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✧ 誘いへの、答え ✧

「……学院、かぁ……」


 ぽつり、呟く。


 ルセルの父上から学院のお誘いを受けてから、早1週間が過ぎた。


 今も、俺はまだ決めきれないでいる。


 ずっと考えているのに疲れて来て、俺ははぁ、と溜め息を吐く。


「——あれ、リシェ?」

「、ルセル」


 突然、ルセルが声をかけてきて、俺はぱちりと一度瞬きをした。


「どうしたの、そんな『悩んでます』って顔して」

「……そんな顔してる?」

「してる」


 ……どんな顔だよ。


 ルセルの父上は、俺の魔法と魔眼は高く評価されるだろうと言っていた。


 本当に、そうなのだろうか。


 学院では、俺の魔法と魔眼が恐れられたりはしないのだろうか。


 ……ルセルから、怖がられたり。しない、だろうか。


 目の前のルセルに安心したのか、自分でも無意識に言葉がぽろりと零れ落ちた。


「……ルセルの父上に、学院に行かないかって誘われてるんだよ。俺の魔法と魔眼は、高く評価されるだろうからって」

「へっ、お父様が⁉ もー、なんで私も一緒にその話に誘ってくれないかなー」


 ぷんすか怒っているルセルに、俺はくすりと僅かな笑みを漏らす。


 しかし、すぐに笑みを抑えた。


「……ルセルは、さ……俺と一緒に、学院行きたい?」

「え、うん」


 即答だった。


 ……そんな速いとは思わなかった。


「そりゃ一緒に行きたいに決まってるじゃん。私が村から連れ出したんだからさ、もうこの際ずっと一緒にいようよ。リシェがいない時間をずーっと過ごす学院なんか、つまんなすぎるでしょ。リシェも、私がいなかったらつまんないし、寂しいでしょ?」


 ……ああ、やっぱり。


 俺はもう、


 一人には、戻れない。


「——そうだね。一緒にいよう」


 そう言うと、ルセルはぱっと笑った。




「あの、ルセルの父上」

「んむ……その呼び方は堅苦しいな。フェイルでよいぞ」

「え、……フェイル、様……」


 満足そうにルセルの父上……いや、フェイル様が頷く。


 俺は少し戸惑いながらも、次の言葉を紡いだ。


「……学院の、件ですが」


 ぴりっ、とフェイル様を取り巻く空気が変わって、俺もそれに触発され背筋を伸ばす。


 ……さすが、シーベルト家の御当主様。


「行くことにしました」

「……お」


 俺がそう言うと、その御当主様は『お』の形に口を開き、間抜けな顔をした。


 ……御当主様がこんな顔していいのかな。


「マジか」

「え、はい、まじです」

「マジなのか」

「まじ、です……」

「マジで?」


 終始ぽかんとしていたフェイル様だったが、突然俺の肩をがしっと掴む。


 そして、うおおおおおと俺の肩を揺さぶり始めた。


 ……やばいこれやばい。強すぎて俺の頭から危険な音が聞こえそう。


 間一髪すぐに揺さぶりは終わって、俺はふぅと息を吐いた。


 ……あっぶな。


「受けてくれるのか……! 感謝するぞ!」

「え、あ、はい……」


 そんなに俺が誘い受けたの驚くことかな。なんかちょっと傷つくんだけど。


「では、ルセリナを守ってくれるのだな⁉」

「……ん? あ、ええ、まあ……そりゃ勿論」


 建前従者だし。従者じゃなくても守るし。


「では、よろしく頼むぞ!」


 満面の笑みで言われ、俺はそれに気圧されながらも頷いた。


 ……なんか嫌な予感するんだけど気のせいかな気のせいであれ。

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