表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/152

*創造物語集・第一章『六つの精霊と罪(デラキュソス)』

*飛ばして読んで頂いても差し支えありません。

 むかしむかし。

 そのむかし。


 まだ人の形も、魔物の形もなかった頃。


 六つの精霊が、仲良くこの地上で暮らしていました。



「この原っぱで遊ぼう!」


 元気いっぱいな火の精霊が、広い草原で駆け。


「そんなに走ったら、君の身体が熱くなって草が焦げるよ!」


 水の精霊がそのあとを追い。


「あ~! 私の草を燃やさないで~」


 地の精霊が泣き。


「泣くな地。燃やされたら僕がやり返してやろう」


 雷の精霊が慰め。


「火なんか追い越してあげるわ」


 風の精霊は思いのままに飛び。


「みんな元気いっぱいだなぁ」


 氷の精霊は、静かにみんなを見守っていました。


 六つは喧嘩もしますが、すぐに仲直りもします。

 だからいつもいつも笑顔で溢れていました。

 

 けれど地上に六つだけの存在。

 みんなで遊ぶのも楽しいですが、それ以上に仲間が欲しくなりました。



「僕達以外に、何かいないのかな?」


 そんなある日、水の精霊がみんなに言いました。

 いつも集まっている木の木陰で、みんなでお昼寝をしているときのことでした。


「何かって?」


 火の精霊が首を傾げます。


「火とか地とか、私達以外の精霊ってこと?」


 水の言うことを理解できていなかった火に、風がそう説明をしました。


「僕達だけでもいいけど、仲間がいれば、もっと楽しいんじゃないかな!」


 ちゃぷちゃぷの透明の手を広げて、もっともっと楽しいことをしたい、と水の精霊ははしゃいで言います。


 みんなは考えました。

 どうやったら仲間が増えるのだろうと。


 すると雷がパチパチと光る眩しい手を上げました。


「そういえば、俺達は、どうやって生まれたんだ?」


 雷の言葉に、みんなはう~んと考えました。


「そうだ! 私達は、神様が生んでくれたんだよ」

「でも見えないよ?」

「神様は見えないんだよ!」


 地の精霊は、空に向かって両手をあげました。


「ねぇねぇ僕達には力があるから、合わせてみようよ。新しい仲間がつくれるかもしれないよ?」

「いいね、それ!」

「楽しそう!」


「ま、待って」


 水の言うことに賛成する雷、火、地、風に対し、氷が声をあげました。


「私は、みんなとずっと一緒が良い」


「増やさなくたって、大好きなみんなといれれば、毎日楽しいもの」


 いつもはみんなを温かいまなざしで見守っていた氷が、泣きそうな顔でそう言いました。


 いつもと違う氷の様子に、他の五つの精霊は戸惑いました。


「で、でも氷。もっといれば、もっと楽しいんだよ?」

「水は、今がつまらないの?」

「そうじゃないけど……」








 次の日のあさ。


 氷はいつもと違う雰囲気にカチカチの身体が震えました。

 何故なら、あさのはずなのに、太陽が見えないのです。


 月も太陽もそらにはなく、ただ赤い雲が空をおおっていました。さらに遠くには渦を巻いた赤黒い雲が見えます。


 氷はみんなを探しました。

 けれどいつもの木陰へ行っても、草原へ行っても、みんなはどこにもいませんでした。



 そしてほうぼう探し回り、ひときわ赤黒い雲の下へと行くと、そこには氷が初めて見るがいました。


 黒くて大きくて、ぐちゃぐちゃしていて、手が何本もあって、でも足は一つだけ。


「氷! 助けて!」


 みんなは氷の精霊に内緒で、仲間を作ってしまいました。五つは反対する氷をびっくりさせたくて、好奇心のままに仲間を生み出したのです。


 そしてそれは見事氷をびっくりさせ、新しい存在を作ることには成功しましたが、けれどその新しい仲間は、みんなを食べようとしています。


 黒くて、大きくて、歩くたびに草が枯れて、聞いたこともないような声でゴーゴーと鳴いている、新しい仲間。


「食べられちゃう!」

「嫌だ!」





 ……いいえ、これは仲間などではありませんでした。


 その黒い精霊は、火の精霊の炎をものともしません。

 水の精霊の水をも弾き、地の精霊の蔓も腐らせてしまいます。

 雷の精霊の電撃はまったく歯が立たず、風の竜巻も逆に吹き飛ばされてしまいました。



 なんと五つの精霊が作ってしまった黒い精霊は、五つの力を持ってしまったのです。



(創造物語集第一章・一部抜粋)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◎魔法世界の受付嬢になりたいです第3巻2020年1月11日発売 i432806
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