魔法世界のほんとう
私が目を覚ましたということで急遽パーティーを開くこととなった。
そんな大げさなことはやらないでほしいと言ったものの、あれから復興はしたが、功労者の最後の一人である私が目を覚まさなかったことを考慮してお祝いの宴やパーティーはしていなかったそうだ。そんな畏れ多いことを聞かされてしまっては提案を却下させようなどという私の浅はかな考えはすぐにふっ飛ぶ。
すぐに国中へビラがまかれた。
無礼講で王の島には国民が溢れ、今日この時だけ王の島全体は形を変えて一つの舞踏会場となる。
学校が宙に浮き、家臣たちの家は体形を変えて島の端へと並んだ。
大掛かりなパーティーは規模も桁外れである。たった一日半でここまでの準備が出来てしまうとはあな恐ろしや。
『身体は特に異常はみられないですね。起きても大丈夫ですよ』
一方私は医者に見てもらったあと、用意された壇上の横でお城を背に椅子へ座らされていた。
起きたばかりということで、体調には問題ないものの安静にと言われたが、ずっと眠っていたせいで身体のあちこちが凝っているものの寧ろ動きたいくらいだった。
ただマリスが過保護なので心配はさせまいと大人しく座っている。
場所が壇上にある王座の近くなのも相まってか、ここら辺に近づく人もあまりいない。というか騎士が見張りのように周りに置かれているので、近づくも何もあったものではないのだ。
「本当にドレスでなくていいの? それはそれで貴女らしいですけれど」
マリスの申し出を断り、皆がドレスや正装でいる中、私は一人ハーレの制服を着ている。
なくなっていたと思われた制服は、ベンジャミンとサタナースが競技場の残骸から見つけ出してくれたらしく、手紙を添えて私の枕元に置いておいてくれたのだとマリスから聞いた。
その肝心の友人達だが、マリス以外に会うことは未だ出来ていない。両親ともだ。
目覚めたばかりの今日の今日で皆が皆集まれるとは思わないが、こんなに人が来ているなか不思議と誰とも会えていない状況には違和感を拭えない。
それに、
「ヘルさん! お姿を一目見せてくださいな!」
「ヘル様! ありがとうございました!」
「ねぇねぇおかあさん、あそこお姫さまがいるのー?」
「海のお姫様ってのは本当なんですか!!」
「ナナリー様ー!」
「皆さん、下がってください!」
「あの! あの! ヘル様! 私、あのとき助けていただいた者です!」
騎士の向こう側から声を掛けられた。
様、づけに違和感を持ちつつ顔を見れば、シュテーダルに襲われた時競技場で見た顔だった。
力を使うなと言われてもいても立ってもいられなく、力を使って魔物を倒した時に私へ向かいお礼を言った人だ。
無事だったんですねと笑って近づこうとすれば、その後ろから次々と「ありがとうございます!」「ご無事でよかったです!」「見させて!」と大人数が押し寄せてきた。
すると騎士達が隊列を組んでそれを阻止し始めたので、顔が見れることなく椅子のほうへと戻される。
なんだ、これは。どうなっているんだ。とても普通の扱いではないというか、これではどこかの御貴族様のようではないか。
「もうすぐ始まりますので、ヘル様は壇上の近くでそのままお待ちください」
「ドログフィアさん?」
見覚えのある顔と声で、以前ニケたちと一緒に飲んだことのある人だと分かった。
「そんな呼び方やめてください、一体どうしたんですか?」
「そ、それは」
盛大な音楽が鳴り始め、いよいよ祝いの宴が始まろうとしていた。私は仕方なく椅子に戻って王座の方を見る。
王族の方々が舞台の端から一人一人出てきて、用意されたそれぞれの椅子にゆっくりと座り込む。
四番目に出てきたゼノン王子と目が合うと、王子は口角を上げて首を縦に振った。私も会釈をする。
ああ――良かった、片足は元の通りに動いている。勇ましい風貌にも変わりはない。
島に集まった国民たちの大きな歓声が聞こえた。
それにしても十人ほどの白い騎士達に四方八方を守られているような、王族か貴賓のような扱いをされていることに、やはり居心地の悪さを感じる。
海の王国について私に関してのよく分からない、自分でも理解出来ていない話が広まってしまったのだろう。
お姫様だなんて、なんて似合わない言葉だろうか。
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