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20話 今後の方針



 どわっふぅ! ヤディカちゃん骨になっちゃらめぇえ!


 心の中でそう絶叫しながら俺は飛び起きた。

 頭が思いっきり天井に当たる。

 うぉ痛い!

 くそ、なんだコレ? 俺の体が狭いとこに押し込められてる!?


 ん? あぁ、いやこれ進化の繭か。

 破んなきゃ外に出られないんだな。案外固いからビックリしたわ。


 くそぅ、進化していきなり頭ぶつけるとか恥かいた! たぶん外にまでゴツッって音が聞こえてたよ。やだもうアタシったらどじッ子さん!


 吹き飛べこのクソ繭め!

 昇 竜 拳 !


「ぐっはぁあああ!」


 俺の拳は天を突き、繭を砕き、覗き込んでいたエルカ族の男を吹き飛ばした。


「え?」


 ちょ、お前何をやってんの?

 進化の繭覗き込むとか危ないでしょうよ。


 あ、あのエルカ族動いてない。

 死ーんってなってる。

 おおぅ、やべぇ、殺っちまった。

 進化して早々に犯罪者とか人生ハードすぎる。


「何、やってるの?」


 お、その呆れたような声、ヤディカちゃんだね?

 ふふふ、ヤディカに呆れられ続けた俺にはその声だけでヤディカちゃんのことが分かるよ。

 うん、全然自慢にならないな。


「今起きた。だが人を一人殴り殺してしまったようだ」

「馬鹿なこと、言ってる」


 ヤディカちゃんにとっては馬鹿なこと扱いですかい。そうですかい。

 まぁ、あのエルカ族のお兄さんも死んじゃいないでしょ。

 誰が鍛えたと思ってるんだい? ふふふ、俺だよ!

 まぁ、半分オートみたいなもんでしたけどね。


「そんなことより、皆に顔、見せてあげて。すごく、心配してたから」

「心配? 何故だ?」

「一週間、寝てたんだよ?」

「…………そんなにか」


 うわーぉ、驚いた。

 そんなにも寝てたか。心配かけちゃったのかぁ。

 すぐにでも謝りに行かないとな。


 だが少し待っておくれ。進化したての《ステータス》を確認しておきたいからね。





《ステータス》

名前:カサンドラ・ヴォルテッラ/菅野 照彦

種族:ブラックスケルトン

Lv.1

HP:400/400

MP:1050/1050

SP:500/500

攻撃力:420+84

防御力:200

素早さ:1940


◇スキル

『不死属性』『魔力自在』『千思万考』『骨融合』『無手の天才』『足掻く』『中級鑑定』『言語理解』『覗き見』『威圧』『呪術(New!)』『邪気(New!)』

『幸運』『根性』『無茶』『剽悍無比』『豪腕』『物理抵抗(小)』『HP自動回復(微)』『念話』『指導者』

『闇魔法(New!)』

『闇吸収(New!)』『恐怖耐性』『毒無効』『麻痺無効』『睡眠無効』『光耐性弱化(New!)』

『進化条件解放(New!)』



◇称号

【転生者】【重度修行中毒】【融合魔獣】【ユニークファイター】【教え導く者】【恐怖の体現者】【お客様はクレーマー(New!)】




 なんという強化!

 なんという称号!

 クレーマーじゃねぇよ! 当然の主張だったでしょうが!

 これ絶対ベンダーさんが付けたでしょ!

 犯人はいつも一人! 名探偵スケルトン!


 そしてねんがんの『中級鑑定』を てにいれたぞ!


 ぬっふっふ。色々増えているスキルも有るし、早速調べていこうかね。




『中級鑑定』

 下級鑑定と比べより多くの情報を得ることが出来るようになっている。

 下級鑑定を持っている鴇に種族として進化すると獲得できる。



『呪術』

 低い確率で対象の《 ステータス 》を10~50低下させる呪いを放つ。MPは消費しないが発動に触媒が必要となる。



『邪気』

 自分の体に邪悪なオーラを纏い、武器や肉弾攻撃に闇属性を付与する。ただし、飛び道具には使用不可。

 威力はMPに依存する。



『闇魔法』

 闇や影を操る魔法を使用できる。日中では威力が減衰する。


 現在使用可能呪文

・ シャドウクローク …… 闇を纏い、身を隠しやすくする。



『闇吸収』

 敵の闇属性攻撃を無効化し、吸収する。光属名攻撃が弱点となる。

 付与攻撃ならばSP、魔法攻撃ならばMPが回復する。



【お客様はクレーマー】

 お客様はクレーマーです。宣伝よろしくお願いします。




 ちょっと意味がわからないのもあるが、概ね良いスキルが揃ってますな!

 特に『邪気』は中々俺の戦闘スタイルにも合ってるんじゃ無かろうか。

 どんな威力が出るのか早速試さないとな!

 うーん、闇属性っぽい格闘ってなんか有ったかな? 今すぐには思い出せないな。


 『呪術』は触媒が必要となるのか、でもなぁ、何が必要とか分かんないしなぁ。は虫類の干物とか謎のキノコとか光る苔とか集めれば良いのか?

