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お昼休みは異世界で  作者: 未羅ねらと
真実の召喚
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婚約者

 瞳を燃やすような光が収まった。健一はゆっくりと目を開くと、氷龍の視力が戻ったのは同時だろうか。赤い双眼と目が合った。


 こっちを向いていいのか。


 口元が緩み、余裕の笑みが生まれる。


 健一の余裕に氷龍は不信感が募ったのだろうか。首を傾げるように左に振った。そして、首は右に曲げ、龍の鱗が小刻みに動いた。


 氷龍の四方を方位するmほどの長さの黄色。ビリビリと音を立て、電気の棒状。全方位を囲っていた。


「終わりだっ! 「『百光超電磁砲』」


 高圧電流の塊、『超電磁砲』。1本、直撃するだけでも人の体は黒焦げになる。それが百本。逃げ場はない。電光石火の連撃、百本もの『超電磁砲』が神速の速度で発射される。


 ギィン、ギィン、ギィンと氷が砕ける音が連続して響く。『超電磁砲』百本。全て、氷龍を貫いた。


「どうだ、もう動くことも……」


 百本もの、雷撃の柱が突き刺さる氷龍。本来なら黒焦げになっているはず。しかし、それどころか、氷龍の双眼は健一を睨む。


 まだ、足りないのか……。


 嘆息を漏らし、眉を歪めす。そのとき……。


 聞こえてくるのは轟音。氷の割れる音が激しく、耳に伝わる。氷龍な砕けた穴からひび割れ、ガラスが割れたような音をたて、砕け散った。


「はぁ~、終わった」


 ため息をつき、腕の力を抜く。


 しかし、頭を直ぐに切り替える。もう、自分1人が強敵を倒して、それで終わりじゃない。今は兵の命を預ける隊長。振り返り、兵士達のようすを確かめる。


 蒼い氷のドーム。2手に分かれていた兵士達はそれぞれ『錬術』を用いり、慎重に氷を砕いていた。


 うぅ~ん。そうなるよな。壊すだけなら『フリースモーク』でドカーンっとすれば済むはなしだけど。中に人がいる。仮定だけど、危ないことはできない。あんまり協力できないっぽいけど。戻るか。


 踵を返そうとしたとき。おかしなものに目が奪われた。


 蒼い氷の塔。氷龍が潜んでいた塔。氷龍が姿を見せたあとは。短い塔に様変わりしていたが、塔の先端、蒼い氷が伸び始めた。


 おいおい、これって。まさか!


 健一の思惑通り、塔が伸びた端から、氷龍が姿を現した。


 マジで! 復活した? 何で、どうして?


 わたわたと戸惑っていると、好機と見たのか口を開き、今にも銀色の息吹を吐こうと。


「『フリーズアロー』」


 真後ろから声が響いた。


氷の矢、透明に近い煙を撒き散らしながら直進する。尾を引く煙が飛行機雲のようだ。


 氷の矢は氷龍の喉仏。鱗に直撃。すると、氷龍の赤い眼が光を失う。溶けたアイスのように、氷龍は溶け、それと同時に蒼い氷の塔も溶けた。


 倒したのか。その疑問は確信に、氷龍が溶けて水となり、大量の水が黒い塵となる。『厄気』消滅の瞬間だ。


「氷龍は弱点である喉仏の鱗を壊すと簡単に倒せます。逆に、その弱点を突かないと塔から永遠に再生を繰り返す。あなたでも苦労しますよ」


 背中から声を掛けてきたのは。


「ユタバ!!」


 青い短髪に眼鏡。冷静沈着な雰囲気。ミレェイ軍隊長、ユタバ・デザラがそこにいた。


「お前! どうしていいに。いや、どこからここに」


「あの中からですよ」


 そういって指を差したのは片方の蒼いドーム。いや、蒼いドームがあったところ。今は蒼い氷の欠片が所狭しと地面に転がり、その中央には人々が集合していた。髪が凍り、顔は蒼白。服はカチカチに。氷山の頂上にいるようだ。その集団の中に、黒い服を着た人が何人か、ミレェイ軍だろうか。兵士達も閉じ込められていたようだ。ユタバもあのドームの中にいた。即座に健一に助力したユタバはさすが、隊長といったところだろう。


