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お昼休みは異世界で  作者: 未羅ねらと
飛躍の召喚
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再び

目を開けると薄暗い雲が目の前に広がった。視線を動かすとゲインという大きな看板、並ぶビル、列をつくる車。目に入る光景全てが元の世界だと認識させる。


戻ってきたのか、異世界はよかったな。俺、強かったし、救世主だし。ここじゃ、店長にこき使われるだけ。あんなのただ無意味に年数をこなしていただけだろ。たいして能力もないのに偉そうに。


 現実の戻り愚痴を垂れているとふとある問題に気が付く。


というより、1週間も無断欠勤って。確実にクビだよな、やばい、どうする。とりあえず今何時だ?


 急ぎポケットにあるケータイを取り出した時に気が付く。服が作業着に戻っているのだ。それ以外にもタバコも軍手も元どおりになっている。不思議に思いつつも異世界だからと深く考えることを辞めケータイを開いた。


 日時は6月13日、健一が異世界に召喚された日と同日。時間は12時43分、健一が異世界に召喚されてから30分程度しか経っていない。


どうなっている……。う~ん、あれか。時間の流れの速度が違うとかそんな感じだろう。まぁ、考えてもわからないだろうし。これは好都合、クビにならずに済んだ。仕事はいやだけどな、無職は勘弁だ。


 頭の中で整理が付き、地面に転がっていたコンビニのおにぎりを手に取ると乱暴にビニールを剥がし口に放り込んだ。素早く粗食し急いで屋上を後にする。


 できれば屋上がいいけど、そうタイミングがいいはずがないからな。また、異世界に召喚された時に必要になる『媒体』を集めないと。それとこの世界でも強くなる方法はいくらでもなる。


 また召喚されるよな。俺あんなに活躍してボスっぽいやつも倒したし。イリリも救世主だっていってたし大丈夫だな。


 浮き出しあった気持ちはいついらいだろう。乱暴に屋上のドアを閉じる音。虚しい音だが、今の健一には関係ない。久々に健一の心は弾んでいた。


――1週間後――


太陽は真上、お昼休み、健一はいつものように屋上に赴き昼食をとっていた。


あれは夢だった。そうだ、服もタバコも何もかもそのまま、夢に決まっている。それを真に受け。あの日から準備をしていたとは……。我ながら馬鹿だ。


 弾む騒がしい心は静寂に移り替わる。また、健一の心は何一つ揺れることはなくかった。


 首を仰け反らせ空を見上げる。いつかの光が落ちてこないかと目を凝らすが小鳥が過ぎ去るだけであった。


「異世界……いきたいな」


 子供が親に遊園地に連れていったほしいとねだる声で呟いた。


そのとき。


 健一は目を閉じる。そして、口元が緩む。天から降り注ぐ白い光線。再び光が健一を包んだ。


 きた! これだ、これでまた俺のいるべき世界に行ける。震える両手を握りこぶしで抑えるが、興奮を隠しきれない。ギリギリと震える歯、上がる目尻、開く瞳孔。表情は蔓延の笑みだ。


 ホームセンター、ゲインの屋上。光に包まれ健一は再び姿を消した。


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