 分からん、保留。


 そして『闇魔法』! 来ました魔法スキル!

 俺もついに魔法デビューです!

 攻撃魔法じゃないのがちょっと残念だけど、なに、ここからレベルを上げていけばいいのです。


 しかし、ベンダーさんによる【お客様はクレーマー】という称号。いまだかつてここまで意味の無い称号があっただろうか?

 メリット、なし。

 デメリット、なし。

 ゲームの制作者サイドの悪ふざけ特典みたいになってるよ、ベンダーさん。

 ベンダーさんマジ残念。


 さて、スキルチェックも済みましたし、エルカ族の皆さんに挨拶に行きますかね。




◆◆◆




「おぉ、カサンドラ殿、無事に進化が完了されたようで感無量ですわい」


 やぁ村長さん、相変わらず暑苦しいね。

 こう、なんというか、“ 雄 ”が全身から発散されてる。

 でも筋肉量だけは心の底から羨ましいわ。


「皆に心配かけたようで済まない」

「いえいえ、カサンドラ殿のことですから、きっと進化もより強大なものであったのでしょう」

「どうだろうな。まだ確かめていない」

「ほっほっほ、我らも負けずに精進せねばなりませんな。ところで、我が愚息に会いませんでしたかの?」


 愚息? あぁ、息子さんのことね。

 えーっと、名前なんだっけ?

 多分会ってないんじゃないかなぁ、と思うんだけど。


「カサンドラ殿の繭から音がした、と見に行ったとはずなのですがのぉ」


 あ、あぁ!

 なるほどあの殴り飛ばしちゃったエルカ族の人ね!

 村長さんの息子さんでしたか、すいません。


「すまん。繭から出た拍子にぶつかってしまったんだ。彼なら繭があった部屋で伸びている」


 ちょっとオブラートに包んでおこう。

 うん、ぶつかっただけ、ぶつかっただけ。

 決して格闘ゲームの技をブッパした訳じゃないよ。


「なんとまぁ情けないことですのぉ、まぁ愚息も亜竜とはいえ竜種を倒したことで少しばかり調子に乗っておりましたので、良い薬でしょう」


 村長さんの懐が深くて助かった!

 開幕ブッパは容量・使用法を守った上で相手をよく見て利用しましょう。

 これ、格ゲーの鉄則。


「それにしても、黒いスケルトンですか、儂もそれなりに長生きしとりますが、聞いたこともありませんわい」

「そうなのか?」


 変異種って書いてあったしね。

 それなりにレアなんじゃないの?

 だからこそ選んだんだし。

 今まで白っぽかった体がほぼ真っ黒とか新鮮だわ。

 これ真夜中とか自分で自分の姿が確認できなくなりそう。


「なかなか恐ろしげな風貌ですぞ。特に黒いl髑髏どくろの眼窩に真っ赤な鬼火が灯っている所など、子供が見たら泣くでしょうな! ですが、カサンドラ殿には良く似合っておりますわい!」


 ……こいつ、これで悪気無いんだよな。

 悪口のつもりで言ってるんじゃないから、上手く怒れない。

 怒ってもキョトンとするだけだしな。

 相手するこっちが疲れるわ。

 話題を変えよう。


「そうか。現在の状況はどうだ?」


 俺が聞いたのはこの森の魔物を討伐し、安全に暮らす為の闘争、その進捗だ。

 たったの二ヶ月で異様に強化されたエルカ族達であれば、俺が眠っていた一週間でかなりの戦果を上げたことだろう。


 村長はにやりと不敵に笑った。

 ううん、なかなか良い笑みをするな。

 ちょっと戦いたくなってしまうぞ。


「ほっほ、この森は広いですからのぉ、皆、狩り場に不自由せずに楽しんでおるようです」

「規律に反したものは?」


 規律、と言っても軍隊のようにガチガチのものではない。

 簡単なルールとマナーみたいなもんだ。

 弱いもの苛めはいけません、とか戦う相手には敬意を持ちなさい、とか、必要以上に自然破壊をしない、とか、色々そんな感じ。


「若い衆が何人か己の力を傲っていたようでしたので、儂と愚息で思い知らせておきましたわい。今は反省の意味を込めて村中の便所掃除をやらせております」

「急に力を付けたものは心が追い付かないものだ。仕方がないことだな。村長。妥当な判断だ」

「現在、エルカ族は班ごとに分かれそれぞれ力のあるモンスターを討伐しております。我々亜人のように知恵ある一族には交渉役を送り、今のところ約半数は我らの軍門に下っておりますな」


 ほうほう。

 ……ん?

 村長、今なんて言った?

 他の亜人族が軍門に下った? ウチの?

 ……お前、何やってん?


