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ハーレ就業編・5-4

 今度こそ私達はハーレに戻った。

 無事目的地へ着けたことに、両手をぎゅっと握り締めて感動を覚える。今度は普通に使い魔で帰ろうとした私に、諦めないでもう一度やってみなさいな、とゾゾさんに言われて空間転移の魔法陣を出したのが数刻前のこと。

 失敗はせず魔法は見事成功し、安心感と達成感ゆえ彼女に思い切り抱き着いた。

 勢いが凄すぎて一瞬獣かと思ったわ、と言われたけれど、ゾゾさんはやっぱり良い先輩。私より身長は小さくても、大きく見える。

 その流れでまた彼女に謝ろうとしたのだけれど、謝る前に魔法で上唇と下唇を縫い付けられてしまったので気鬱に終わった。

 ムグムグと唸りにもならない声しか出なかった。




「で、これが触れていた葉?」


 アルケスさんが茶色い葉を手に取って、目を細める。葉の先を持ち、クルクルと回していた。


「ゾゾさんのプルが、魔物の下から取ってきたやつです」


 彼の後ろからそれを覗いて、私はもう一枚の枯れ葉を差し出す。アルケスさんが持つ葉は茶色。私が差し出した葉は緑色。

 実は念には念をとプルが二枚取ってきてくれていたらしい。なんと優秀な使い魔。さすがゾゾさんの羽獅子、格好良い。でもララだって負けていないぞ……、って、何を競っているんだ私は。


「二枚もあれば、はっきりと姿が出てくるかもな」


 今私達がいるのは、ハーレの裏庭。職員たちが休憩しに来たりたむろする場所である。丸太で出来た椅子や、人一人が寝れる大きさの布で出来た釣床に水飲み場等、疲れた身体を休ませるには丁度いい場所。

 そして何を隠そう、私が魔法陣で来ようとして失敗したところだ。誰に言われたわけじゃないけど、縮こまりたくなる。私を見ないで、間抜けな私を見ないで。


「お願いします」

「アルケス頼むわ」

「なに、まぁ任せなって」


 私とゾゾさんは、アルケスさんに頼んで葉の記憶探知をしてもらうためにここへ来ていた。彼は丁度お昼休憩に入っていたところだった。

 帰って来た時にはハーレの中にいる破魔士や依頼人の数は少なくなっていて、どうやら忙しさが最高潮である時間は過ぎていたようである。


「どんなものが映るのか楽しみですね~」

「アルケス副所長お願いします」

「俺は副所長じゃない」


 私達以外にも、ここには他の職員達がいた。白と黒の制服が入り交じり賑やかになっている。

 皆、あの時休憩に入れなかった人達だ。やっと仕事が落ち着いたので、皆で愚痴を言いながらお昼をしていたらしい。モグモグと軽食を片手にご飯を食べている人もいる。

 良いな、私も早くご飯にありつきたい。

 けれどマライヤさんの為にも早く依頼書を完成させなければ、落ち着いてご飯なんか食べていられないだろう。

 ハーレを出て行くときは子供と一緒だったけれど、その彼女の後ろ姿が、どことなく隣にいた子供より小さく見えてしまって仕方がなかった。


「虫食ってるな」


 皆は葉を持つ彼の周りを囲んで、それに注目する。

 二枚の何の変哲もない枯れ葉。これに重要なものが秘められているなんて、普通の人だけじゃなく、訳を知らない人間以外誰が見ても思わないだろう。


「私も早く記憶探知を使えるようになりたいです」

「うんうん、私も一緒に頑張ろう」

 

 私はまだ記憶探知が出来なく、目下修行中の身だ。ゾゾさんも苦手なようなので、これはそれを得意、というか普通にこなせるアルケスさんに任せることにする。

 自分たちが持ち帰った仕事を、他の人に頼むのは些か気が引けたが仕方ない。ただでさえ受付から離れた私達の代わりに、席に座り続けてくれていたというのに。

 しかし戻って早々申しなさげに頼み込めば、個人の仕事ではないから、出来る人にはどんどん頼み込めばいいと言われた。確かにハーレの仕事は皆で回しているようなものなので、そう言われると気持ちが幾らか軽くなる。

