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受付嬢二年目・海の国編4


「なんで……ロックマンって留学中(調査中)じゃなかったっけ」


 しかも一人ではなく複数でいるようで、隣には豊かな波打つ髪を揺らして歩くこの国の民族衣装を着た美女に、後ろにはサタナースみたいに上半身がほぼ裸の格好の男性達、その後ろにはまた……ウェルディさんらしき人物が同じく民族衣装を着て歩いているのが見えた。

 またロックマンの前には見覚えのある黒髪の男性が歩いていて、時折うしろを振り向いては美女と何かを話している。

 その黒髪の男性だが、こちらもまたいつもの軍服みたいな服ではなく、珍しく軽装のゼノン王子の姿だった。


 距離的に私達からそれほど離れていないというか、遠くからだんだんこちらの方へと歩いて来ているようで、さっきよりもハッキリと見えてきた。

 私達は浜から少しだけ離れた木蔭で休んでいるので、相手は気づきそうにないのが唯一の救いである。


「私もさっぱり。そもそも殿下がここにいること自体ビックリよ」

「殿下はニケが旅行でここに来ることとか知ってた?」

「第一小隊の隊長代理だけど、ここ数日はご公務もあっていなかったの。話しもしてないし」


 私はウェェと顔を歪める。

 毎度わけのわからない確率ではちあうが、やはり私は悪しき呪いにでもかかっているのかもしれない。

 今度こそ本気で神殿にお祓いしてもらおう。


「あれは無視、見なかったことにしよう」

「そうねそうしましょ。あなた達今会ったら色々面倒そうだもの」


 そう言ってニケと頷きあっていると、ベンジャミンの隣にいたサタナースがいなくなっていることに気づいた。 


「ベンジャミン、サタナースは?」

「なんか急に立ち上がってあっちに……あれ? あそこにいるのって殿下とロックマン?」

「ええ!?」


 ベンジャミンが指を指した方向にはサタナースがいたが、あいつが向かった先には私とニケが見なかったことにしようとしていた集団がいる。

 やめろそっちに行くなと叫びそうになるものの、時すでに遅し。

 サタナースが手を上げてゼノン王子に声をかけに行っている姿が見えたので、もう何をしても意味はない。


 私は膝を抱え込んで項垂れた。

 こういう時こそだけは美女だけに集中してもらいたかった。いや奴の隣には美女が歩いていたからそれがたまたま目に入ってしまったのかもしれないけど。


 離れているが、集団はちょうど私達の前辺りで止まり、ゼノン王子が「お前なんでここに!」と叫んでいるのがかすかに聞こえる。あちらからすれば私達もなんでここにいるんだという印象なんだろう。

 

「お前らこっちに来いよー!」


 すると能天気なクルクルパーが私達を大声で呼ぶ。


「誰が行くか!!」

「でも殿下も笑って手招きしてるわ」

「なんで!!」


 いったいあちらでどんな会話がなされたのか、しょうがないわねと言ってベンジャミンとニケが立ち上がった。嘘でしょ行くの、とごねる私の両手を二人がガシッと掴むと、昨日サタナースがベンジャミンにされていたようにズルズルとこの浜辺を引きずられた。

 砂の上に二本の長い線ができていく。


「お前達がここに来ているとは、驚いたぞ」


 思っていたよりあっという間な距離で、ゼノン王子が私達を見て楽しそうに笑った。そんな様子に、不貞腐れている私が近寄るのも失礼だと思ったので、しゃんと立って姿勢を整える。


「殿下は何故?」

「セレイナには公務で来ている。今はアルウェス含めこちらの王女に国の案内をしていただいているところだ。……ベラ、ここにいるのは俺の自国の友人達だ」


 なんとゼノン王子の後ろとロックマンの横を歩いていたのは、セレイナ王国の王女様だった。

 白い砂浜のような髪色をした美しいその人。


 王女は私達の顔を一人一人眺めると、うんうんと頷く。


「ゼノンは女友達が多いのね、良いことが知れたわ」

「俺だけではない、アルウェスの友人でもある」

「そうなの!? なんて庶民的……」 


 ロックマン達がここにいる理由について話すつもりはないのか、会話は流れていく。


 王女様は一人ずつ丁寧に言葉をかけてくれて、サタナースには「頭がクルクルね」、ニケには「良い身体してるわ」、ベンジャミンには「この国の生まれ?」と聞き、私には「あなたの髪色変わってるわね」、なんて軽く会話をしてくれた。

 親しみやすくて美人で、きっと人気のある人なんだろう。

 話している間にも周りにいる現地の人に手を振ったり振り替えしたりと忙しい。

 

 ベラ・ナフス・セーレ・セレイナ王女。

 ベラ王女はこのセレイナ王国の第一王女で、今は王国内をよりよく知ってもらおうとゼノン王子と何故かロックマン達を率いて浜辺を歩いていたそうだ。

 ちなみに彼女の後ろにいる男の人達は護衛なのだという。確かに言われてみれば護衛っぽい。取り巻きみたいにもみえるけど。


「久しぶりに楽しい時間を過ごせそう」


 王女様はロックマンの腕に手を回してぴとりとくっついている。

 一国の王女がそんな女たらし野郎にベタベタしても良いのかと思ったが、それを疑問に思ったサタナースが良いのかそんなくっついて、と怖いものなしに聞いていた。

 馬鹿を通り越してもはや勇者である。


「ゼノンのような一国の王子様にはくっつき難いけれど、アルウェスなら公爵家の次男だし気兼ねもないわ。それに触りたくなるような腕だもの」


 触りたくなる腕ってなんだ。


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