ハーレ就業編・6-4
晴れた日の風は心地よい。ララの背中に乗って空を飛んでいると、いつもより余計にそう感じる。
白くて肌触りの良いリュコスの毛も、気持ちよさそうに風に靡いていた。
「いつ引っ込むかな……」
「ナナリー様、そんなに触らない方が良いですよ」
そんな中、私は脳天に出来た二つの丸いこぶを撫でている。綺麗な王国の景色や、飛びながら会話を交わしている騎士団長たちの声はそっちのけで。
私の頭には赤い無人島が二つ出来ていた。左側にある方が若干大きい。
しかし、痛いので早く沈没しないかとバシバシと何度も叩く。
「治癒魔法使えばいいのに」
同じく使い魔のプルに乗って空を飛ぶゾゾさんが、隣で自分の頭を叩いている私を見て呆れた声を出した。
「ヘルは根性で治しそうだからな」
反対隣ではフェニクスに乗っているアルケスさんがそう彼女に返す。
森へと向かうため、私とアルケスさんとゾゾさんの三人は、騎士団と共に空を飛んでいた。騎士団は天馬で、私達は使い魔。
騎士団は隊列を組んでおり、第八小隊が前で、第一小隊が後方で飛んでいる。
私達は騎士団長達の隣を飛ばせてもらっていて、どちらかと言うと前の方にいた。
一方でロックマンやウェルディさんは第一なので後ろにおり、奴は後ろの中でも一番後ろを飛んでいる。つまり最後尾。
形は全然違うが、奴に背後を取られている感じがして少々解せない。でもだからと言って前に居られても、それでそれは気にくわない。
なんてことをポロッと零したら、あなたイチャモンが多い破魔士みたいよ、とゾゾさんにからかわれたので早々に口を閉じることにした。
そんな質の悪い人間にはなりたくないが、正直自分でも質は悪いほうだと思っているので今更遅いかもしれない。
「いえ、こんなことで魔法を使うのはもったいないです」
「やせ我慢しちゃって」
「この痛みは一生忘れません」
ウェルディさんに拳骨を喰らったこの頭。
しかも彼女は私に一発浴びせたあと、ごめんなさいと言いながらもう一発仕掛けてきた。謝るなら殴らないでいただきたいものだが、私もカッとなってしまったし、何よりまぁ殴られ慣れているというか奴の拳に比べたら可愛いものだったので、とりあえず冷静になった後はお互いに謝った。ごめんなさい、本当に隊長のことになると私……と彼女が必死になりながら言うものだから、私はなんだかウェルディさんが色んな意味で気の毒に見えてしまい、逆に良いよたくさん殴ってもそんなことで怒らないよ、と慰めてしまった。私も悪かったし、みたいな感じで。
そして隣にいたアイツもアイツで、良い拳だった、とポンポンと彼女の頭を撫でていたものだから、ウェルディさんの憂いはそれで見事に吹き飛び、私を見ては何故か勝ち誇ったような顔を向けられた。
彼女からしたら怒られるのではないかとビクビクしていたようだけれど、逆に褒められたので安心したのだろうと私は勝手に解釈する。
そしてそんな彼女は今、一番後ろでロックマンの隣を飛んでいた。
見れば第一小隊はウェルディさんだけが女性で、紅一点。第八小隊はニケの他にも女性は六人くらいいるが、小隊ごとの特性なのだろうか。
一つの小隊の人数は二十人。に対し、第一の数はわずか十人。第一小隊の場合は内容が内容なので致しかたないのだとは思う。
「じゃあ森に降りるぞ。皆続け」
騎士団長の声に、私達は一斉に降下した。
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「ここが地図にある場所だ」
上空から、森の中に大きな湖があるのが見えていた。