 けれど私はいつまでも人に頼ってばかりなのは嫌だ。いつか頼られるような、頼りたいと思わせるような魔法使い、人間になりたい。


「じゃあ皆、少し離れてくれ」


 彼は周りの仲間達にそう言うと、地面へ置いた葉に人差し指を向ける。

 術者は対象から目を逸らしてはいけない。

 そして反時計回りに指をグルグルと回し、アルケスさんはそのまま呪文を唱え始めた。


――――――ポゥ……


 暫くすると、その葉の上に小さな光が生まれる。小指の先より小さな光。それから光は段々大きくなり、そしてまた小さくしぼむと、黒い靄が葉の上にかかり始めた。霧のようにも思える。

 徐々に大きくなる靄は、やがて何かの形に変形していった。


「ナナリーが見た三つ目ってコレ?」

 

 職員の一人、眼鏡の女性ハリス姉さんがそう言って私の肩を叩いた。


「はい、これです。横に三つ」


 まだ完全な形にはなっていないが、三つの赤紫色の目がそこに浮かんでいる。

 アルケスさんは反時計回りを止めて、時計回りに戻した。

 すると黒い靄はさっきよりも濃く密集して形を作っていく。


「これが正体か」


 アルケスさんが指を止めた。


 私たちの目に映るのは四足歩行の黒くて大きな物体、生き物。場合によっては二足歩行も出来そうな身体つきだった。顔のような部分には三つの光る目がある。舌が異様に長く、胸ぐらいまであった。顔の両側にある耳のようなものは鋭くとがっていて、異形だった。歯は鋭く、二本ずつ口の端からはみ出ている。 肌?皮膚?には見た感じだと毛等は生えておらず、こう、テカテカとしていた。黒光りというか、粘着質そうな感じ。触ることは出来ないのでそこまでは分からない。

 とりあえず一言だけ言わせてもらおう。


 気持ち悪い。


「人の死体のような舌だな」

「死体の舌ってあんななの?」

 

 アルケスさんが口元を押さえながら、うーんと唸る。 

 人間の舌?

 いきなり物騒な言葉が飛び出してきた。

 死体って。


「あそこまで長くはないけど……。以前調査に行ったとき、そこで人間の死体を見つけた事があるんだ。その死体は縦に宙づりにされていたんだが、その時は舌がダランと出ていて気味が悪かったよ。この魔物のように異様な長さじゃ無かったが、生気を失ったその人間の舌に良く似ている」

「他の動物とは?」

「形が違う。よく見てみな。舌の丸さ、厚さ、自分たちの舌を見合ってみれば分かるでしょ」


 彼の言葉に、隣にいたゾゾさんが私に舌を見せてきた。

 確かにリュコスのララやフェニクス、羽獅子などの舌より、人間の舌のほうが魔物のそれに似ている。


「皆も分かっているだろうが、魔物に決まった形は無い。人間にも言えることだが、構造は同じでも顔が違うし身長も性格も、使える魔法型も違う。魔物はそれ以上だ。だけどあの独特の魔力はすべての魔物に共通している。活動の源として体内に保持する力、あの禍々しい魔の力だ。その特徴があるおかげで退魔の術が存在出来ているし、それに形は無いが、色は決まって黒や濁った緑、灰色だ。判別もある程度しやすい」

「では今回のこれは、決まりでしょうか」

「ま、考える間もなくな」


 アルケスさんはそう言うと、仕事仲間の一人が持っていた軽食を片手で奪い、それを食べだす。人の食べかけをムシャムシャ食べるとは……不作法というか勇者というかずぼらというか。取られた方も、こいつ食べてやがる、と信じられない目で見ている。

