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禁断の腹黒

作者: チャラコム

ねえ・・・マサ・・・あの時ね、私「言わなきゃ!」って思ったんだ。

「愛してる。ずっと待ってるよ。」



聞き慣れたメール着信。きっと佑治だ。佑治とはもう3年も付き合ってる。結婚を考えた事、無いって言えば嘘になるけど…やっぱりこの人じゃないなって、どっかで思う自分がいるんだ。

一日に数回メールして、何週間かに一回、どこに行くわけでもなく会って。うざったいって思うんだけど、別れるってまで思えないんだ。私ズルいね。今思えばそんな毎日に刺激が欲しかったのかもしれないね。


ある時友達の紹介で、夜アルバイトをする事になった。そこでね、マサと出会ったんだ。

第一印象はそーだな…変わった人だなって思った。見た目はちょっとチャラチャラしてるし、年下だったし、全然私のタイプじゃなかったんだけど、何故か少し楽しかったから。あの時マサはどんな風に思ってたのかな?

時間を見つけては色んな話をしたよね。でも奥さんいるのはちょっとビックリしたかな。私も佑治がいるし、そんなに気にしなかったけど、ビックリしたって事はあの時はもう、少し気になってたかも知れないよね。

奥さんと上手く行ってない事、別居してる事、人をちゃんと好きになった事が無い事、なんだか私と似てるなぁって思ったよ。マサもそんな風に思ったのかな?仲良くなるまで、そんなに時間はかからなかった。


初デートに誘われた時、正直嬉しかったよ。そんなそぶり絶対見せなかったけど。私はマサより年上だし、恥ずかしかったし、でもこういう事ってちゃんと伝えておいた方がいいんだね。ちょっと今後悔してるよ。いつも少しだけだけど、メイクと服も気合い入れてたんだよ?

二人でボーリングに行ったんだよね。二人ともだんだん本気になってさ、1回だけ私が勝った時、本当に悔しそうにするから、私思わず笑っちゃったよ。そんなマサが可愛いなって思ったんだ。その後カラオケに行ったんだよね。アニメソングとか歌う私を見てマサは笑ってた。一通り楽しんで、もう帰らなきゃなって思ってたら、キスしてくれたね。ビックリしたけど、嬉しかったんだけどちょっと不安になった。帰り際に「今度家で飲もうよ。」って。やっぱりこの人チャラチャラしてるし、私の事遊び相手くらいにしか思ってないのかなって…

家に帰ってからその不安が大きくなって、なんだかモヤモヤしちゃって、すぐに早紀ちゃんに電話した。


早紀ちゃんは私のお姉ちゃんみたいな人。言葉はすっごくキツイけど、色んな相談乗ってくれたり言えない事も言えたりする。マサの事話すと案の定怒られた。早紀ちゃん自身、不倫の経験もあるしきっと良くない結末になるって…私もそんな気がしてたけど、もう次のデートを楽しみにしてる自分がいて…でも早紀ちゃんの言う通り、本気になるのは辞めておこうって思ったんだ。マサはただの遊び相手なんだって言い聞かせた。


次の土曜日、マサの部屋で飲む事になった。早紀ちゃんには怒られたけど、やっぱりマサといると楽しい。不思議な魅力のある人。マサをもっと知りたい。マサに触れたい、触れられたい。夜の闇が私たちの背中を押してくれた気がした。少しの沈黙の後、マサが優しくキスをしてそのまま二人で朝を迎えた。本当なら、私は幸せを感じるんだろうけど、目覚めた私が感じたのは恐怖にも似た不安だったんだ。これでこの人と会えなくなってしまうのかな?佑治に悪い事しちゃったな…色んな想いが込み上げて来て…帰り支度をしているとマサが「もう終わりとか思ってる?」って。私、心の中を覗かれたみたいで精一杯の作り笑いで「うん。」ってだけ頷いて、飛び出すように部屋を出た。早紀ちゃん助けてって思っちゃったよ。



お昼早紀ちゃんと会うことになった。早紀ちゃんすごいな。私の顔見るなり怒ってた。何があったかお見通しで怒られちゃったよ。早紀ちゃんの友達のヤスって人も一緒にいたんだけど、ヤスも早紀ちゃんとほとんど同じ考えみたい。ヤスも見た目はマサよりチャラチャラしてるし、同じ男の人の意見だし…やっぱりこのまま会えないんだなぁって…

3人でご飯食べに行ったんだけど、笑っても笑ってもやっぱり不安は不安のままだったな。早紀ちゃんの部屋で遅くまで話込んで早紀ちゃんが寝たあともヤスと話してた。ヤスに「ちゃんと愛情表現はしてる?」って聞かれて私気が付いた。好きって言葉、自分からちゃんと言った事ない。相手から言われてそれに返す事はあっても自分から言った事なんてなかった。そうだよね。私にも佑治がいるんだもん。きっとマサも同じように思ってるはずなんだ。でも、私言えない。恥ずかしいって思うのはもちろん、言って傷つきたくない。だから私は別の方法で愛情表現をする事にしたんだ。


毎日マサの部屋に通った。佑治には少し後ろめたい気持ちはあったけど、決定的な終わりが来るまで、私はマサと一緒にいたかったんだ。1秒でも長く、マサとの思い出が欲しかったんだ。合える時はなんでもないような事で笑いあったり、愛し合ったり、会えない時は電話やメールでマサを近くに感じた。いつも好きって言うチャンスはあった。でもやっぱり言えない。言えなくてもこの幸せが続くならそれで良かったんだ。



