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受付嬢三年目編・大会一日目

 王の島の横に浮かぶ、石と鉄と煉瓦で造り上げられた島。


 否、競技場。


 六階建ての円形のコロッセウムに天井はなく、中からは空を見上げることが出来る。

 一階は参加者達の戦う舞台となっており、二階から六階は観客席で、一階は観客席から見下ろすことが出来る作りとなっていた。

 観客席に囲まれた舞台には土が敷かれている。まだ競技も何も始まっていないそこは、整備の人が凸凹のないように整えていた。杖のような箒を振って、ちりごみを吐き出している。

 三階が貴賓席となっていて、その階は全て他国から来た貴族王族が座る。

 開会一日目は式典だけなので入場する人数はそれほどいないと思っていたのだが、その予想は大外れし会場の入り口は人だかりができていた。


「こちらですー!」

「押さないでくださーい!」


 大会一日目。


 競技場の為だけに作られたこの人工の島の着地場には、使い魔を持っていない人達のためにと用意された馬車がひしめき合っていた。

 観客はドーランの国民が大半で、あとの二割が近隣の国から、残りが遠い王国から来ている人達である。国内の貴族には元々招待状を出しているようだったので、彼らは受付でそれを提示して効率よく入っていく。

 対して一般観客席に座る人達は入り口の受付で券を買わなくてはならないので、時間がかかる。

 どこの席で何人かなど決めてはいられず、城の人からは問答無用で端から詰めて行くようにとのことだったので、二階の席の番号を順番に渡して通していっている形だった。流れ作業で淡々とこなしていく。

 不審者らしき人物も今のところ見られず、マナーも守ってくれる人が多いので助かった。


 お客さんの中には同じ村で育った子や、学校で隣の教室だった子など、知り合いも沢山来ていた。


 その中でも久しぶりに見たのが、ヤックリンさんの妹、そして私の同級生でもあるカーラ・ヤックリンだった。

 一緒に受付をしていたヤックリンさんは目を丸くして「お前帰ってきてたのか?」とビックリしていた。それに対して、真っ直ぐに伸びた茶色い髪を揺らしてカーラは笑っていたが、どうやら秘密にしていたらしい。 




 式典もそろそろ始まる頃になれば、受付に駆け込む人も少なくなってきた。

 券の残りも少ないので枚数を数えていれば、黄色い岩石で出来た受付の台に一匹の青い小鳥が飛んできてちょこんと着地する。

 ヤックリンさんが残りも少ないお客さんの相手をしているのを横目に、作業をしていた手を止めて小鳥の頭を一撫でした。


≪三人の内のだれか一人でいいから、参加受付の方へ応援に来てください≫


 小鳥がくちばしを動かすと、ハーレの先輩の声が聞こえた。

 この小鳥は伝達鳥と言って、一種の魔法道具になる。

 頭の部分に触ると魔法使いの魔力に反応して、声を記録したり放出できたりと遠くにいる相手に飛ばして伝言を託すことができるという便利な品物だ。


 繰り返し口を動かそうとする伝達鳥の頭をもう一撫でして、伝言を切る。ピチチ、と首を捻った状態で小鳥は動きを止めた。


「私が参加者受付の応援に行ってきます」

「頼みます」


 一緒に受付をしていた左隣の男性に一言断り、席を立つ。

 彼は王国裁判院で働いているようで、今回は私やヤックリンさんのように受付にと駆り出されたのだと話していた。

 受付にはハーレから三人だったが、残りの三人は裁判院からだったらしい。

 説明会の時にも見かけた顔だったが、特別打ち合わせをしていたわけではなく当日本番で初めて話したのでぎこちなかったのだけれど、こういう作業をしていると自然と一体感が生まれてくるせいか、そんなに話してもいないのに淡々と会話が成り立つ。


 私は急いで先輩のもとへ向かおうと、ララを召喚して背に乗った。

 白いスカートを翻す。

 今日は私服ではなく普通にハーレの制服で来ていた。他の二人も同じく制服である。特別、城からこれを着てくださいとも言われず用意もされていなかったし、一応説明会を仕切っていた人にも聞いてみたが「自由です」と言われたので、三人で話し合った結果、じゃあ制服でいっか、となったのである。

 

 だからそのせいか、え、なんでハーレの人がここで受付やってんの、という目で見られたり話し掛けられたりと反応は凄まじかった。

 とくによく依頼をしにくる顔見知りの男性の薬師さんが券を購入しに来たときは「転職でもしたのかいヘルさん!」とびっくりされたものだ。

 転職なんてするわけない。


「これはこれは、空から見ると一望ですね」

「こんなことに突き合わせちゃってごめんね」


 飛んでいるララの首もとを撫でる。

 参加者受付は会場の入り口とは真反対の場所にあるため、まぁまぁ走っていくには遠い。それだけこの競技場が大きいということなのだが、学校に隣接していたものとは比べ物にならなかった。


 観客席は大勢の人の頭が動いているせいかウニョウニョと視界が揺れているような錯覚を覚えた。

次回更新は3月10日です。

よろしくお願いします。

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