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お昼休みは異世界で  作者: 未羅ねらと
過去への召喚
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過去⑦

豪華な装飾品が色めく、謁見の間。


 王座にズブラが座り、右隣に、レン。正面に膝を付き、頭を垂れるのはイノアとスフラ。その後ろにイリリとガルバもいた。


「それで、イノア。軍事に関して、何か策があるとスフラから聞いたが、詳しい話をしてくれ」


バル暦885年。ここ数年でバル軍が南部を制したが各大国も大きな戦果を出していた。大陸の東に位置する。ギャック国、五大湖とそれから連なる海を制して、大陸一の海兵隊部隊を持つ。大陸の西に位置する、カーレン。荒野という無機質な土地を席巻する万騎馬隊は圧巻。大陸一の領土を誇るルバ。北は完全に制し、大陸の中央までその力は侵食している。大陸南部を制したバル。まだ、滅んでいない国は10以上あるが、大国を呼ばれるのはこの4国。天下統一を果たすのはこの4国に絞られたといってよい。


「それでは不躾ながら発言をギャック国、カーレン国を滅ぼす策があります」


 イノアの発言にスフラ以外は目を丸くし、口を大きく開ける。


「ほうぉ、どのような策だ。私にもその術は考えられなかった」


「俺にも見当がつかねぇ、聞かせてくれ」


レンがズブラに続いた。


 軍のトップもズブラ。軍事の作戦を練るときはレンと相談して2人で決めている。バル軍の2つの頭脳だ。


 イノアは頭を上げ、ズブラを見据えて話し始めた。


「では、作戦としてはギャック国とカーレン国を同時に、北と南から挟み撃ちにします。そこで肝心なのは、侵略方向を、ギャックは西に、カーレンは東に、つまり、ルバの領土に出来るだけ近くに進路を定めます。そして、出来るだけ、砦や城を壊し、村や畑に火をつけながら侵略します。もちろん、村人を全員避難させてからです。そうして得た領土を今度は放棄させます。そうすれば、ルバ軍はすぐさまその領土を奪いにくるでしょう」


「そうなるだろうが、奪わせてどうする?」


「そこまで、ルバに侵食されると、2つの大国ともさすがにただで済まない。そのあとも引き続きルバ軍は侵攻を続けているでしょう。世間では大国四国なんて呼ばれていますが、戦乱の世は全てルバが頭1つ抜けています。そうなればこれまでの陛下のご尽力の成果です。2か国ともバルの傘下に加わるでしょう」


 イノアの目は真っ直ぐズブラを見つめる。ズブラは少し首を捻りながら、口を開いた。


「そうだな、まず、ギャック国とカーレン国の力を甘く見過ぎではないのか。イノアの策では軍を4つに分けることになる。侵攻すると、すぐさま返り討ちに合うだろう。それにどうやって、敵国の背後である北に周り込む。いくら、少数でもそれは難しいぞ」


 ズブラの疑問は最も、隣のレンも頷いています。しかし、イノアはすぐに説明を付け加えた。


「周り込むのはここにいる4人で十分です。私達は旅の中でフローラの守り人とミレェイ諸島と交流があります。共の長とも知り合いですから、同盟を承諾していたくよう頼みにいきます」


「なんだと!」


 ズブラが立ち上がり声を荒げる。


 フローラは禁国、大陸の西に広がる巨大な樹海は入ったが最後、抜けられずにただ死を待つのみ。樹海の中にひっとりと国がいるのは周知の事実であるが、どの国が攻め入っても森に邪魔され侵攻できない国だ。ミレェイ諸島は国とさえ呼ばれていない。大陸の東の海に広がる。9つの小島の総称。小さな領土の割に島の周辺の海流は嵐と同等でどの国も攻めようとさえしない。風の噂で、島にも人が住んでいるらしいといった程度だ。


「北の進軍は彼らに任せたいと思います。これで、軍は半分、西と東に絞れ軍の数は十分と考えています」


「ちょっと、待て! イノア」


 まだ、立ち上がって硬直しているズブラに変わり、レンが慌てて口を開く。


「お前のことだから両国に親交があるには疑わない。でもよ、両軍とも大国に挑めるほどの戦力を保持しているのか?」


 深い森のみが領土にフローラ、小島の集合体のミレェイ諸島。両国とも、大国であるギャックとカーレンに進行する戦力があるとは思えない。


「みなさん誤解、いや、騙されています。大陸の国々も情報を得ていないでしょう。フローラ、ミレェイとも僕の見立てでは中国以上の兵力を有しています」


「なに!」


「まず、フローラですが、樹海の領土は今のバルに匹敵します。世間の認識の約二倍、そして、暮らす守り人も何十万人といます。みな、木々を飛び狩りをします。実は、攻めて来たギャック軍も退却させています。次に、ミレェイ軍は彼らの住環境は島ではありません。何十とある大型船の上で主に暮らしており、本当に海上戦で世界一強いのはミレェイ軍です。彼らには、海を進み五大湖から攻めてもらう算段です」


