第五話・後 進む朝
Tenpといいます。普段はイラストを書いたりアニメを見たりしているのですが、小説を書くのはとても楽しいと友人から聞いたので始めました。毎週水曜日ほどに上げますので、確認していただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
この回は後編です。前編を読んでいない方は前編から読むことをおすすめします。きりの良さも大事ですからね。(≧∇≦)/イエイ
翌朝。
協会の建物の前。
朝の冷たい空気の中で、恒一はリンと合流していた。
「昨日の報告、早めに済ませましょうか」
「そうだな」
そう言って、入口へ向かおうとした時。
壁際に、見覚えのあるフードが見えた。
「……ユウ?」
名前を呼ぶと、少女はびくっと肩を揺らす。
けれど、逃げなかった。
「……おはよう……」
小さな声。
恒一は、なぜか少しだけ安心している自分に気づく。
(……来たんだ)
三人は、自然と並ぶ形になる。
まだ、何も始まっていない。
でも――
一人だけ、のはずだった少女は、
ちゃんとここまで来ていた。
協会の建物は、いつも通りの時間に目を覚ましていた。
依頼掲示板の前で言い合う冒険者。
受付嬢の元気な挨拶。
紙とインクの匂い。
――表向きは、何も変わらない。
「……人、多い……」
協会の入口で、ユウが小さく呟いた。
フードは深め。視線は低め。
「朝は特に多いな」
恒一が答える。
リンはというと、いつもより少しそわそわしていた。
(昨日の今日で、あの人が普通にここに立ってるの、やっぱり変な感じです……)
三人で足を踏み入れた瞬間。
空気が、ほんのわずかに――揺れた。
「……あれ?」
近くにいた冒険者の一人が、首を傾げる。
「今、なんか……」
別の男が眉をひそめる。
「気のせいだろ」
だが、受付側は違った。
カウンターの奥。
書類を整理していた女性職員が、ぴたりと手を止める。
「……来てる?」
隣の職員が、顔を引きつらせた。
「まさか……いや、名前は出さない約束のはず……」
二人の視線が、自然と入口に向く。
フードを被っているがオーラがすさまじい小柄な少女。
その半歩前を歩くD級冒険者。
そして、その隣の少女。
――確認が、いらなかった。
「……久遠さん……」
声は、ほとんど息だった。
受付に近づくと、リンが先に口を開いた。
「おはようございます! 昨日の依頼の報告を……」
「は、はい! 少々お待ちください!」
受付嬢は、やけに早口だった。
視線が、ユウに行きそうになるのを必死に抑えている。
ユウは、気づいている。
気づいているが、何も言わない。
ただ、恒一の少し後ろに立っている。
(……やっぱり、落ち着かない……)
恒一は、周囲の微妙な視線に気づきつつも、深くは考えなかった。
(昨日の戦闘のせい、か?)
その時。
カウンターの奥から、一人の中年職員が出てきた。
協会でも、それなりに上の立場の人間だ。
「……失礼」
穏やかな声。だが、額にはうっすら汗。
視線は――ユウだけを、正確に捉えていた。
「久遠ユウ様」
「……」
ユウの肩が、ぴくりと動く。
「申し訳ありません、名前は……」
「……大丈夫……」
ユウが、先に遮った。
「……昨日の……話でしょ……」
恒一は一瞬、考える
(昨日の?なにか問題でも...いや、問題大あり、か)
中年職員は、ほっとしたように息を吐いた。
「……良かったです。ご存知のようですね、ありがとうございます」
そして、恒一に向く。
「中野恒一さん。昨日の依頼ですが……」
「はい」
「依頼内容以上の危険が確認されました。
本来であれば、危険手当、階級検査になるところですが……」
一拍。
「今回は、すみませんが免除とします」
リンが目を見開く。
「え?」
「……加えて」
職員は、声を落とした。
「あなたの戦闘ログ、一部ですが……記録に残っています」
恒一の胸が、少しだけざわつく。
「魔法行使、未登録。
威力測定、不能」
職員は、言葉を選ぶように続けた。
「……近いうちに、別室でお話を」
「えっ」
恒一が思わず声を上げる。
その横で、ユウが小さく俯いた。
(……やっぱり……目立つ……)
「ただし」
職員は、ユウの方を一瞬だけ見てから、視線を逸らす。
「強制ではありません」
恒一は、その一言に違和感を覚えた。
(……強制、じゃない?)
「今日は、ここまでで結構です」
職員は深く一礼し、奥へ戻っていった。
残された三人。
沈黙。
リンが、恐る恐る言う。
「……なんか、すごいことになってません?」
「たぶん……なってる」
恒一は苦笑した。
ユウは、しばらく黙っていたが、ぽつりと言った。
「……ごめん……私、いると……面倒……」
恒一は、すぐに首を振る。
「違う」
ユウが顔を上げる。
「それだけで、面倒になるなら、それはこの世界の方が悪い」
ユウは、きょとんとした顔で恒一を見る。
そして、ほんの少しだけ――口元が緩んだ。
「……変な、人……」
それは、悪い意味じゃなかった。
それを聞いて、恒一も微笑む。
「そうかもな」
リンも微笑んでいる。
「...〜〜〜く...」
ユウが呟いた。恒一は、ん?と聞き返す。
「...やっぱり......着いてく......」
ユウの声は、相変わらず小さかった。
消えそうで、でも確かに聞こえる。
恒一は、一瞬だけ言葉を失う。
驚き、というより――確信に近かった。
「……そっか」
それだけ言って、頷く。
大げさな言葉も、理由を聞くこともしない。
それが、ユウにとって一番楽だと分かっていたからだ。
リンが、ほっとしたように息を吐く。
「じゃあ、一緒ですね」
ユウは、少しだけ身をすくめてから、小さく頷いた。
「……うん……」
三人は、並んで歩き出す。
今度は、誰も半歩後ろに下がらない。
協会の中は、相変わらず慌ただしい。
依頼の張り替え。
報告の呼び声。
いつもと同じ朝。
けれど――
恒一は、足元の影が三つ並んでいるのを見て、思った。
(……ああ)
昨日は、偶然だった。
今日のこれは、選ばれたものだ。
ユウは、まだ何も約束していない。
パーティーでも、仲間でもない。
それでも。
一人で背負うはずだった最強の勇者は、
この朝、自分の意思で「誰かの隣」を選んだ。
3人は協会を後にした...
感想などありましたら、お願い致します。次回もよろしくお願いいたします。
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