸い込んだせいか、ひどく息が切れて肺が痛い。

「あ、安西さん、タ、タフです、ね・・・」

「お前らと鍛え方が違う」と自慢化に鼻を鳴らした。

 力を振りしぼって起き上がると、茂みをかきわけ後方を見た。ガードマンに両腕をつかまれた男たちが連れ去られようとしている。ガードを潜り抜けてきたマスコミ関係者だろう。おかげでサトルたちは関門を突破できたわけだが。

「少し休むか」安西が相好を崩してニッと笑いかけた。

「はい」

 緊張の糸が切れたように、サトルは全身の力が抜けていくのを感じた。


    4


 ずんずんと大地を揺るがせる響きが背中からつたわってきた。目を覚ますと青空が広がっていた。

「よく寝たな」

 双眼鏡を覗く安西の背中が見えた。時計を見ると七時を少し過ぎたところだ。

「はじまったぞ」

 その声に促されて安西の横へ行くと、丘陵の稜線がうねうねと動いているのが見えた。双眼鏡で見ると、それが赤い旗刺物を背にした騎馬武者の大群だとわかった。地鳴りはこのせいだ。

「凄い・・・」

「こいつぁ見物だ。一体なにがおっぱじまることやら・・・」

「本物の戦さみたいですね」

「スタッフはどこに?」

「ロケ隊は見えねえな。ヘリが何台か飛んでっけどな・・・」

 といった途端、安西の顔色がすっと蒼褪めていくのが分かった。

「おい、兄ちゃん。聞こえねえか」

「え?」

《聞こえる・・・ほら、後ろから》

 サトルは背後の緑の裂け目に駆け寄った。安西も一緒だ。

「安西さん!」

「・・・」

 声にならない。

 黒い旗指物を靡かせた騎馬の群が見える。その旗や甲冑の色からして、さっきの大群とは別の軍だ。どうやらサトルたちは、戦場のど真ん中にある藪に隠れ込んでしまったようだ。しばらくすると不安は困惑と恐怖へと変わった。

 双方の騎馬武者は、いままさに激突しようとしていた。赤の騎馬は戦国ドラマで見かけるような日本の鎧兜を身につけている。異様なのは、黒い旗を掲げた軍だった。白銀に輝く甲冑で包んでいる姿は中世西洋の騎士のようだ。それだけではない。騎乗している乗り物はただの馬ではなかった。なんと緑色の鱗で覆われた竜だった。

 金色のたてがみを靡かせ、半ば開いた口から紅蓮の舌がちらちらと零れている竜馬が近づいてくる。

 つくりものにしては動きも自然だし、中に人や馬が入っているようには見えない。第一、足の動きが馬とはまったく違っている。馬の長く細い足と違って、無骨で太く短いそれは、トカゲの足のようにも見えたし、恐竜の足のようにも思えた。しかも素早く動いている。

「なんじゃあれは? ロボットか?」

 安西が首を傾げながらいうのも、もっともだ。

 竜馬に跨がった騎士たちは、まるで地上を滑空するように戦国武者の群れへと突入していく。その、竜馬の後ろに何頭もの小さな獣がしたがっている。角の生えた羊の頭と蹄歯・・・背中には羽根が生えている。あれは、サトルが目撃し、写真に撮ったデビルに間違いない。

 戦慄が背筋を貫いた。

 いや、それはまだ驚愕の入り口でしかなかった。

 西洋の長槍を首に受け、騎馬から放り出される戦国武将の首。首を失った胴体からは血が噴水のように吹き出す。腕を剣で叩き切られた雑兵がのた打ち回っている。足軽たちは寄ってたかって竜馬にまたがる騎馬武者に長槍を突き刺し、針ネズミのようにしてなぶり殺す。デビルが跳ね飛びながら騎馬武者に齧りつく。鋭い犬歯で肉を食い千切る。血潮が辺り一面にほとばしる。血で血を洗う戦いが眼前で繰り広げられている。撮影のためのごっこなどではない。殺戮絵巻そのものだ。