 お昼途中でコレを頼んだから、多分お腹が空いていたのかもしれない。現に私も空いている。でも人の物はさすがに食べない。


「でもアルケス。この魔物の形、どこかで見たことない? 魔物に決まった形が無いのは知ってるけど、何か見覚えあるのよね」

「ん? あぁ……、確かに」


 ハリス姉さんが首を傾げて考え込む。彼女の言葉に口をモグモグさせながらアルケスさんは頷くが、彼も思い出せないのか顔をしかめていた。

 周りの皆も何か覚えがあるようで、考え込んでいる。

 かくいう私もこの魔物を何か……どこかで見た気がしていた。実際に見たとかではなく、絵とかそういうもので。


「そうだ、もしかしてあれじゃない? アリスト・ピグリ博士の論文」


 ピンと来たのか、ゾゾさんが手を叩く。

 アリスト博士……。

確か魔物についての研究をしていた人だ。その人は去年、魔物についての研究発表をしている。


【邪悪な気で満ちた生命体。魔法動物とは異なる異形な存在】 という表題で。


『魔物というモノに本来括りは無く、人間の予想を遥かに超えた異形の存在、我々の生活を脅かし災いを起こすモノのことを、総じて魔の物。魔物と呼んでいる』


『魔法動物との境界線は曖昧だが、彼らを分類する場合には攻撃性、生体面、魔力、などを調べれば答えは普通に、自ずと見えてきていた』


『しかし魔物に至ってはその分類さえ困難であり、一つ分かっていることは、あのモノ達は魔力ある者や物を喰らって生きているということだ。だから人間を襲い、食べ、魔法動物達もその捕食対象となっている。奴らは草なんか食べない』


『今回の研究では、魔物がいかにして生まれているのかという答えを探るべく、ある一つの魔物の死体を調べ上げた』


『するとその結果は驚くもので、なんとその魔物は人間だったのだ』


『突然変異したのかは定かではないが、最初に見たそれは間違いなく人型にあらず、四足歩行の獣だった。牙は鋭く、皮膚は粘着質のある緑色』


『しかし解剖をすれば、内臓や生殖器は人間にしか見られない作りになっている。今回の魔物は、恐らく人間の男が変異したものだと我々は判断した』


『骨も完全に人間の物であり、無理やり骨の配置を変えてあのような四足歩行に変異したモノとみられる』


『この魔物がどのような経緯で異形の存在になったのかはまだ分からないが、魔物というモノは、少なくとも魔力を持つ我々人間がなってしまっても可笑しくはないのかもしれない』


 彼が発表と共に世間へ見せたのは、気持ち悪い姿をした魔物の絵。正しくは博士が念写したもの。

 舌が長いことと、色が黒ではないことを除けば、形はまんまアリスト博士の言う魔物にそっくりだった。

 目については触れられていないが、その絵には三つの目がある。


「これと同じなのかしら」

 

 ゾゾさんの言葉にドキリとする。

 あれが元人間だと考えたら、なんだか急に怖くなってきた。自分達と同じ存在が、あんな気持ちの悪い生き物に豹変してしまうのだと、間近で見せられた気がして。嫌に生々しい。

 彼女の言うことに、まさか、と皆は笑うけれど、内心否定は出来ないのか表情は険しかった。皆もその可能性を捨てる考えは無いのだろう。


 でも、じゃあ……この魔物が人間だったとしたならば、それは誰なのだろう。

 アリスト博士が発見したという元人間の魔物も、結局誰だったのかは突き止められなかった。その時期に行方不明になった人から探そうとしたらしいけど、ハーレに依頼は無くとも行方不明者なんてものは他国を含め、年間にして数百人はいるので判断のしようもない。国を超えての調査も難しいようなので、なかなか見つけられないのである。


「とりあえずこの姿を念写しておく」


 アルケスさんはこの魔物の姿を紙に移すと、私にその紙を渡してくれる。この絵を依頼書に貼れという事らしい。特徴については外見以外分からないので、この絵が重要だった。お礼を言って、ゾゾさんにその紙を見せる。彼女は、相変わらずなんでも器用な人だわね、と彼に尊敬の眼差しを送ると、同じくお礼を言って私の肩に手をかけた。