 本当にあのドームの中にいたのか。とにもかくにもよかった~、あとは残りのドームも砕いて人命救助。民間人を助けて、ミレェイ軍も合流、イリリからの任務も達成だ。


「まずは、他のドームからも助けよっか」


「ええ、ミレェイ軍の中でもすぐに動ける兵士がいます。『厄気』の心配もありますが、時間が優先です。すぐに2つの軍を3手に分けましょう。それと私はケンイチ様と一緒に。これまでの経緯を聞きたいので」


 饒舌にユタバが流れを話す。


「うん。そうしよう。俺もミレェイ軍の話は聞きたい」


 大きな息を吐く、肩の荷が下りた健一には笑みがこぼれる。イリリからの任務、負傷者は免れなかったが、大方は作戦成功といったところだろう。


 実は俺、リーダーの素質があったんじゃないの! やっぱり、天才


「ケンイチ様、喜ぶのはまだ早いですよ」


 眼鏡をくぃと直し、冷徹な視線を送る。


「はぁ……はい」


 隊長って、怖い人が多いな~。


 自業自得なのだが、凍てつく視線に身を引き締め、ユタバの話を聞き入った。


 ミレェイ軍が孤立したその全容が語られる。


 その時は突然やってきた。黒い大群、『厄気』が攻めてきた。直ぐにスフラは対処手段を考案。『厄気』の攻め手は3方向。ミレェイ軍は本来の持ち場であるミレェイを戦場にすることになった。これまでにない、『厄気』の群れに犠牲も多く出たが、そこまでの被害はない。ユタバも少し変な気はしていた。それは、王都からの連絡で納得した。敵の主功は王都に牙を剥いたからだ。既に、王都の首元まで『厄気』は攻め込まれ、何百という犠牲者がでているという。ミレェイ軍からも援軍を送った。しかし、戦時状況は変わらず。数日が経ったあるとき、事態は急変。王都との境界線に大量の『厄気』が出現した。兵士達から連絡を受け、ユタバも境界線に向かおうとしたそのとき。氷龍が現れた。当然、氷龍の対処に追われミレェイ軍全てを持って挑んだが、銀色の息吹の造形物、氷のドームに閉じ込められた。


「気温は氷点下に近かったですが、『錬術』などで暖を取り、命は繋ぎました。そして、氷のドームを壊そうと内側から破壊していたのですが成果は出ず。途方に暮れていた頃、外から大きな音がしました。助けが来たと判断しましたが。まさか、ケンイチ様とは意外でした。正確にいうとケンイチ様が軍を成していることです」


 眼鏡の奥、瞳が鋭く輝いた。


「鋭いね、こっちも話すよ。王都で何があったか――――」


「王女さまが!」


 さすがのユタバも驚きの声を隠し切れない。


「ごめん。俺の力不足だ」


「そんなこと。じゃあ、イリリさんが軍の指揮を」


「不足? まだ、ガキだしな」


「いえ、全くそんなことは。ただ、王都を捨てる判断はどうかと。もし、王都を占領され、その間にフローラ、ミレェイに移れたとしても。完全に分断させることになります。それではその先、連携は極端に難しい。ミレェイ軍と合流したあとの指示はありますか」


「うん、王都に帰る。『厄気』がいた場合は追い払い、まだ、攻め込まれていない場合はフローラに助力。これはあっちも同じ、もし、イリリ軍が先にフローラ軍と合流できたならあっちがこっちにくる手筈」


 ユタバは眉を潜ませ、一瞬むっとしたあと。元の真面目な表情に戻り口を開いた。


「そうですか。では、早くドームを破壊、戦闘可能な兵士を連れて王都に戻りましょう」


 まるで、蒼い山。その前に仁王立ちする健一は煙の剣を構えていた。


「『スモークソード』」


 ユタバから聞いた氷のドームの強度。氷山を圧縮したような硬度。外から崩した兵士達も個人では何をやっても効果がないため一点集中で砕いたようだ。以上の情報の元。危険は承知だが、時間も惜しいため。健一の『錬術』を使うことになった。


