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お昼休みは異世界で  作者: 未羅ねらと
最後の召喚
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願いの力

 スフラは健一を見返す。神を討てる一瞬の好機だが、今の健一に巻き込むような攻撃をすると結果は見えている。


 私はまた、人を殺してしまうの? また、私の身勝手な…………。


「えっ……」


 声は漏れたのは健一が首を振ったからだ。


「いい、これは……俺の願いだ。スフラ……俺を……救世主にしてくれ!」


スフラは涙を拭いた。急ぎフェバルを取り出し『錬術』を発動させる。桃色の灯る『聖火剣』を握りしめ、歯を食いしばって、立ち上がった。


「されるか! こんな右手切り落とす」


『白銀剣』を振り、健一の右手を腕ごと切り落とそうとするが、白煙が目の前を遮った。


 爆発音が響く。右腕を斬られる前に、瀕死の左手で黒煙の剣を振り払った。剣と剣が重なり、白煙の剣から爆発が起きる。白銀の刃からは、その凄まじい剣圧に爆破は全て健一が負った。


 全身に熱風を受ける。レベルにして、10以上。空間ごと焼き尽くす一閃は、生身の健一にはたまらない。身体は黒焦げ、髪の毛も塵となる。


「このやろう! いい加減にしろよ!」


 返事はない。もう、口を利ける状態でもない。それでも、健一の右手は離れない。力も緩めずに、自称神を拘束する。


「ケンイチ、ありがとう。あなたこそ、この世界の救世主です」


 自称神が思わず息を飲む。聖火剣から燃え盛る焔は、天まで昇るほど滾り、桃色の焔も紅色に近い程濃い。


 涙ながら『聖火剣』を振り下ろした。


 灼熱の焔が放出させ、熱気にスフラ自身までに伝わる。『錬術』とは願いの力、それは紛れもない事実。何よりも強い思いが力に反映させる。神をも葬り去る程に。


「ふざけるな! 俺は神だ! 神を殺すことなど誰にもできないはずだ!!!!!」


 声は焔に遮られ消えた。男の悲鳴が焔の中から一瞬聞こえたが、瞬く間に静寂に包まれた。


 桃色の焔はまるで、桜の花びらが散るかのように、火花が飛び鎮火した。


そこには…………。


「ケンイチ!」


 黒焦げになった健一が横たわっていた。


 自然に流れる涙を垂れ流したまま、駆け寄る。


「ケンイチ! ケンイチ! ケンイチ!」


 肩を揺らしながら、必死に呼びかける。しかし、健一から返答はない。溢れる涙が健一に滴る。耳元を心臓に近づけるが…………。


「嘘っ!!」


 心臓の音は聞こえなかった。スフラの胸の中に、どっしりと言葉にならない気持ちが広がる。やがて、黒い光に包まれる。


「そう、元の世界に帰るのですね…………。ありがとうございました。ケンイチ、あなたは紛れまなく、この世界を救った救世主です」


「スフラ………」


 健一の口元が僅かに動き、吐息に近い声が聞こえた。


「ケンイチ!」


「スフラ、最後に伝えたいことがある…………」


「はい」


 最後の力を振り絞り、声を出す。


「初めてみたときから、好きだったよ。スフラ、今までありがとう」


 くしゃくしゃになったスフラの顔にそっと手を差し伸べる。ルビー色の瞳が涙で淡い色になり健一は微かに笑う。


 初めて会ったときと同じ顔だ。でも、意味は違う。これからスフラは自分のために歩ける。ありがとうはこっちだよ、だって、好きな子を救えた。救世主になれたんだ。


 光は粒に、天に昇り始める。思わず、スフラが健一を抱きしめようとするが、塵となった黒い光は抱き寄せられない。


「ケンイチ―――――!」


 泣け叫ぶスフラの悲鳴は、世界中に響いた。


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