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14話 会話中の妄想は危険


 猿のモンスターの群れを撃退、というか殲滅してから何日か経った。

 その間いろいろ変わったことがありましたよ、良いことも悪いことも、えぇ色々。


 まずは良いことから。

 左腕復活! 左腕復活!! 左腕復活!!!

 左腕復活!!!! 左腕復活!!!!!


「……修業してぇ~~」

「……? 今してるよ?」


 突っ込みありがとうヤディカちゃん。

 違うんです、そんな馬鹿を見る目しないで下さい。これ決められた流れなんです。

 直って何日も経つのに左腕があることを確認するだけでちょっとテンション上がっちゃうだけなんです。

 これで全欠損修復完了です!

 いやっふぅううううい!

 手足があるって素晴らしい!

 テンション上がると魔力筋全開で筋トレしちゃうよね!

 うん、あるある~。


 魔力で作ってんだから意味無いだろって突っ込みはヤディカちゃんからとっくに頂いています。

 甘いッ!

 魔力で作っているとはいえ筋肉は筋肉。

 確かに増量はしないけども、鍛えれば鍛えるだけ強くしなやかになるのさ!

 そうすれば動きはより素早く、防御はより堅牢に、剛も柔も兼ね備えた理想の筋肉に近付いていく。

 うふふ、牛の歩みのように遅く、半紙のように薄く、しかし着実な成長を魔力筋は感じ取れる。

 ついつい筋トレにも気合いが入るってもんさ!



 良いことその2

 ヤディカちゃんの骨折、俺が治せました。

 『骨融合』さんが、同意がある場合に限り対象者にも使用可能だったのです!

 キャーステキー『骨融合』さん抱いて!

 恐らく本来の目的は治療じゃなくて他者の骨の簒奪です。相手を屈服させて骨を奪う技らしいです。なにそれこわい。

 まぁそんなスキルを利用して折れた骨を猿の骨で接ぎました。

 痛みもないようだし、施術も一瞬。

 俺・THE・河童の妙薬。


 打撲やアザは治せなかったんだけどね。

 干渉出来るのはあくまでも骨だけっぽい。

 まだ腫れている顔でヤディカちゃんにお礼を言われた時は、微妙な気持ちになった。

 有り難うって言われて嬉しいさ。嬉しいけど、出来るならその怪我も治してあげたかった。


 ヤディカちゃんの完治にはまだ少し時間がかかる。


 あの日、俺のあばらで泣き疲れて眠ってしまってから、ヤディカちゃんはこちらに対してあまり壁を作らなくなってくれた。

 なんだか依存されてる気もしないでもないんだが、悪い心地じゃない。

 むしろ両生類ッ娘に懐かれるとか萌えます。可愛すぎて悶えます。毎日モダモダしてます。


 本当に毒無効で良かった。ヤディカちゃんが遠慮なく甘えられる体で良かった。それだけは本当スケルトンで良かった。

 大事なことなので三回言いました。


 良いことその3

 私、成長しました。

 《ステータス》が伸びたって意味でね。



《ステータス》

名前:カサンドラ・ヴォルテッラ/菅野 照彦

種族:スケルトン

Lv.10

HP:80/80

MP:150/150

SP:100/100

攻撃力:120+24

防御力:40

素早さ:600


◇スキル

『不死属性』『魔力自在』『思考加速』『骨融合』『無手の天才』『足掻く』『下級鑑定』『言語理解』『覗き見』

『幸運』『分析』『根性』『無茶』『剽悍無比』『豪腕』

『恐怖耐性』『毒無効』『麻痺無効』『睡眠無効』



◇称号

【転生者】【修行中毒】【融合魔獣】【ユニークファイター】


〈 進化待機中です 〉



 いやね、デカゴリラとの戦闘後になんかインフォメーションさんが言ってるなぁとは思ったんだけどね。

 これ見てポカーンてなりましたわ。

 レベルアップで成長していない分、『骨融合』と称号ボーナスとスキルボーナスで増えてるっぽい。

 称号美味しいです。

 スキルより狙う価値あるかもしんない。


 内容はそれぞれこんな感じ。



『無手の天才』

武器を持たない戦闘術に関しての習熟と攻撃速度が早まる。素手の際に攻撃力が最大の二割上昇。



『覗き見』

 生物に対し、ある程度情報を得ることが可能となる。相手のレベルが高ければ高いほど抵抗されやすい。



『剽悍無比』

 天位スキル。

 素早さが極大上昇。素早さの成長率に極大補正。

 陸上を自在に駆けることが出来る。魔力を消費しながら空中・海中をまた駆け、任意の速度が出せる。



『豪腕』

 腕を使った攻撃にダメージ上昇補正。攻撃力大上昇。攻撃力の成長率に上昇補正。



【融合魔獣】

 モンスターの力をその身に取り込み吸収するものに贈られる称号。

 融合したモンスターのスキル・ステータスをより多く獲得出来るようになる。



【ユニークファイター】

 類を見ない戦い方を貫く漢に贈られる称号。

 ユニークな攻撃方法に限り破壊力が増大する。




 まずね、『無手の天才』は分かる。ずっと修業してるしね、順当な成長と思いたいね。

 『覗き見』はヤディカちゃんを診る際に獲得しました。やったね骨ちゃん異世界知識が増えるよ!