ある朝、いつもと雰囲気の違う電話がマサからかかって来た。「今日家に来て。」って。変だなって思ったけど、分かったとだけ言って電話を切ったんだ。不安。ただただ不安で…その後また少ししてからもう一度マサから電話があった。


「ごめん。嫁にばれた。」


幸せな日々は突然壊れてしまう。今まで生きてきて私それを知ってたはずなのに。もう頭が真っ白だよ。会えなくなるの?さよならの電話なの?助けて。早紀ちゃん助けてよ。

奥さんもカンカンみたいで私に慰謝料を求めて来るみたい。もうどうしていいのか分かんなくなって。


夜早紀ちゃんの家に行ったらヤスも来てくれてた。ご飯も食べられそうになかったけど、早紀ちゃんに怒られて無理やり喉に押し込んだよ。ヤスにも現状を報告して、これからの予想と行動を早紀ちゃんに諭された。それでも私が浮かない顔するもんだから、早紀ちゃんとヤスがマサに会いに行ってくれることになった。早紀ちゃんはやっぱり頼りになるな。私にも早紀ちゃんのような強さがあれば良かったね。


1時間くらいして早紀ちゃん達が帰って来た。現状として私が慰謝料を払うような事にはならないって。でも今後この関係を続けて行くのは危ないから、その心積もりはするように。マサは離婚の話はもちろん、私に被害がいかない事を最優先するって話してた事。そして今夜、おおよその話はつけてくるから明日連絡する。そう説明された。安心したのかな…ホッとしたのは確かなんだけど胸のモヤモヤは取れなくって…きっと私、慰謝料とか、彼の離婚なんてどうでも良かったんだ。彼と会えないのが一番辛い事って思ってたんだと思う。何度も何度も、早紀ちゃんとヤスに「不安な事ない?」って聞かれたけど、早紀ちゃんもきっとそれを分かってくれてたんだろうな。早紀ちゃん、ヤス、本当にありがとうね。


しばらくバイト休むことにして、早紀ちゃんの指示通りに着信やメールを拒否設定にして、一切の連絡を経った。マサも携帯を奥さんに取られたままだし、連絡は今日、早紀ちゃんの携帯にかかってくる手はずになってる。仕事も手につかないし、一人になると涙が溢れてくる。たった1ヶ月くらいの恋愛だったのに、私、一生分の恋愛をした気分だよ。


マサの背の高い所が好き。

私の些細な失敗で大笑いする可愛い所が好き。

私がチャラチャラしてるって言ったら気にしてイメチェンしようとするところが好き。

毎日電話で話す声が好き。

人をちゃんと好きになった事が無いって言ってたのに、好きって言ってくれるところが好き。


もう会えないって分かってからも、好きって気持ちは溢れ続けて…それでもやっぱり私言えなかったんだ。会えなくなってから気がつくなんてホントダメだね。ねぇ…マサ…いつもみたいに笑ってよ。私泣いてるよ?あなたの出番だよ。どんなに後悔が押し寄せても、過ぎた時間は戻らない。もうダメだよ…


夜、また早紀ちゃんの家でみんなで集まった。マサの電話を待つために。最後の電話になるかもしれない。ヤスはいつも通りおどけてたけど、あんまり笑えなかった。

11時。早紀ちゃんの携帯が鳴り響いた。早紀ちゃんが神妙な顔で報告を受ける。それから私に代わってくれた。大体の報告はこうだった。私に被害が及ばないように今回は一度奥さんのところに戻るって。私覚悟はしてたんだけど、いつもと変わらないマサの声を聞いて涙が溢れそうになった。早紀ちゃんに携帯を借りて外に出ることにしたんだ。


「本当ごめんな。」私はなんて言っていいか分かんなくて、すこし黙ってしまった。

4月には外は寒くって、でも星が綺麗で。電話のむこうには大好きなマサがいるのに…最後の夜。

私は涙が止まんなくて。話すと泣いてるのがマサにバレちゃうし…少し黙ってしまった。


「泣くなよ」「泣いてなんかないよ。」

「俺、ちゃんと人好きになった事なかったけど、お前といて色々と知ることができたよ。」

「………」

「ドラマみたいにかっこいい事は言えないけどさ…こんな事言っちゃダメなんだろうけどさ…愛してる。」


なんだか本当に最後なんだって思っちゃって、嬉しくって悲しくって…少しの沈黙の後にいつかみたいにまた、夜が背中を押してくれた。


「マサ…愛してるよ。」

「最後の日にこんな事言うなんて、お前ずるいよ。」


ホントだね。私、すっごくズルイね。でもね、生まれて初めて、心からの愛してるを言えたんだ。全部、全部。マサのおかげだよ。本当ありがとね。


「いつの日かちゃんとケジメをつけたら、きっとお前を迎えに行くから。その時、お前に好きな人がいたとしても、俺は絶対振り向かせるから。」


マサだってズルイよ。そんな事言われたって、好きな人なんて出来るわけないじゃない。愛してるって言葉、「録音しとけば良かった」って言ってたけど残念。録音なんてさせないよ。


だって…


次に会える日に直接マサに言うんだから。今度こそ絶対に、私は想いを言葉にする。


「ずっと…マサを待ってるよ。」


最後の夜は終わった。でも私の恋は終わらない。




マサ…今日も私は待ってるよ。

眠って起きる度にあなたは近くなる。また会える日を心待ちにして。



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