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アルフヘイムの杖職人  作者: 髪槍夜昼
第三章 ソロー
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第五十五話


「ベイラァ!………チクショウが!」


事切れたベイラを見て、ロプトルは叫んだ。


憎しみと悲しみを顔に表しながらも首を振って冷静さを取り戻す。


「ッ!…全員、一度森へ戻れ! このままでは全滅するだけだ!」


「エルフを逃がすな! もう阻む物は何もない。追って止めを刺せ!」


森へ退却するエルフ達とそれを追いかける騎士達。


逃げるエルフの放つ魔術を受けて数名の騎士が倒れるが、勢いは少しも劣えない。


前人未到の森には目もくれず、ただ目の前の敵のみを睨み続ける。


いっそ狂気的と言っても良い程に、その士気は高かった。


「…誰も逃がすな」


騎士達の先頭を走るのはアルヴィースだった。


重装備の騎士達が森に苦戦する中、身軽に木々の間を駆ける。


その顔には暗い笑みが浮かび、手には血に濡れた石の槍を握っていた。


「貫け!」


エルフ達の前に石の壁を作り出し、混乱するエルフの背を槍で貫く。


慌てて襲い掛かってくる他のエルフの攻撃を槍で逸らし、隙をついて致命傷を負わせる。


普段なら多数のエルフをここまで容易く殺すことは出来ないが、今のエルフ達は冷静じゃない。


族長を殺されたことが余程ショックだったのか、恐れと怒りに支配され、攻撃も単調になっていた。


『―――――ッ!』


「…悪いな。何て言ってるか、分かんねえよ!」


エルフ語で何か恨み言を叫ぶエルフにアルヴィースは槍を振り上げる。


止めを刺そうと槍を構えた時、その槍がドロドロと溶け始めた。


「…チッ、少し飛ばし過ぎたか」


溶けた粘土のように崩れる槍を捨て、アルヴィースは舌打ちをした。


切り札であるグングニルを二発に、巨大ゴーレム。


感情的になって魔力を使い過ぎた。


アルヴィースの魔力が尽きかけているのだ。


それを好機と見てエルフ達が襲い掛かる。


「退け、アルヴィース!」


「え…?」


剣で応戦しようと考えていたアルヴィースの耳に声が響く。


直後、右方から炎の濁流が押し寄せた。


「危ねッ…!」


咄嗟に身を退いたアルヴィースの前髪を掠め、迫ってきていたエルフ達を飲み込む。


アルヴィースはそれに冷や汗を流しながら、炎が飛んできた方向へ顔を向けた。


「危ねえよ、レヴァン! 俺ごと燃やす気かよ!」


「安心しろ。俺の炎は敵対者のみを焼き尽くす」


「なら、何で俺の前髪が少し焦げてんだよ。焦って制御ミスったろ、お前」


「…気のせいだろう」


「俺の眼を見て言えよ。おい」


ブスブスと黒い煙を上げる前髪を弄りながらアルヴィースはレヴァンを睨んだ。


非難するような視線に、レヴァンは気まずそうに眼を逸らす。


「そこ退いて、アルヴィース!」


「「え…?」」


妙に明るい声に思わず二人して間抜けな声を出す。


瞬間、空から赤い雨が降ってきた。


否、それは単なる雨ではない。


血のように赤い、矢の雨だった。


「「うおおおおおおお!?」」


頭上から迫る矢の数を見て、二人は悲鳴を上げる。


慌てて木陰に身を隠すと同時に、百を超える矢の雨が地上に落ちる。


降り注ぐ矢の雨は、逃げるエルフや魔術で隠れるエルフを貫き、その身体に致命傷を負わせた。


「キハハ! ねえねえ二人共、今の見てた? 凄いでしょうー!」


倒れるエルフを数えながらヒルドが機嫌良さそうに叫んだ。


ウキウキと身体を跳ねさせるヒルドの姿を確認し、アルヴィースは怒りに震えて立ち上がる。


「ヒルドォ! お前もかよ! だから危ねえって言ってんだろうがァ!」


「えー? ヒルド、ちゃんと警告したよー? そこ退いてって」


「遅いんだよ! 警告が! もう矢を放ってから警告しただろ!」


「…と言うか、どうして俺には警告しなかったんだ?」


怒り狂うアルヴィースに対し、ヒルドは何で怒られるのかと不満げだ。


口論する二人は、隣で寂し気に呟くレヴァンの声には気付いていなかった。


「それより凄かったでしょー? ヒルドの魔術!」


「あ? ああ、そう言えば………あんな使い方も出来たんだな」


地面に突き刺さる血の矢を見ながらアルヴィースは今更驚いたように呟いた。


素直な感想にヒルドは胸を張り、近くに落ちていた矢を一つ拾う。


「ヒルドの血は、身体から離れても自由自在に操れるんだからー。アルヴィース達にも負けないよ!」


「それは凄えな。なら、俺は少し休憩するから、その間を任せてもいいか?」


「オッケー!」


元気よく胸を叩くヒルドに、アルヴィースは頼もしさを感じた。


このまま二人と共に戦うつもりだが、今は魔力が不足している。


ある程度回復するまでは大技は控えて、二人のサポートに回るべきだろう。


「ッ!…新しいのが来たか」


「任せてー!」


森の奥から現れたエルフ達に対し、ヒルドは余裕の表情で魔術を発動する。


血の棘がエルフ達を貫き、それを躱した者はレヴァンの放った炎に焼かれる。


自滅覚悟で特攻する者の前には土の壁が現れ、足を止めた隙に血の矢に射抜かれた。


「おい、見ろ! エルフ達があんなに倒れているぞ!」


「それなのに魔術師達には傷一つない!」


「まさに、一騎当千の英雄だ!」


余裕を持って戦うアルヴィース達の姿を見て、騎士達は興奮した様に叫ぶ。


エルフが一人倒されるごとに歓声が上がり、自分達も…と剣を構えて向かっていく。


「三英雄に続けェー!」


人類とエルフの戦いは、完全に人類が優位に立っていた。

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