「村長。安全に暮らす為の闘争だったのだろう? 何故他種族を従えるという話になる?」

「カサンドラ殿、安全に暮らす為にございます。我らから食料を資源を奪うものは何もモンスターだけでは無いのです。他種族の亜人もそうなのです」


 エルカ族、弱かったもんなぁ。

 でも、他種族従えてどうすんのよ?

 今度はこっちが搾取するのかい?

 それじゃあ何も変わんないぞ!


 いや、とにかく人死には出ないようにしているよな?

 出てたらヤバイ。

 絶対にいつか反乱される。

 それよりも上手く取り込むんだ。

 出来てる? 出来てるよね?


「…………そうか。穏便に済ませているか?」

「反抗的なもう半数には最後通牒を送っております。カサンドラ殿が進化を終え次第、攻め入る手筈となっておりますな」

「村長。今から止められないか?」

「ほ? 何故ですかの?」


 村長、あんたも中々力に溺れて来てるぞ。

 そこを自制して理性的でいてこその知恵者でしょうよ。

 まぁ、でも、虐められッ子がある日突然誰にも負けない力を手にいれたら、そりゃあやり返すよね。

 でも俺は共存共栄したいのよ。


 味方増やしてレベルを沢山上げないと、世界の管理者とやらの依頼を果たせないからね。

 そんなの知ったこっちゃねぇ! と人生をロックンロール出来るほど向こう見ずじゃないし。

 管理者は敵じゃない気がするのよね。


 なんだろう、こう、中間管理職の哀愁を感じるんだよ。

 メタボ入ったオッサンが愚痴を飲み込んで溜め息吐きながら人材派遣会社に連絡してる、みたいな。


「仕返しをしたいという気持ちは理解できる。しかしそれでどうする? 他の亜人族を奴隷にしてこき使うか? 力の弱い者を虐げるなという規律はどうしたのだ」


 村長は目に見えて動揺していた。

 こんなことに気付かなかったなんて、相当恨みが溜まってたんだな。

 察してやれなくて済まん。


「私はこの森に住まう全ての亜人と共存共栄していきたいと考えている。過去の恨み辛みを流して何もするなとは言わない。だがまずは私と彼らで話をさせて貰えないか?」


 うーん、これって俺にとってあんまりにも都合が良すぎる話だよな。

 結局、村長たちエルカ族にはまず我慢しろって言ってるんだから。

 この話をきっかけに、俺とエルカ族の間に亀裂が入りかねないと思う。

 でも、本当に済まない。

 ここは譲ってくれ!



「わ、儂らは、まさか、儂の目が曇っておったのか……」


 ずっと弱い立場で我慢してきたんだろう。

 弱かった種族の代表ってことは、より強いものの暴力に耐えてきたってことだもんな。

 そりゃ曇りもするだろうよ。

 だけど仕方がないことだよ。

 喜びもすれば怒りもする。感謝することもあれば恨むこともある。

 生きてるんだからさ。


 スケルトンが言っても説得力無いかもだけど。


「村長。私はその事を責めはしない。心がある以上その動きを止めることなど出来ないのだから」


「いえ、儂は自分の恨みでエルカ族を動かしてしまったのでしょう。村長として失格ですわい」


「まだ間に合うだろう。何もかもな。説得は班で向かっていると言ったな。ならば『念話』で連絡が取れるはずだ」

「お、おぉ! そうですな! それならば考えは直ぐに伝わるはずですじゃ!」


 やれやれ、こりゃ指令室でも作った方がいいな。

 全員集まったら早速教えよう。

 連絡役の『念話』持ちを置いて、村長辺りに全体の指示を出させて……。あー、スキルで『視界共有』とか『千里眼』とかあればもっと上手く機能しそうだな。


 そこまで行ったら、もう組織として構成出来るんじゃないか?

 うーむ、政治ものは苦手なんだけどな。

 でも、俺の共存共栄計画を推し進めるなら、集団生活の枠じゃ収まらなくなるよね。

 取り敢えず各族長の意見も聞いてみたいな。


「村長、各亜人の長たちと話ができないか? 出来れば纏まって会議のように話したいんだが」

「会議……? 密議ムートのことですかな? 各亜人の長が一同に会すなど前代未聞ですが、やってみましょうぞ」

「穏便に頼む」

「ほっほっほ、存じておりますとも。もはや規律は違えませぬ」



 村長がやる気になってくれたようで良かった。

 こうなったら、俺も腹を括らないとな。

 どんな種族が来るか分からないけど、まずは話し合いを成功させよう。


 それと、まだ森のモンスターも強力な奴等が残ってる。油断せず、いつでも助けに向かえるようにしとかないと。


 特にあの赤角熊。アイツだけは俺がこの手で仕留めてやる。

 体半分を焦がされ、死の恐怖を刻み込まれた屈辱は忘れてない。

 アイツを倒さなきゃ、俺は本当の意味でこの世界で生きていけない。

 進化した今ならば以前のような無様は晒すまい。

 否、今度はアイツが恐怖の悲鳴をあげ、命乞いをする番なのだ!

 覚悟しとけよ、次に会うときは、お前を倒す時だぜ! 赤角熊!!



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