「ど・・・どこが・・・え、映画なんだ?」

《こ、本物の殺し合いよ!》

 安西はさっきまでの元気はどこへやら。呆然と眺めやっている。時折上空にヘリコプターが飛来する以外はすべて戦国時代そのままだ。

 サトルは震える手で、目にしている全てをフィルムに定着する作業に没頭した。


    5


 茂みの周囲でも戦闘が繰り広げられていた。

 すでに竜馬を失った騎士の背中が、サトルの覗いているファインダーいっぱいに迫る。騎士が立ち向かう相手は、長柄の槍をもった日本の雑兵だ。巧みに繰り出される槍をかわしながら剣を振り回すが、鉄の甲冑が動きを悪くしていた。その隙を雑兵は見逃さなかった。甲冑の、胴と腕のつけねの繋ぎ目を狙いすまして槍を突き上げた。

 ぶすっ、という軽い音とともに、槍先が雑兵の脇の下から首筋へと突き抜ける。騎士の動きが止まり、その手から剣がずり落ちた。身体を串刺しにされたまま、ガチャリと金属音をたて、騎士が茂みの中へと仰向けに倒れ込んだ。

 サトルの目の前に騎士の顔があった。

 返り血を浴び、鬼面の形相をした雑兵が、騎士の腹に足をかけ、渾身の力で槍を引き抜こうとする、その雑兵の手がピタリと止まった。茂みの中にあるレンズに気がづいたのだ。ファインダー越しに、意表を突かれた雑兵があわてて槍を抜くのが見えた。ズボッという肉音とともに槍が引き抜かれる。その勢いで、雑兵はもんどりうって腰を落とした。だが、瞬く間に体勢を取り直し、槍の矛先をサトルに向けた。

「しゅ、取材です! 映画の取材だよ!」

 藪のなかから大声で叫ぶが相手はキョトンとするだけ。獲物を狙う殺意が向かってきた。血にまみれた槍が、枝々を切り裂きながらサトルの横面を掠めると、生暖かい血糊がサトルの頬に降りかかった。思わずサトルは尻餅をつく。雑兵は覆い被さるようにして、槍先をサトルの喉笛めがけて突き出した。かろうじて一瞬早く体をかわした。

 槍が空振りする。

「おのれ」

 雑兵の充血した目が、飛び出すほどに見開かれている。食い千切らんばかりに歪に歪んだ口が「死ねっ!」と絶叫した。

 何度も槍が繰り出される。サトルは転がり逃げる。目の前に雑兵の顔がある。万事休すと目をつむった、が刺された感じがない。不審になって目を開けると、雑兵が凍りついたように立ちつくしている。その口端からゆっくり真っ赤な唾液が糸を引いて垂れ、だらりとサトルの足元に落ちた。あまりの混乱の中で、何が起きたのか理解できなかった。

 どすん、という音を立て、雑兵がサトルの下半身を覆うように倒れた。その首が剣で刺し貫かれていた。

 狂気を帯びたように見開かれた目。わなわなと震えている唇。安西の両手は、剣の柄を握ったままのかたちで虚ろに空気をつかんでいた。

「や、殺っちまった・・・」

 安西がペタリと尻餅をついた。サトルは雑兵を膝蹴りするようにして退かすと、安西の横に腰を降ろした。すぐ横には甲冑の騎士と雑兵と、死骸が二つ、血塗られて転がっている。安西もサトルも息絶え絶えだった。映画のロケどころではない。殺し殺される合戦にまぎれ込み、戦に加わってしまった。

(どうなってるんだ?)

《わかんない!! わかんないわよ、アタシだってぇ!》

(僕を守るために現れたんだろう! 死ぬところだったじゃないか!)

《は、反省してるわ。ちょっと動転しちゃって・・・》

(守護霊が動転して反省する、か)

《・・・ユニバーサル商事がこの映画のロケを秘密にしたっていう理由が分かったわ。全世界で絶対ヒットさせるっていう自信は、これだったのね》

(殺し合いだのトカゲの化物だの、常識じゃ考えられないよ!)

《そこよ。常識じゃ考えられないことが実際に行なわれているってこと。アニメやCGじゃできないことを実写で撮る。やらせや演技じゃなくて実際に殺し合う。そんな映画がいままでにあった?》

(ないとおもうけどさ。気違い沙汰だよ、こりゃあ)

 安西さんが嘔吐していた。胃を抑えながら、うつろな目で空を眺めている。落ちくぼんだ目が、殺伐とした視線をサトルに何かを訴えている。一時間足らずの間に起きた出来事に、頭が白み切っているのだろう。きっと自分も同じだ。サトルも、吐き気を抑えるのが精一杯だった。


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