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45話 エルカ族集落への襲撃




 今日も今日とて修行に勤しむ公正明大なスケルトンです。

 さっそくですが、ワテクシの目の前には惨状が広がっております。

 うむ。死屍累々ですな。

 いや、ゼクト族の皆さんなんですけどね。


 ある者は地面に倒れ付し、ピクリとも動かない。

 ある者は枝の上に引っ掛かり、風に揺られてぶらぶらしている。

 ある者はゆっくりと沼に沈んで行き、そろそろ引き揚げないとヤバイ。


 酷すぎる……、いったい誰がこんなことを……。

 まぁ俺なんですけどね。

 大きい怪我はさせてないから、大丈夫でしょう。

 沼に沈みかかってるのだけは助けとくか。


 しかし、不甲斐ないねぇ。

 やっぱりビルカートさんはゼクト族の中でも相当に強い方だったのだろう。

 いや、《ステータス》だけ見れば、魔改造前のエルカ族よりも、ゼクト族は遥かに強いんだけどさ。

 当社比訳二倍ですよ、二倍。

 そりゃあエルカ族のこと舐めるわ。二倍も違えば普通は勝負にならないもん。スキルの数も違うしね。


 ただねぇ、種族としてのバラつきが多い所為か、エルカ族よりも連携が下手くそだ。

 まぁ、クモとムカデとカマキリが強力し合えますかと言ったら、無理でしょうねって思うけど。

 どこの蠱毒? って話だよ。


 連携が上手そうなのはハチとかアリだが、それに似たゼクト族の姿は見えない。

 まぁ兵隊っぽいもんな、集落の方を守ってるんだろうな。


 あと、そういえば、蛇の亜人さんが混じってます。

 うん、ネビ族だね。俺のこと無視してくれた奴等の。

 別に根に持ってないけどね。前の世界では散々無視されましたから、慣れてますけど何か?

 ていうか、今ネビ族ってヤバイことやらかしてるんじゃなかったっけ?

 いや、良いんだけどね。


 多分アレだろ、長の考えに賛同できずに脱け出してきたとか、そんな感じのストーリーが俺の知らない所で展開してたんだろ。

 修行に付き合う雰囲気で此処に居るし、俺には何の文句もありません。

 

 ネビ族もゼクト族と同じです。

 エクストラ鬼ごっこを楽しんでもらいましたよ。

 三人兄弟でお互いに庇い合っていて、兄弟愛が美しかったけど、それで逃げられていないんじゃあお話にならないねぇ。


 結論、君たち実践経験が少なすぎです。

 エルカ族は役割分担したことで仲間意識が芽生えてチームプレイが出来るようになったけど、さて、君たちはどうするか?


 この修行を通した最終的な目標として、俺は、エルカやゼクトやネビとか、そういう括りは無しにして、亜人全体で纏まった大きな村でも興してしまいたいと思っている。


 なので、差別意識を無くして協力し合うことを学んで欲しいんだが……。

 一番手っ取り早いのは、共通の敵を作ることだね。

 軍隊で鬼教官への恐怖や反抗心がチームを一体化させるみたいに。


 うん、それでいってみようか。

 そうなると、ゼクトやネビ以外の顔触れも欲しいよなぁ。

 カレオちゃんが早くカメリーオ族の人たちを連れてきてくれると良いんだけど。


 そんな時、俺の『魔力自在』で作った監視網に引っ掛かる気配があった。


「……ん? 来客か?」


 これは、集落の方か? 複数人の魔力が感知されたぞ?

 村長とインユゥちゃんしかいない筈なんだが……。

 この魔力の薄さは、エルカ族じゃあ無いねぇ。かといってカメリーオ族の皆さんが来るには早すぎるだろうし……。


 敵襲かしら?

 オラわくわくしてきたぞ!