 白煙に切り裂かれる氷の山。切れ目に漂う煙が次々と爆破する。幾多も振るう剣。ついに、中から人影が見えた。


「これで、全員か」


 健一の目の前には2倍ほどに増えた兵士達。残り2つのドームからも無事救出成功。凍傷している人も大勢したが、兵士は戦闘可能なものをユタバが選出。これで、この軍の合計は170人に昇った。


「これから急いで王都に戻るぞ!」


「「おぉーお!」」


 健一の軍だけでなく、ミレェイ軍も声を荒げる。事情はユタバから伝達済みだ。


 待っていろよ、イリリ。無事でいろよ、スフラ。


 「いくぞー!」


 そういいながら、進み来た道を戻ろうとした。しかし、それはある人の一言によって阻められる。


「すまないが、それはできない」


 兵士達の最後尾。黒いオーラが人型を模る。


「あいつは!」


 すぐさま、健一とユタバは駆けだした。兵士達の軍勢は縦に割り、道をつくる。『厄気』軍のリーダーが人の姿をしているのは全兵士が認識している。その絶対的な強さも、それを討てる人は誰かも心得ている。


 2人は人型の『厄気』に辿り着いた。人型の『厄気』はその間一歩も動かない。まるで、まるで待ち構えているように。


「まずは、私が。隙ぐらいはつくります」


 ユタバは先行して、『錬術』を発動。水晶のような氷の塊氷とフェバルは弓と矢に様変わりした。


「『氷矢』」


 放たれた氷の矢。狙いは顔。人の造形そのままなら急所。避けられても視線がぶれ、隙が生じる。そんなユタバの思惑は根本から覆る。黒いオーラは意思を持ったかのように移動し氷の矢を絡めとった。


 それによって、黒いオーラは剥がれた。黒いオーラの影が消える。『厄気』の姿が白昼の元に晒された。


「はぁっ!」


 高い身長に爽やかな短髪の茶髪、二重瞼、高い鼻、小さな口。女性を虜になる外見だ。だが、健一が声を荒げたのはそれではない。『厄気』の服装だ。両胸にあるポケット。ズボンにもポケット。肩に赤い花のエンブレム。バル軍の軍服。


「なぜ、あなたが……。あなたは死んだはずです!」


 ユタバが発狂したように声を発した。横目でユタバを見ると目は見開き、体が震えている。


「あいつが誰なのか知っているのか?」


 唇を震わせ、呼吸を乱しながら口を開いた。


「あの方は、イノア・ライナー。前軍総司令官にして、次期国王。そして、王女様の婚約者です」


「えっ……」


 ユタバが何を言っているのか、健一にはしばらく意味が分からなかった。脳みそが吹っ飛び、どこかにいく。


 その一瞬、イノアの姿が消え、気が付くと2人の目の前にいた。先に仕掛けられたのはユタバ。まだ、茫然としているユタバに黒い手を頭の上に乗せた。すると、電池が切れように、バタンと倒れる。


「おいっ!」


 健一はようやく、状況を飲み込めた。今、自分が危機的状況にいることに。


「ごめんな」


 近づく手、手の平が黒く染まっている。すぐさま手で払おうとしたが、両手が動かせない。いつの間にか黒いオーラが両手を拘束していた。


 どういうことだ。こいつは『厄気』のボスじゃあ、それがスフラの婚約者?


 混沌とする頭の中、拒絶する手段もなく黒の手は頭に乗せられた。視界が回りに回る。次第に狭まり、消えていく。体が動かない、血が抜けたようだ。最後の抵抗、無駄な足掻きだがイノアの顔を睨み付けた。


 何で、お前が泣いているんだよ。


 それが最後、健一は目を閉じ。地に倒れた


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