 『豪腕』はゴリラだね。イノシシの骨を融合させて『猛進』を獲得したのと同じように、左腕をゴリラと融合したから獲得したんだね。


 問題は君だよ『剽悍無比』君。

 天位スキルってなんぞや?

 字面から察するに、上位の上ってこと? マジかよ、上の上があるのかよ。ていうか上位すっ飛ばしてんだよ。

 素早さの上がりっぷりがヤバい。まさかのMPの四倍です。ついさっきまで14だったんだけど……。

 防御力も急上昇してるはずなのに霞んで見えるぜ!

 い、今起こったことを正直に話すぜ、俺はスケルトンを不死身デコイ程度のモンスターだと思っていたが、実際は回避特化の肉弾系モンスターだった。何を言ってるのか分からねーと思うが、うんぬん。

 嬉しい。嬉しいが若干引く。

 この速さスケルトンの範疇じゃなくね?

 もういっそのこと全身を赤く塗ってやろうかしら。

 あ、駄目だ、そしたら速さが三倍になって1800になっちゃう。

 たぶん制御しきれない。


 獲得した理由は何となく分かる。

 実は、やせぎすの猿とゴリラの余った骨を足にも融合させてみたのだ。

 結果は予想通り成功。ステータスアップとスキルをゲットすることが出来た。

 手にいれたスキルは『立体機動』と『宙躍』

 ヤディカちゃんに教えてもらったのだが、猿のモンスターは数回程度空中を跳ねることが出来たらしい。たぶんそれが『宙躍』。

 『立体機動』ってのは要は樹上を素早く移動するテクニックみたいなもんだろう。


 『跳躍』『猛進』『耐久走』『宙躍』『立体機動』と移動に関するスキルが増えた結果、『剽悍無比』という上位スキル以上のスキルが手に入ったと思われる。


 この世界、ログ完備してないからなぁ、一回聞き逃したり忘れたりするとどうしようもないんだよなぁ。


 取り敢えず『剽悍無比』の検証はそんな感じ。


 称号に関しては、まぁ、これも分かる。

 順番としては【融合魔獣】の獲得の方が早かったからここまでステータスがアップしたんだろうな。何にせよ、『骨融合』さんはより活躍するようになったのだ!

 もう『骨融合』さんに足向けて寝られないッ!


 【ユニークファイター】も仕方無いね。

 だってまずスケルトンのセオリー無視して筋肉搭載するところから始まってるからね、そんでレベルも上げずに物理で殴るを実践。理論がぶっ飛んでる漫画拳法を魔術で無理矢理再現するところまでイっちゃってるもんね。

