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最強の戦士ここにあり  作者: 田仲 真尋
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レガリアを奪い取れ!~前編~

私がレガリアの都ブリックに到着したのは、もう闇も深まった、深夜であった。

「しまった。途中、道に迷ってしまったおかげで、こんな時間になってしまった。どうしようか……。」と、私が途方に暮れていると、前方から数人の人影が歩いてきた。


「おっ!兄ちゃん。こんな真夜中に何やってんだ?こんなとこに一人でいると、悪いお兄さん達に絡まれるぞ。ヒヒヒッ。」


寄ってきた五人組は……チンピラだ。

「いや、現に今、絡まれているのではないか。もしかして、これは俗にいう『カツアゲ』ではないのか?」

私は、これまでにカツアゲされるという経験を、したことがない。

私は、まるで初めて魔法が使えた、あの日のようにドキドキしていた。

「や、やはりジャンプとか、させられるのだろうか?」と、私は期待半分、不安半分の混沌とした精神状態である。


「おう、兄ちゃん。俺たちは、レガリア治安部隊だ。この国の平和を日々、守ってるんだ。そんな頑張ってる俺らに、少しばかりの寄付をしてくれよ。なあ、皆。」


「その悪党面で治安部隊って……。」と、私が呆れていると、

「止めとけ。お前らが、どうこうできる相手じゃないよ。」と、聞き慣れた声がした。


「よう。遅かったな。」

――クレアである。

「こいつ、国王の次はチンピラたちの親玉か?堕ちたものだ。」と、私は軽蔑した目でクレアを見た。


「姉さん。この人と知り合いで?」

「ああ。共に魔王退治した仲だ。」

その言葉にチンピラたちは、驚きを隠せない。

「すっげえ!じゃあ英雄じゃないですか。あの、お名前は?」

チンピラの質問に、

「名前はないんだ。」と、クレアは笑いながら答えた。

「いや、あるわ!」と、突っ込みたいところだ。

「名もなき英雄か。かっこいい!兄貴と呼ばせてください。」

「断る!」と、声を大にして言いたい。

「この忙しい時に、チンピラ相手に遊んでなどおれるか。」

私は、心の声を内に秘めて、クレアを見た。


「ハハハ。まあ、こいつらの事は気にするな。それより、お互いの情報交換をしよう。ここでは、なんだから、ついてきてくれ。」

私はクレアたちの後に続いて、行った。


連れてこられたのは、なかなか立派な豪邸である。

「どうだ、いい家だろ。これは私が王の時に、こっそりと建てさせた家なんだ。まあ、別荘みたいなもんだ。今となっては、こいつらの、たまり場になってしまっているけどな。」

私は思った。ろくでもない、と。


その後、私とクレアは情報を交換した。


「そうか南連は大丈夫だったか、ご苦労さん。しかし、やはりキリエスが絡んでいやがったか。すると、グリフォンブルーは無関係か。まあ、どちらにせよ厄介ではあるな。」


「グ、グリフォンブルー!」

突然、声を上げたのはクレアの舎弟……いや、クレアの連れの一人で、あった。


「何だよ急に?」


「いや、クレア姉さん。こいつ、この間までマゼイル山脈の住人、ハーゲン・ライブに属してたんすけど、仲間を全てグリフォンブルーにやられちまったんですよ。」


「ハーゲン・ライブ……確か、アトラスの土地の先住民で、アトラスに追い出され、山に住みついたという民族。」と、私は前にフォンダンに聞いたことを思い出した。


「あいつらは悪魔だ。三万近くいた仲間を、たった二千の兵で打ち破りやがった。まあ、大半は恐れをなして逃げちまったんだけど……。とにかく奴等はやばい、関わらないのが一番だ。」


「でも何故、グリフォンブルーがハーゲン・ライブを?」

クレアの質問は、最もだ。


「詳しくは知らないが、アトラスの要請に応えたって聞きましたぜ。そいで見返りに人探しをアトラスに依頼したとか。」


「人探し!?そんなんで戦争起こしちまうのか、グリフォンブルーっていうのは?」


「なんにせよ、とんでもない奴等ですぜ、姉さん。」


この時、私は何故か、ホッとしていた。

グリフォンブルーが、今回の騒動に関与していないということに、だ。

それに今は、他国の事よりもレガリアをどうするか、である。


「ますは、この国の頭を、すげ替えるのが先決だな。」と、クレアは言った。

確かに、それは重要である。

だが、どうやって?

それに一体、誰が新しい王に?

一国の王は替えるというのは、着ている服を取り替えるのとは、訳が違う。

簡単な事では、ないはずだ。


「まず結論から――次の王は、アドだ。」

聞いたこともない名である。

そもそも、レガリアで知っているといえば、現王家であり独裁者のメイスしか知らない。


「アドは昔から、この地に住む貴族なんだ――しかも公爵だ。身分的には問題なし。頭はきれるし、人望もある。……ただ極端な小心者だけどな。」


まあ、小心者くらいの方が、よい場合もある。

人望も、あるのであれば、うってつけの人材だろう。


「そしてもう一人、無視できない男がいる――グリズリー元帥だ。この男は武勇に優れている。だが戦いが好きな奴でな、年がら年中、戦のことばかり考えている危険な奴だ。」


「……欠陥人間ばかりだな。」と、私は不安になってゆく。


「これから私たちが、やることは三つ。まず、アドを王にするため、彼を説得すること。二つ目、グリズリーと闘い、彼を納得させること。グリズリーは自分よりも腕の立つ者の言うことなら聞くはずだ――頼んだぞ。」

そう言ってクレアは、私を見た。


「本当に、そんなことで納得するのだろうか?」と、私は疑ったが、とりあえず頷いた。


「そして、最後。メイスからレガリアを奪い取る。以上!」


私たちはレガリアをキリエスから切り離すため。

そしてギアン大陸の平和のため、行動を開始したので、あった。





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