「様子を見てきてもいいんだがな……」


 まぁでも、ここで死んだ(ように眠っている)生徒たちを放っては行けないよね。

 向こうには村長とインユゥちゃんが居るからなんとかなるべ。


 どうやら村を回り込むようにしてこっち側に向かって来ている奴等もいるようだし。

 魔力の感じでは、村の入り口に現れた奴等と同族だね。

 エルカ族は弱くて他の種族からちょっかい出されたり食糧取られたりしてたって言ってたからなぁ。

 コイツらもその類だろ。

 恐らく村の入り口に行った奴等は陽動、畑に向かっているこっちの奴等が本命かな?


 まったく、泥棒とは感心しませんな。

 少し懲らしめてやろうかね。


 『王の威圧』に『邪気』を混ぜて発動。

 いやホント『邪気』は汎用性が高くて良いわ。何にでも混ぜられる。調味料で例えるなら塩。無くてはならないです。

 ちなみに混ぜることによって闇属性が付加されます。追加効果付与って感じかな?

 命中率低下とか思考遅延などの弱体効果を与えることが多いみたい。

 俺もいちいち相手の《ステータス》を『覗き見』する訳じゃないから、実はあんまり分かってないんだけどね。


 お、不法侵入者の足が止まったな。

 こっちの威圧にビビったかな?

 このまま帰ってくれるのがベストなんだけど……、そうもいかないよなぁ。


 空気が魔力でざわついている。

 どうやら魔法で遠隔狙撃を試みるつもりらしい。

 いやぁ、動きでバレバレ。

 隠れているつもりでも『魔力自在』によって周囲の魔力を感知できる俺には無意味。バッチリ把握してますですよ。


 不法侵入者達の魔力が一際高まり、風の矢が俺に向かって殺到する。

 避けることも出来るんだけどね。ここは一つ遊び心を出してみましょうか。

 『邪気』『呪術』『魔力自在』の合わせ技。“呪いの骨手甲”を精製。

 目の前に迫る風の矢は精々が数十本、全部殴り壊しちゃるぜぃ!


「ぜぃはァッ!」


 どんだけ数で来ようとも『千思万考』を発動してしまえばヌルゲーですしおすし。

 今の俺の素早さなら体感速度が数百倍でも追い付けるしねー。

 “呪いの骨手甲”も本来なら必要ないくらいなんだけど、偶にやっとかないと出来なくなっちゃうからね。


 空気の弾ける音と共に突き出された拳は一瞬で弾幕となり、風の矢を全て叩き落とした。

 余裕ッス!


 ふふふ、魔力が乱れているぞ泥棒諸君。

 動揺していることが丸分かりだ。


「そこに隠れているのは分かっている。出てこい。こんな弱い魔法では私は殺せないぞ」


「……貴様、何者だ」 


 あ! やせいの どろぼう が とびだしてきた!

 苦々しげな顔をして茂みから現れたのは、ネビ族の壮年の男だった。

 

 ふむ、一人かね。

 残りの奴等は茂みに隠したまんまかい?