「私とナナリーは、これから依頼書を作成するわ。一応出来たら依頼人に確認した後掲示板に張り出すけど、後で所長にも見てもらわないとね」

「所長にですか?」


 彼女は裏の扉を引きながら、私を建物の中へ招いた。

 不思議そうに、なぜ所長に? と聞けば、あぁまだ言っていなかったわね、と人差し指を立てる。


「ハーレはね、王国に害がありそうな……魔物とかね、そういう依頼があった時は情報を王様や騎士団に知らせないといけない決まりがあるの。協定みたいなものかしらね」


 平和のために情報は円滑に流しましょう、という事か。


「そうだったんですね」

「もちろん依頼人にはちゃんと許可を貰ってするのよ? 流石に個人の情報も含まれるから無断ではね」

「あらじゃあ所長、たぶん機嫌が悪くなること間違い無しよ」


ハリス姉さんがゾゾさんの肩に手を置いて、後ろから私の顔を覗いてくる。

 クルリとした薄茶色の髪を揺らして、生き生きとした表情で見てきた。


「?」

「報告するときは、直接城に行かなくてはならないんだけどね。ほら、騎士団の団長と所長って仲が悪いでしょう?」


 所長の機嫌が悪くなるという内容なのに、なんでそんなに楽しそうな顔をしているのだろう。眼鏡の奥の瞳が光っている。

 しかし機嫌の悪い所長は何回も見てきたけれど、直接会っている姿は見たことが無い。会ってしまったらもっと凄いのだろうか。お化け虫、塩を投げるどころの話ではないのかもしれない。








 それから数刻後、依頼書が完成した。

 その依頼書には追加で、ゴーダ・クラインさんの特徴も書き記した。焦げ茶色の短髪、口ひげが生えていて、大柄。服装はつなぎ服、など事細かく失踪時の情報を伝えていく。

 マライヤさんには日が暮れる前にハーレにもう一度来て内容を確認してもらい、調印をしてもらった。

『人探し!』とデカデカと書かれた文字の下には、赤く『魔物注・緊急』という文字を入れる。こうすると通常よりも早く破魔士が食いつく。

 早ければ今日の内に依頼を受けてくれる人が見つかるかもしれない。


 マライヤさんには東の森に魔物がいたという事を伝えると、驚いたと同時にやっぱり……、と納得していた様子だった。

 やっぱり? 

 彼女の反応に、何か知っていたんですか? と私は聞く。マライヤさんは言いにくそうに、ごめんなさいと顔をしかめると理由を話してくれた。

 最初にここへ来た時は言わなかったのだが、実は東の森を、最近は避けるようにポッケルが柵の端に寄らなくなっていたのだという。森も以前より湿っている感じで、ご主人とはそのことについて何度か話をしていたらしい。

 けれど何も被害は無いし、影響はそれほど無いからと放っておいたのだという。

 それにご主人づてでポッケルが逃げたと聞いただけで、どうして、どうやってポッケルが逃げたのか分からなかったので、と。


「見つかる、でしょうか……」


 依頼人である彼女は、調印をした後、そんなことを零した。けれどもそのあと直ぐに、私が信じなければ誰が信じるのよって話よね、なんて寂し気に言った。

 不安で仕方がないのだろうと、私の眉も下がる。

 私だってもし自分の家族だったらと考えたら、いてもたってもいられない。一日だって待っていられない。それを思うと、マライヤさんはこの一日半……。小さい子供もいるし、あやす時は笑顔だけれど、相当無理をしているように見えた。

