本当のお仕事!
新しい…メニュー…
一週間は考えたがまるで浮かばない。
街をぐるぐる歩いていると、ミナトは後ろから声をかけられた。振り返るとそこにはひとりの男が立っていた。スラリとした体系に黒髪。切れ長の目には眼鏡をしている。
「マサユキさん!」
そう呼ばれた男性はニコリと微笑む。
「調子はどうかな。彼のこと、笑顔にできたかい?」
「あっ…ええと、まだ全然…いっつも眉間にキューってしわがよってます!!」
マサユキはけらけらと笑い、真面目な顔をして言った。
「いいかいミナト、君は彼を笑顔にするために送られた、サンサリアカンパニーのアンドロイド。大切な試作品の1号だ。残された期間はそんなに長くない。君が失敗したら、他の試作品も君もスクラップにされる。頑張って。」
アンドロイド…という響きに心が一瞬痛む。なぜだろう。
「…わかっています。ミナト、精一杯頑張ります!あっ…あの、今カフェでお客さんにお出しする新メニュー考えるんですけど…いい案が浮かばなくて…」
マサユキはしばらく考え込む。
「夏だからねぇ…味は大事だけど、見た目が綺麗だと頼みやすいよね。ミナトが考える涼しい色を取り入れたら、見た目だけなら涼しくなると思うんだけど。」
涼しい色…夏らしい涼しい色…
「なんだか浮かんできた気がします!マサユキさんありがとうございます!いってきます!!」
満面の笑みを浮かべたミナトはマサユキに一礼して駆け出した。その後ろ姿をマサユキは見つめていた。
「ミナト…彼を笑顔にするのはなかなか難しいかもしれないよ。」
そう呟いて。