 その伏兵、バレバレなんですけどね。


 泥棒男は蛇っぽい顔なのに、お髭がダンディー。所謂いわゆるカイゼル髭。すごく似合ってるわぁ、カッコいい。

 俺は髭が似合わなかったからなぁ……。

 いや髭は濃かったんだけど、変に童顔めいた所があったから最悪に似合わなかったんだよね。剃った痕も青々としてるし、それで馬鹿にされてからかわれるしで……。

 いや、いいんだ。そんな過去にはもう蓋をしておこう。


「こちらのセリフだ。ここから先にはエルカ族の畑と集落があるんだが、何用かな?」

「貴様には関係ない、と言いたいところだが、そうもいかんのだろうな」


 ほほぅ、そう返して来ますか。

 じゃあもう敵ってことだね。

 ならば俺の技の実践稽古に付き合ってもらうとしよう。


「エルカ族には世話になっている。彼らに害為すつもりならば通す訳にはいかん」

「こちらも子供の遣いではないのでな。通して貰わねばならん」


 カイゼル髭はゆらりと腕を広げた。

 その手のひらに魔力が集まっていくのが分かる。


「ネビ族戦士長、ウォマ・ラムサスだ。貴様の名も聞いておこうか、スケルトン」

「ブラックスケルトンのカサンドラ・ヴォルテッラだ。さぁ、手合わせ願おうか!」


 もはやからだの隅々にまで染み付いた構えを取る。

 ウォマ、と名乗ったカイゼル髭は魔力を集中させたままこちらを窺っていた。

 俺もどんな魔法が飛んできても対処出来るように相手を見据えている。

 

 くぅ、コレですよコレ!

 如何にもな敵の武人というか、武将って奴と名乗り合い、名誉と誇りを賭けて戦う。

 くぁあ~ッ! こういうのがしたかったんだよぉ!

 これこそ戦いだよ!

 角の生えた熊やら馬鹿デカいナマズやらと食うか食われるかのバトルは戦いというよりもサバイバルに近い感じだったしね!


 相手が泥棒ってのが少し残念だけど。

 いや、ネビ族だから、アレか?

 なんだか反乱っぽいことしてる流れで来てるのか?


 うーむ。ヤディカちゃん達に譲ると言った手前、俺が手を出すのも憚られるのですが……。

 まぁ俺の所に来ちゃってるもんね! 仕方ないね!


 内心嬉々としながら魔力筋を纏う。

 この魔力筋は俺の生命線だ。スケルトンにはない打撃の重みや速さを出すための基礎にして奥義と言える。


 飽くこと無く繰り返した修行により、俺の魔力筋性能は既に初期とは段違いの性能を誇っている。

 不恰好に容量だけを増やして攻撃力を上げていた頃とは違うのだよ。

 薄く纏うだけでも以前と同等かそれ以上、容量を増やさずに注ぐ魔力を増やすだけで更に性能を上げていくことが出来る。


 やり過ぎると魔力の圧に負けて骨が折れるけど。


「悪いが手合わせなどには付き合っておれんよ。“風の鞭ウィンド・ウィップ”」


 ウォマの腕から風の鞭が伸びる。

 魔法だからか、振るという動作なしで生き物みたいにうねっている。

 相手の動きで鞭の動きを読もうとするのは、逆に危ないな。


 だがまぁ、『魔力自在』で見える魔力量は大したことない。これくらいなら魔力筋と『呪いの骨手甲』で充分だ。


「その首貰い受ける」


 風の鞭が俺に向かって振り抜かれた。

 おい、狙う場所言っちゃうのかい。

 まったく馬鹿正直だな、嫌いじゃないぜ。


 鞭を振るう速度は速く、その先端は一瞬とはいえ空気の壁を超える。

 当然、視認は困難。

 だけどヤディカちゃんの鞭打をみてるしね。

 『千思万考』もある。俺にとって速度は問題に為らないぜ。


「づぇア!」


 迫る鞭を正面から殴り返す。

 “風の鞭ウィンド・ウィップ”とやらは一撃で粉砕。

 魔力の練り込みが甘いな、魔法が脆くなってるぜ。

 ウォマの顔色が変わった。

 今の鞭は小手調べってことだったのかな?

 そんな悠長なこやってると、俺からガンガン行くぞ?


 地を蹴り、ウォマの懐へ入り込む。


「ッ!? “風の防ウィンド・シー……”」

「遅いッ!」


 腰を捻り込んだリバーブロウがウォマに突き刺さり、体をくの字に折り曲げる。

 攻撃スキルを発動させなくても、これくらいはね。

 

「ぐほァ!?」


 折角頭を下げてくれたんだから、貰っときますね。

 迎え撃つようにハイキック。

 まともに命中。

 くの字になっていたウォマの体がきれいに逆向きに吹き飛んだ。


 魔力でガードとかしないのか。

 赤角熊ならリバーブロウも成功してないと思うんだが。


 茂みに隠れている伏兵達が慌てているな。

 魔力の波がブレブレだ。

 まぁ、このウォマって奴が一番強いんだろう。

 隊長格がいきなり血ヘド吐いて転がれば部下は焦るよなぁ。


「ガハッ……、貴様、ただのスケルトンではないな……!」

「ブラックスケルトンだ」


 さっきそう名乗りましたけど?

