表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 鈴元 香奈
1/9

転校生

「一切の望みを捨てよ」

 着古した制服の見慣れない小柄な生徒が、校門近くに設置された考える人の像を見ながら、そう呟いた。

 それが、西田研一との出会いだった。


 中学三年生の二学期、運動部は引退して受験が始まりそうな重い雰囲気の中、西田は転校してきた。

 小柄なので一年生かと思ったが、三年生だった事に驚く。

 制服の黒いズボンは、膝に穴があきそうなほど薄くなりテカっていた。カッターシャツも薄汚れて、とても三年間着ただけとは思えなかった。


 俺は、西田の呟きが気になって、調べてみた。

 地獄の門の銘文?

 考える人は地獄の門の一部?

 西田にとって、校門は地獄の門だったのか?


 西田は、工場で働く母親とその愛人の男と、壊れそうな古いアパートに住んでいると噂されていた。

 幸せそうではなかった。勉強も遅れているらしく、小学生で習う漢字さえ知らないことがあった。

 授業中はいつも上の空。給食だけを食べに来ているような生徒だった。


 クラスの皆は西田を馬鹿にしていたが、俺は学級員として、西田をクラスに溶け込ませたかった。

 体育祭は五月に済んでいたが、文化祭はみんなで盛り上がりたかった。

 だから、事あるごとに声をかけた。西田は少し迷惑そうにしていたけれど、話には応じた。


 西田の噂が追加された。

 借金を踏み倒して逃げている親のせいで、中学校だけでも数回の転校を繰り返しているという。

 とても勉強どころではなかったと思う。

 相変わらず、西田はまともに授業を聞いていない。しかし、学校には真面目にやって来ていた。その訳を問うと、「家にいたら男に殴られるし、飯も食えないから」と答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