第2章 少年兵とキムンカムイ
森に子熊と二人で生き残る…過酷な生活をする白艇ヒバナ(はくていヒバナ)はどんな過激な運命をたどるのだろうか…
あれから2日ほどたった。基地に向かって日々歩く。
夜を一日寝ずに過ごしたせいでヒバナに疲れが溜まっていた。
相変わらず救助は来ないままである。先輩はこれを見越してこの山に放ったのかもしれない。
そんな事を考えて進んでいると背丈の高い草が揺れ、生物がいるのがわかった。
一般の人なら激しく動揺するだろう。ヒバナは冷静に木刀を構え警戒した。
出てきたのは小さな熊だった。母熊は?とあたりを見渡す。だがそれらしき影もなければ気配もない。そのときヒバナの鼻にほのかに血の匂いが霞んだ。ヒバナは匂いのする方にこぐまを抱えて向かう。銃で心臓を撃たれたようなあと、そしてその後に釘を多く刺されたような跡があった。そういえば1日前に山で銃声のような音が聞こえた。そう。こっちに向かって降りてきたのは仲間がいると思ったからだ。
「これはひどいな…」
その熊は母親だった。残虐だ。これは狩りではない。自分のストレスをぶつけるようなやつだろう。
そのあとヒバナは子熊を顔の前に持ってきて話しかけた。
「ごめんな。俺達人間のせいでお前のお母さん死んだよ…ごめん…こんな俺でいいなら一緒に山を降りて暮らそうな」
そう言うと熊は小さく鳴いて応えた。その後ヒバナは自分の持ってたリュックを前に持ってきて子熊を入れた。こぐまの愛らしさのあまり気を失いそうになった。
ヒバナは我に返り山の下を目指して歩いていった。
険しい道のりが進む。そして子熊がいたこと、親熊がいたということそこから導き出される
恐ろしい展開。それはこの山には熊がいるということ。そういつ襲われるかしれない。
あのとき先輩が言っていた「ヒグマにでも食い殺される」というのはある意味で正しかったのかもしれない。俺はテントを張り寝る準備をしたが寝付くことができなかった。昔からの癖で何かあったとき警戒心が全開になってしまうのだ。
「今日寝なかったら2日間寝てないことになるのか…」
口からそんな言葉が溢れる。
…そういえばこいつの食べ物どうしよう…
そんな事を考える。おそらくまだミルクを飲まねばならない年だろう。だがヒバナは男だし仮に女性だったとしても妊娠してないからミルクは出せない。
眠気に逆らって思考をフル回転させたが数分後ついに気絶するように寝てしまった。
眠りを妨げられた。
テントが激しく揺れて起こされてしまった。
友軍か?寝てたから反応できなかったから揺らして反応を見ようとしていたのか。
…いや違う。これは人じゃない。
ヒバナは直感でそれを認知した。ヒバナはサバイバルナイフと木刀、小銃を装備して戦闘準備をし息を潜めた。影がコチラに来たことを確認しヒバナはカバンに入っていた銃弾を取り出す。これは実弾である。訓練用ではい。子熊も起き警戒している。
…この子を恐れさせてはならない。守らなければならない。
ヒバナは本能的に子熊を守る行動にでていた。ヒバナはカバンの中に子熊を入れて、
影に銃口を向ける。
銃声が森に反響し、巨大な影はやはりヒグマだとわかった。
熊が怯んだのを確認し首元にサバイバルナイフを刺し、怯んだところをすかさず銃で心臓を貫いた。初めての殺生はほんの数秒で終わった。ヒバナは熊の血で汚れた自分の手を見つめた。
その場にあった熊の死体の前に立ち随分前に大尉に教えてもらった'’送る'’儀式をやってみることにした。名はイオマンテ。アイヌのくまの送り方だ。ヒバナはそれを簡易的に行った。
熊の死体をヒバナは食べるつもりなど無い。ただここに野ざらしにしておくのも気がしける。
…ヒバナは穴を掘りそこにくまを埋めた。かなりの重労働であった。明け方となりやっとくまを埋め終わり大きな石を立てそこに文字を掘った。
「強く気高きキムンカムイよどうか安らかに眠れ」
俺はそこに花を置きその場を去ることにした。
あれから2日、ヒバナ達は麓にあった廃村についた。
例の子熊は相変わらず寝ているな。
死んでないよな?
ヒバナはずっと寝ている子熊を心配しながらも散策を続けた。
そのときだった。重いエンジン音が廃村中に響き渡る。
その方面を見ると日本軍のトラックだった。
ヒバナは必死で叫びなんとか救助してもらえた。もちろん子熊もだ。
良かった…。ヒバナは胸を無溜め子熊を抱いた。
…どうやら大尉が全てを行ったらしい。あの卑劣な先輩は解雇処分になったそうだ。
やせ細った俺と熊を衛生兵が治療する。治療と言っても栄養を供給するだけのまぁ簡易的なものだが子熊は元気になったのか治療が終わると部屋中を走り回っていた。
俺は熊に接触したこともあってエキノコックス症の検査を受けたり鳥インフルエンザ、狂犬病
の検査も受けた。結果はすべて陰性。子熊とヒバナは少しの間一つの部屋に引きこもっていた。その間に子熊の仲はより深まった。
その時悩んだのは名前だった。ヒバナ初めて熊を撃ったときに使った銃がT2 MK5ライフル、
確かレイダーなんとかかんちゃらだ。
名前はレイダーにしよう。ヒバナは脳内に名前を浮かべ早速その名前で読んだ。
「レイダー!こっちおいで」
ヒバナが指示するとコチラに向かってくる。その姿はとても愛おしいものだった。
ヒバナがレイダーと戯れていると大尉が部屋に入ってきた。俺は姿勢を正す。
そして命令が言い渡される
…独ソ戦の兵士として出兵することになったのだ。
戦争は人をおかしくする。彼は生き残れるのだろうか…