騎士団と共に東の森の奥へ着地したあとは、ララから降りて彼女を小さくし肩に乗せる。天馬は小さく出来ないようなので、騎士たちは湖の近くで天馬を休ませるようだった。
三十頭もいるとわちゃわちゃしているけれど、美しい馬なので見ていて飽きないし寧ろ興奮した。
「周りには結界を張っておこう」
騎士団長の言葉に、黒いローブを着た第一小隊の人達が、防御の膜を周りに張っていく。
「ワイバース・プルンクト(悪しきものを阻め)」
「アムライア(守りの壁)」
「ノーモス(避けよ)」
ウェルディさんも魔法をかけており、隊の隊長であるロックマンはあそこにもかけようか、と騎士達に指示を出していた。
疑問なのだが、年下のアイツに指示されて嫌な気分になったりしないのだろうか。見た目は元々大人びているので違和感はそこまで感じないのだが、同い年とは言えない感じではあるし、あのウェルディさんだって、確実に私より一個か二個は上である。
なのに隊長、隊長、と慕われ過ぎているようにも見えるため、何となく不思議に思った。
「綺麗な湖」
しかしその間、私は青々と澄んだ湖に魅入る。
こんな森の奥に、けして小さいとは言えない立派な大きさの湖があるなんて思いもしなかった。サタナースやベンジャミンから聞いていても、池より少し大きいくらいの面積なのかなと想像していたのでビックリする。
「ここは昔、人魚が住み着いていたって噂があるんですよ」
「そうなんですか?」
そうしていると第八小隊の騎士の男の人が、湖を覗いていた私に近づいてそう教えてくれた。
人魚は遠い遠い海の向こうに住んでいるとされており、伝説の生き物ではなく、見かけない貴重生物として知れ渡っている。魔法動物とは少し違う扱いで、私達とは人種が違うというか、認識としては海に住む人達というような感じ方だった。
「凄い。尚更綺麗に見えてきました」
暗い森だが、湖だけが静かに輝きを放っている。
「人魚は美しい容姿をしているようですが、貴女ももしかして人魚だったりしますかね」
「いえいえそんな馬鹿な」
人魚は人魚でも人食い魚が限界です、と冗談を交えて私は笑った。
「まずは俺が記憶探知をしよう」
サタナースが書いた報告書には、湖の近くの一番大きな木の下で倒れていたとあった。
私や騎士団の男の人もその声に湖から目を離し、騎士団長を見る。
「ナナリー」
すると離れた所にいたゾゾさんが此方に近づいてきて、私の手を引っ張って木の所へと連れて行った。
アルケスさんもそこにいて、こっちこっちと手を招いている。
「貴女すぐにナンパされるんだから、一人にならないの」
「ナンパ?」
「とにかく、今はちゃんとこれを見ておかないとな」
アルケスさんが大きな木を見る。
周りには私達以外に、魔法をかけ終えた第一小隊の騎士と第八小隊の騎士達が集まっていた。
木の下にいる団長は、対象を見つめて指を半時計回りに回しだす。ぐるぐると止まることなく回し続けていると、数十秒後にようやく黒い靄があらわれる。靄は徐々に広がり、周囲を覆っていった。
すると夜から朝までと景色が変わり、そこにやっとゴーダさんの姿が現れる。それに、あの元人間の魔物に似た魔物にズルズルと引きずられる形で。やはり、この魔物が彼に何かしたに違いないようである。
しかも魔物は、
「ニケ見てみろ、二本足で立ってるぞコイツ」
「うわぁ、気持ち悪いですね」
少し離れた所でそれを見ていたゼノン王子とニケが、険しい顔つきで私達の傍にやって来る。
ニケは腕を擦りながら私の隣に並んだ。
ゼノン王子はそのまた横につく。
「あれが元人間の魔物に似てる魔物? 他の魔物に比べて妙に生々しい魔物ね」
「どこからどう連れてきたのか知らないが……。ん? 食べようとしているのか?」