 むしろユニークって言っていただいて有り難うございます。あたしゃもっと直接的に【変人】とか【スケルトンの意味ある?】とか来てもおかしくないと思ったよ。




 さて……。気は重いが、良くなかったことも思い出さねばなるまい。

 良くなかった、では少し違うか。

 物凄く面倒臭い。


 まず1つ。

 ヤディカちゃんの暮らしていた集落のことだ。

 ヤディカちゃん達エルカ族は水分の多い土地を好む。だから集落も池というか湖に半ば合体した形で作られていた。

 全体的に戦闘力は低いが、風や天候を読むことに長けており、水中や陸上で様々な農作物を作って暮らしている。

 あの猿のモンスターたちはそれを狙って襲ってきたらしい。群れの数が異常だったと言っていたから繁殖し過ぎて森から溢れたんだろう。


 で、だ。

 池や湖というのは、言わばでかい水溜まりだ。地下では水が通っているのだろうが、川や海と比べ、自浄作用に大きな差がある。

 今回の襲撃に予想以上の消耗を強いられたヤディカちゃんは、毒を限界ギリギリまで使用した。

 それはもう今まで使ったことがないくらいに。

 どこまで巻き散らかしたか把握できないくらいに。

 しかも毒で死んだモンスターの死体や、溶けた肉なんかがぷかぷか浮かんでたりした。

 生活に必須の湖の上に。


 結果として、湖の約半分が毒で汚染されてしまった。

 これヤベェと気付いた時、俺は全身の血の気が引いて卒倒するかと思った。

 血は流れてないんですけどねーHAHAHA。

 イッツ・スケルトンジョーク。


 取り敢えず声あげて村人呼んで大急ぎで足場の毒を処理。同時に湖の毒がこれ以上拡がらないように強力な消毒作用を持つという木の板で湖を区切り、急場を凌いだのだった。


 毒を流してしまったことを罵詈雑言で責められるかと思いきや、エルカ族は異様に寛容に許してくれた。

 何でも、このような事態になることは決して珍しい事ではないのだそうで、処理も手慣れているのだということです。

 本当に穏やかな種族だ。

 こう言ってはなんだが、ヤディカちゃん一人を戦わせている卑怯で臆病な奴等って思い込みが強すぎたよ。


 大人達の中には自分達に戦う力さえあればと歯噛みしている人も少なくなかった。

 その内の一人はなんとヤディカちゃんの父親だという。

 うわぉ、マジかよ。母親もしっかりいらっしゃるようで。

 ヤディカちゃん一人で暮らしてるからてっきり両親はお亡くなりになっていると思っていたよ。

 正直、すまんかった。


 ここからが本題。

 いくら処理に手慣れているエルカ族の皆さんでも、湖に拡がった猛毒を無害化するには少なくない月日と毒で死ぬかもしれない危険を覚悟してやらねばならならしい。


 俺、毒無効です。

 でもここでそんな宣言かましても迷惑になっちゃうよねー。

 うわー、俺空気読めるわー、っべーわ、まじっべーわぁ。

 はい、面倒くさいです。

 もう魔力で構成した左腕も限界だし、さっさとそこのデカゴリラの腕を融合したいんだよね。

 そんなことを考えながら明後日の方向を向いて口笛を吹いて(吹けない)いたら、村長らしきひげカエルさんが、まじまじと俺を見て余計なことを言ってきた。


「失礼ですが……、この子を抱いて大丈夫なのでしょうか?」


 まーもう村長さん(推定)ったら抱いてだなんてヒワイなこと言わないでよねー。

 そうだね、ヤディカちゃん抱き締めっぱなしだね。

 ヤディカちゃんって毒液を自由に出せるだけじゃなく、体液という体液が猛毒なんだってさ。

 へー、初めて知ったわ。

 あー、だから一緒に暮らせないのね。くしゃみ一発で死人が出るもんね。

 くしゃみって、手とかマスクしないとメチャクチャ飛び散るんだってね。


 ヤディカちゃんめっちゃ泣いてたわ。

 涙びっちゃり流してるわ。

 今うっすら寝汗かき始めてるわ。

 つまりこれ現状全身猛毒コーティングされてる感じなのね。


 ん? 体液が毒? じゃあ洞穴の中にあった毒溜まりって……?

 そういやヤディカちゃん、布団あそこに敷いてたような……。

 ハッ!?

 え、まさ、ONE☆SYO……

 いかん危ない危ない危ない危ない……

 それ以上いけない。

 俺は何も気付いていない知らない分からない。


 いやまて、ヤディカちゃんは子供。

 外見だけでも約12才。

 12才じゃあハードラックとダンスっちまってもセーフセーフ。

 よしんば身長低めの15才程度だとしても子供何だから……って流石にその年齢は――


「――――どうでしょう? 引き受けては下さらんか」

「アウトだよッ!!」


 場が凍った。


 ヤベェ……、話全然聞いてなかった。

 スケルトンだから表情に変化なくて、村長さんもこっちがしっかり聞いてるもんだと思って喋ってたらしい。

 この場にいるエルカ族の皆さんが目を真ん丸にしてこっちを見ている。

 皆さん、目玉まんま蛙ッスね。


 てか、亜人の人外度高いよね。まだエルカ族しか知らないけど、これで鎧着込んで武器持ってたら完璧に世界征服企む悪の秘密結社の改造人間ですわ。

 あれはね、V3とS1こそ至高。至高の双璧。異論は認める。

 でも最強のコンビは一号と二号。異論は無かった、いいね?

 そういやここファンタジーじゃん?

 修業と魔力次第で色んなライダーの技再現できるんじゃね?

 マジか!? テンション上がってきた!!

 まずは赤○少林拳からやってみようか!

 うーなる鉄拳、飛竜拳! 岩をも砕くパンチ! パンチ! パンチィ!


「その……、是非参加して頂きたいのですが、やはりご無理でしょうか?」


 え? 何の話だったっけ?

 済まないね。新たな修業を見つけてしまうと止まらないのだよ。

 あれかい? 参加ってことはモンスター討伐の打上的なやつかい?

 うーん、ヤディカちゃんは参加できないだろうしなぁ。

 でも行為を無下にするのもアレだから、ちょっと参加してタッパーとかに料理積めて持ってかえってあげよう。

 タッパーがあればだけど。


「分かった。参加させていただこう」

「おぉ! それは良かった。あなたが協力してくれるのならばすぐに終わりますでしょう」


 …………ごめん、マジで何の話?



 まぁ、アレです。

 ボランティアで湖の清掃に駆り出されたとです。

 今思い返してみると、俺は平静じゃなかったね。

 初めてモンスターを打ち倒して浮かれてたわ。

 頭の中がパラダイスだったわ。

 おかげでライダー技の習得を目指すという大きな目標を新たに作ることが出来たんだけど。


 なんと! この清掃作業、無償なんです奥様!

 しかもしかも! 今なら更に格闘技の実技指導が付くんです!

 これが御値段たったのゼロ円!


 えぇ、えぇ、俺の戦いを村長宅から見ていたらしく、エルカ族より弱いスケルトンが――世間一般のスケルトンの弱さに驚愕した――何故そんなにも強いのかと聞かれ、鼻高々に格闘技の高説を垂れ、あれよあれよと言う間に指導をすることになったのです。


 これが2コ目の悪いこと。


 おぉ、俺の修行時間よ!!




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