 ブラックが重要ですから。ただのスケルトンじゃないよ。

 もうすぐ進化する予定だし、また変わるかもしれないけど。


「そういうことではない! ブラックだろうと何だろうと、スケルトンがここまでの攻撃力を持つなど、有り得ん!」

「日々の修行の賜物だ」


 持ってるんじゃない。鍛え上げたんだよ。

 最初から持っていたみたいに言わないでくれ。

 俺の初期ステータス教えようか?

 鍛える前のエルカ族にも負けるんですよ?


 ていうか『骨融合』に目覚めなければ未だにボロボロのウェルダンスケルトンだったから。

 ある意味ブラック、って喧しいわ!

 ホント『骨融合』さんには頭が上がりませんわぁ。


「ぬぅ、秘密は明かさんということか!」

「そうではないんだが……」


 だから修行ですって。

 《ステータス》の上昇は『骨融合』さんが大きいから、明かしてないと言えば明かしてないけど。


 それと、俺とウォマが話はじめてから魔力を練り始めている伏兵諸君。何度も言うけどバレてるんだって。

 せめてもっと静かに繊細にやりなさい。

 エルカ族の女衆は『毒魔法』を練り込む時に周囲に波紋すら起てないよ。

 あれは意識していないと気づけないレベル。

 彼女らは順調に暗殺者としての道を歩んでいます。


「ここまでの力を持ち、なぜエルカ族などに仕えるのだ!? 奴等は弱く知恵もない! 亜人よりも獣に近い種なのだぞ!」


 おい、エルカ族、ひいてはヤディカちゃんを馬鹿にするな、そのヒゲ毟るぞ。毟って食わせるぞ。


「彼らは優しく、聡明だ。それに仕えているのではない。私たちは友だ」

「戯言を! 異なる種で友だと!? 」

「そうだ」

「……有り得ん、理解に苦しむ。貴様は……異端だ。考えが人間とも亜人とも離れている」

「……」


 ……異端、ね。

 まぁそうだろうよ。

 俺はこの世界の人間じゃあないからね。時代や風俗なんかでも考え方は変わる。

 俺がいた現代日本・・・・じゃあ誰でも彼でも仲良しこよしってのがお題目が正義なんだけどね。


「だが実力は本物……。厄介な奴め、貴様は必ず争乱を巻き起こすだろう。我が一族安寧のため、今ここで仕留めようぞ!」


「「「複合魔法“暴風の破城槌テンペスト・クラッシャー”!!」 」」


 ウォマが腕を降り下ろす。

 それを合図として、茂みから俺に向かって魔法が殺到する。

 風魔法だな。速度に優れ、空気を飛ばすので回避も防御も難しい魔法だが、『魔力自在』で常に魔力を感知している俺には問題なく対処できる。


 しかし、この規模の魔法は始めてだ。

 水や毒の弾、風の矢なんかは見たことあるけども、これはスケールが違う。

 竜巻が俺に向かって突っ込んで来るのだ。


 少し舐めすぎたかな。

 避けるのは簡単なんだが、俺の後ろにはまだ復活する様子の無い生徒諸君が倒れている。

 HPを一桁台まで削ったし、巻き込まれたら洒落にならないだろうな。

 防御するにしても、余波が心配だ。


 くそ、こんな事になるならもう少し加減すべきだったか。

 いや、それは無いか。修行するなら全力でやらないと意味無いしね。


 さて、どう迎撃したもんか。



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