 北の森の行方不明の件もまだ解決、発見には至っておらず、それもあってか余計に不安になる。


「気軽に大丈夫です、とは申し上げられませんが、私達全員ご主人の無事を祈っています。あとは破魔士達に委ねましょう」


 木の椅子に腰を落ち着けている彼女に、ゾゾさんはそう言った。






●●●●●●●●●●●●





「ご主人、見つかりますかね」


 マライヤさんが帰った後、掲示板に張り付けた『人探し!』と書かれた依頼書を見て呟く。呟くというか、隣にはゾゾさんがいるので独り言も独り言にはならない。


「こればっかりは破魔士達に頑張ってもらうしかないわ」


 窓越しに夕日が沈んでいく。赤い光を見つめながら、彼女と共にため息を吐いた。


「ナナリーはご飯まだでしょ? このあとは約束通り食べに行きましょうか」

「はい。……あ」


 お腹が鳴る。


「どうしたの?」

「いえ、その、このあと約束が出来てしまったので、やっぱりすみません」

「あら、私は良いけど……。お腹は大丈夫?」


 私には公爵との約束があった。


「大丈夫です」


 明星の鐘が鳴るまでまだ少しあるけれど、ご飯を食べている時間は無い。いや、あるけれど、どうせ食べるなら用事も何もなくなってからお腹にたらふく入れたいのだ。ゾゾさんのお誘いを断るのは嫌だけど、こればかりはしょうがない。

 そういえば公爵から持たされたあのハンカチーフを、まだ良くちゃんと見ていなかった。ここに来てほしいと言われたが、あの布に場所がかいてあるのかな。

 隣にいる彼女に見えないように、こっそりとハンカチーフを小袋から取り出してみる。音を立てないよにゆっくり布を広げてみれば、そこには「(ワガ)公爵邸裏」と書いてあった。


『確かめたいことがあってね。丁度誰かに頼もうとしていたところなんだ』


 あんなことを言っていたけど、一体目的はなんなのだろう。急に思いついたみたいな感じだったのも否めない。どちらにせよ面倒なことになってしまったのには違いないのだ。

 けれど頼られるのは嬉しいので、胡散臭さを感じつつも、任されたことは失敗もなく完璧にこなしたい。


 しかしまったく、アイツに関わるとロクなことが起きないな。(自分からあちらへ行ったことは、この際見ないふりをする)

 ご飯を食べる時間も無いし、お腹は依然空いたまま。


「ねぇ、ナナリー」

「はい?」

「今日転移して行った所って、あのロックマン公爵家よね?」

「はい」

「羨ましいわ~。子息様とは同じ学年だったのでしょ? 友人なのよね」

「いいえ! 断固! 友人ではありません!」

「え? そ、そう?」


 彼女はあの転移時から詳しいことは何も聞いてこなかった。ただ、こんなこともあるわよ、と慰めてくれて、励ましてくれた。

 けれどやはり、なんであそこに転移したのか不思議に思っていたらしい。頭に浮かぶくらい仲が良かったのかと思ったんだけど、とこぼされた。


「そもそもですね……」


 けれど別に隠すほどのことでもないので詳細を話す。寧ろ事細かく説明して、この募る気持ちを分かってもらいたい。

 二位は自分の中で屈辱的数字であるという事や、アイツが宿敵であること等諸々包み隠さずに。


「あら、そんな学生時代だったのね」


 私の話をうんうんと頷いて聞いてくれているゾゾさん。なるほど、そうだったのね、と親身に聞いてくれる。

 過去、ニケにベンジャミン、マリスなど数々の友人にこういう話をした事はあれど、皆『はいはい』『耳にタコですわ』『それよりもナル君がね』と真剣に聞いてはもらえず枕を涙で濡らしたことが何度もある。ようは相手にしてくれなかった。ベンジャミンなんて私の話はそっちのけでサタナースとのことを報告していた。彼女の可愛い恋愛話ならまだしも、私の話は所詮、サタナースが廊下で転んだ、という話のネタ以下の話題だったという事である。

 そんな話を、初めてだからかもしれないけれど、最初から最後まで聞いてくれるゾゾさんが神様に見えた。

 心の支えというモノはやはり必要だ。

 今日からゾゾ教の信者になろう。



「で、結局友人なんでしょう?」

「断固!」


 脱教した。

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