ゼノン王子が記憶探知で現れた魔物の行動にしかめ面をする。
なんと魔物は引き摺ってきたゴーダさんの首元に顔を近づけて、あろうことか噛みついていた。
気を失っているゴーダさんは、痛みを感じないのかびくともしていない。
「これは……本当に怪我はなかったのか?」
魔法をかけている騎士団長が、ハーレの職員であるアルケスさんに向かって野性味のある逞しい引き締まった顔を見せた。
「無い、とありましたよ」
「普通に噛まれているように見えるんだが……」
確かにガブリ、といかれている。
けれど報告書には怪我などという記述はもちろん、ベンジャミン達の話の中でも『怪我はなかった』と言っていたので、本当になかったのだろう。
「あ! 団長、魔物が移動しました!」
「あっちの方向は、シーラ王国だな」
「辿ってみましょうか?」
「いいや国境は越えられない。ただでさえここは最端だ。もっと時間を巻き戻して辺りを調べよう。それと今日の調査が終わったら、明日はそのゴーダ・クラインに一度会いに行く。身体検査が必要だろうからな」
団長はパチンと魔法を解いて、魔物の映像を消す。
「ま、良い練習になる。これだけ人数がいるんだ、調査ついでに記憶探知でも覚えてみろ」
その声に騎士団は何か所かに分かれ、それぞれの場所で魔法をかけ始めた。ニケによればあの魔法が出来るのはやはり騎士団でも数は少ないようで、第一小隊でも出来るのはロックマンと他隊員三人のみなのだという。
ニケもまだ出来ないそうで、手をコキコキと鳴らしていた。
「ナナリーは出来ないのか?」
「殿下のほうはどうですか?」
ゼノン王子のことは殿下と呼ぶようにしている。学生の頃は王子で一貫して通していたが、流石にもう軽々しくゼノン王子とは呼べなかった。
それが分かったのか、王子も一瞬笑った。
「俺はまだちょっとな。でも珍しいじゃないか、お前が出来ない魔法があるなんて」
「勉強はできますけど、なんでもできるワケじゃないですよ」
「そうなのか? まぁそうか」
「そうなんです」
私は近くにある草むらに魔法を掛けているアルケスさんを見る。
「アルケスさんて、何でそんなに魔法を使えるんですか?」
「さあなぁ。沢山あった方が便利っちゃ便利だろう?」
指を回して対象の時間を戻しながら会話を交わしているのにも関わらず、その集中力は衰えていない。集中力が必要な魔法なのに、普通会話なんてしてしまったら気が散って出来ないと思うのに。
「私達が聞きたいのは、何でそんなに出来るかってことなの!」
ゾゾさんは納得がいかないのか、的外れな答えはいらないわ! と必死の形相で彼に迫っている。
軽くなんの魔法でもやってのける人だが、けしてそれらの魔法は軽く簡単に出来るものじゃない。元騎士団員だけれど、彼は一体どんな騎士だったのだろう。
それにしてもやめたのが十年前ということだが、今の騎士団に知り合いはいないのだろうか。団長や騎士達に対してもやけに他人行儀である。
「魔法が好きだからじゃない?」
黒に青みがかった髪を揺らして笑った。
「またそんな……。深いんだか深くないんだか分からない答えを」
「俺ね、教えるの下手なんだよ。こう、感覚に任せてるっていうか」
「……ただの天才肌ってこと?」
「良く言えばそんな感じ」
天才ムカツクぅ~! と親指を噛む彼女。
記憶探知は呪文がいらない分、相当な集中力が大事なのだと教科書や参考書には書いてあった。けれどそんなことを言われても、いくら集中した所でものに出来ていないのが事実。
「アルウェス隊長、これが…………」
「ああ、それなら」
「隊長あそこは――」
「そうだね――」