「それは本当なのか!」


 ズブラは立ち須くしたままだ。国のトップに立つ人間として情報はときに命より重い。諜報部隊にはやり過ぎぐらい金をつぎ込んできた。だが、イノアの発言は全て初耳。


「おい、イノア。どうしてそんな情報、今まで黙っていた」


 レンが横やりを入れるのも当然。各国の軍事情報は国家機密情報、知りえた情報は常に伝えるのが常識である。


「情報の漏洩を恐れたのです。2国は乱世に巻き込まれていない平和な国です。私の一存で巻き込むことはできるだけ避けたかった。もし、周辺国に伝われば、何かしらの戦に関わることは目に見えていますから」


「ならば…………」


 そこで漸く、ズブラは王座に腰を下ろした。


「そのあとの展開は全て見えているのだな」


「はい、2国を同盟に持ち込みます。そうすれば、一気にルバが動きます。今まで放置していた小国、中国を取り込むでしょう。対バルの最終決戦に向けて」


 イノアとズブラ、お互いに顔を見合わせ、ニヤリと笑っている。


「うん? どういうことだ?」


 2人に意図が汲めないレン、イリリ、ガルバも同様のようだ。後ろに位置する2人は、イノアの話の頭からポカンっと口が開きっぱなしだ。


「ギャックとカーレンが落ちれば、雪崩のように領土を取れる。バルもルバも、同盟などを含めればあっという間に2国だけになるよ。このネザマスラは」




 繁々と大木が乱立ち陰湿な雰囲気を漂わせる迷いの森。見上げるのは2人の少女。


「では、いきましょう。王女さま」


「ええ」


 イリリの呼びかけに、スフラが足を進めながら返事をした。


 イノアによる2大国同時挟撃作戦並びに、フローラ国、ミレェイ国に同盟を求めることは他の上役達との協議のあと正式な方針となった。問題なのは人選である。もちろん、同盟を求める文書であるから、厳重な管理ができる運び人が必要であり、敵国に知られれば、全てが水の泡。よって、少数で運ぶ必要がある。まず、決定なのは2か国に関係があるショーミ兄弟だが、1か国ずつ巡っていては時間がないので、兄弟は分かれることが望ましい。あとは、2人と連携が取れ、それなりの強さを持つ者。フローラ国をスフラとイリリ。ミレェイ国をイノアとガルバといった人選になった。王女であるスフラを他国に赴かせることには反発の声も上がったが、ズブラがそれを沈めた。


 樹海を進む2人。本来はフローラに辿りつくこと事態が至難の業。敵国もいつもこの森で地団駄を踏まされる。その間にフローラ軍に体制を整わされ襲撃を受け、退却させられる自然の要塞となっていた。


 落ち葉で靴が隠れる道なき道。森、独特の匂いが鼻につき、昼だというのに、光は遮られ薄暗い。


 しかし、イリリは。


「迷いの森などまやかしです。道を正しく進めば迷うことはありません」


 きっぱりとそう言い切った。


「正しい道? そんな道があれば、ギャック軍は侵攻できていませんか?」


 スフラは首を傾げた。迷路のような森の道ならば、イリリ達のような旅人が入り込み迷うことはあるが、軍の侵攻が迷いなどは些か不自然だ。道ある道、全てに斥候を送り込み、分かれ道は素直に分かれて進み、順路に印を付ける。そうすれば、誰かは迷路を抜けられる。


「確かにその通りですが、誰も、どの軍も、どの国も、正しい道を選ぶことはできていません。迷路の入り口さえも兄さん以外は、気付かなかったのです」


「気付かなかった?」


「はい、ちょうどあそこです」


 そういうとイリリは腕を振り上げ、人差し指は太陽を指していた。


「どういうことですか?」


「森の守り人。フローラ国は、あの大木の先端付近。木の上に村があり、木の上で人々は生活をしています」




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