一方で湖を挟んだ反対側では、出来る組である第一小隊が其々調査を続けていた。
横に横にと移動しながらやっているのか、ここでノロノロとしていたら追い付かれて、まだちんたらやっているのかと馬鹿にされてしまう。
教えてあげたいんですよ、とか虫唾が走るようなことを言われたので構えていたが、どうやらそれどころではないのか、自分の隊や他の第八の騎士にも教えているようだった。遠くなのであまり見えないが、ウェルディさんがロックマンと手を合わせて何かをやっている。
あれが手取り足取り教えるっていう図なのだろうか。
私はアルケスさんの構えを、見よう見まねでやってみる。
「ナナリーは熱心ね、本当」
「ニケもあれくらいやったらどうだ」
「私は良いんです」
左手を突きだして、親指と人差し指の間を開かせて、その間に右手の人差し指を持ってくる。
専門書にあった通りに、指先から真っ直ぐ対象に魔力を伸ばしていく感じで、ぐるぐると反時計回りに指を回す。
やり方としてはこんな流れなのだが、これで出来たら皆苦労はしていない。
集中力が必要だというのなら、山にでも隠って滝にうたれて精神力を鍛えるしかないのだろうか。
きっとそれくらいしなければ、この魔法、一生出来る気がしない。
ふぬぬ、と手に力を込めたところで、何も変わる気配はなかった。
「はぁ……」
「まだ出来ない?」
「っわ!!」
いつこっちに来たのか。
ロックマンが横に立っていた。
もう湖周辺の調査が完了したのか……いや、そうでもない様子である。 まだあちら側では調査を続けているように見えた。ぞろぞろと動いている。
「邪魔しないでよね。仕事まだあるんじゃないの」
「僕の仕事は終わらせたから良いんだよ。君と違って」
木っ端微塵にしてやろうか。
「僕、とかさ。さっき私とか言ってたじゃん。何なの。二重人格なの」
「どうでもいいだろう。君は器用じゃなさそうだから、考えても分からないだろうね」
「ああそうですか」
くそ、仕事中なのにわざわざ茶々を入れに来たのかコイツ。
未だ魔法が出来ていない私を見ては、面白そうに目を細められる。
また後ろには、ウェルディさんと他二名の騎士を連れていた。
彼女は相も変わらず私を敵対視しているのか、口を引き結んでこちらを見ている。
敬愛、恋愛するのはけっこうなことだが、害無くやってほしい。
しかし気のせいか、後ろの騎士二人がハァハァと息を切らしている。
それに引きかえロックマンはなに食わぬ顔で立っているので、おかしな光景だった。
「しょうがない。今日の朝食は?」
ロックマンは、片手に持っている金色の杖を部下の騎士に渡すと、そう言って反対側に回ってきた。
「……」
急に何だ。
私は前を見据えて無言になる。
「聞いてる?」
ひょい、と顔を覗かれる。
忌々しい面が視界に入り背けたくなるが、それだと負けた気がして嫌なので見つめ返してやる。さっきからいちいち近い奴だが、これは嫌がらせなのだろうか。
けれど私は逃げない。敵前逃亡など言語道断。
「……あっちにいたじゃないのよ。今集中してるから後にしてもらって良いですか」
「朝食は何?」
「……」
またやってるわ、とニケが後ろで言っているのが聞こえた。
「……ニクロムのスープとパニ」
けれどとりあえず、仕方なく答えてやる。
「自分で作ったんだ?」
「そうだけど」
「じゃあ今日はいつ頃起きたの?」
「朝焼け前」
「早いね。で、昨日は何時に寝た?」
「……夕飯食べ終わってすぐ」
「歯磨きした?」
「した」
「夕飯は何?」
「ヤルニッカと緑豆」
「そう。ちなみに寝間着はどんなやつ?」
「えっと白……って何コレ?! 言えるかそんなこと!!」
何だこの質問!!
「……あれ?」
するとその瞬間、対象にしていた木の前に光が出来て、それはだんだん大きくなったと思えば小さくなり、白い靄になった。
それが晴れてくると、その部分だけがまるで違う動きをしており、いるはずのない小鳥が木の上でまるで巻き戻されるかのような動きをしている。
飛んでいるのに後ろへ進んでいた。
もしやこれは。
「さすが単純なだけあるね」
「え、嘘、できたの私」
なんでだ。
今まで専門書にかじりついて徹夜をしても出来なかったこの魔法。
ゾゾさんも未だ出来ず、ハーレでも出来る人が限られている魔法。
出来る人に聞いても結局何の収穫も無かったあの魔法が、まさか昨日のご飯を食べている自分を思い出しただけで出来るようになるとは、まさか、そんなことがあるのだろうか。
「記憶探知というのは、個々の感覚でしか拾えない。当たり障りなことしか書いてない教科書じゃ取得にも限界がある」
「じゃ、じゃあさっきの質問って」
「まさかあんなことで出来るようになるとは思わなかったけど、君にはああいうやり方が合ってたんだろう」
「あ、ありが」
「単純だからかな」
「……」
単純。
お礼を素直に言いたいが、そうさせる意欲を削がれる奴の発言は何とかならないものか。
しかし、あんな質問をされただけでこんな簡単に出来るとは思わなかった。ただ頭の中で自分の昨日の行動を振り返っただけなのに、記憶探知とはどういうものなのか益々分からなくなったが、記憶探知が成功した瞬間なんとなく身体がわかった気がした。
あと私の優秀な脳が。もう一度言う。優秀な脳が。
しかしロックマンに宣言通り「教えて」もらった形になったのが、悔しい。
成功して嬉しい反面、こんな解せない展開になろうとは。
「……ぁ……りがとう」
「何か言った?」
目をぎゅっと瞑って絞り出した私の渾身の礼の言葉を、どこ吹く風で吹っ飛ばしたコイツを縮小の呪文で小さくして踏み潰したくなった。
聞こえてなかったのならまぁ仕方ないが、明らかに私をおちょくった目で見てくるので分かってやっている。なんて最低な奴だ。せっかく素直に言ったのに、なんだか言い損した。私は損するのが大嫌いである。そんな、損をするのが好きなんていう物好きはいないだろうが。
「凄いじゃないナナリー! 私もそれでやってみようかしら」
傍で見ていたゾゾさんが、私も昨日のことを思い出してやってみる! と言って構えだす。記憶力は良いんだから! と、何と一週間前の休日に出かけた出先での事細かな出来事までさかのぼっていた。
意図せずして彼女の日常生活がよく知れた時間だった。
「出来ない~。私一生出来ないのかな……」
しかしそれでも出来なく、うつ向いて手を下ろしたゾゾさん。
そんなことはないです、と言いかけた私だったが、その私よりも素早く彼女に反応したのはロックマンで、彼はゾゾさんの前に立つとその下ろされた手を掬い上げた。
「いいえ大丈夫です。馬鹿には馬鹿のやり方があったように、貴女にも貴女のやり方がきっとありますよ。あの単純な女性と、きっと聡明で美しい貴女の脳の作りは違うのですから、自信を持ち続けてください」
「やん、もう!」
「焦らずいきましょうね」
ゾゾさんが目をハートにしてロックマンを見ている。
まさか先輩が奴に堕ちる瞬間をまざまざと見せつけられるとは思わなかった。上司だけでなく先輩までをも取り込むとは、コイツ確実に取りに来ている。
悔しくてアルケスさんにゾゾさんが! と泣きつけば、おおよしよし、と父親のように背中を撫でてくれた。
アルケスさんは私のお父さんと同じ歳なので、自然とそう見える。しかし独身だからか知らないが、40代とはいえ若さも感じるので、父親扱いしてしまうと申し訳なくもなってくる。
結局、記憶探知が成功したのは私だけだったようで、今回の調査は魔物の痕跡をある程度絞れた形で終わった。魔物はシーラ王国の方からやって来て、シーラ王国へと帰っていったようであり、またゴーダさんの所には明日第三小隊が向かうと聞いた。国境を超えての調査は時間がかかるらしく、また後日調査をするとのこと。東の森には部分的に退魔の陣を敷いておくようで、ロックマンが金の杖で地面を叩き、魔法陣を出していた。
あれ。私の棍棒と似てない?
そして帰りは騎士達から酒場で飲もうと誘われたが、私はそれを丁重にお断りして帰ろうとした。
けれど私を外した他二人(ゾゾさん、アルケスさん)は行くようで、軽く団長に挨拶をしたあと、帰ろうとした私の首根っこを掴んでくる。
グェ、とおかしな声が出た。
「嫌だ!」
「行くのよナナリー!」
誰が好きでアイツがいる場で酒盛りなんてするかと騒いだが、ニケの必殺お願い攻撃であえなく私は堕ちた。