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ナナナナ  作者: 鍋乃結衣
13/14

第十二話 鬼

 映画が終わり、俺は修也と別れて帰路についた。

 人気のない住宅街。時刻は20時を回り、日は既に暮れている。明かりは少ない。

 日の光はなくても、ムシムシとした湿気が体に纏わりつき、汗が止まらない。

 後少しで受験生活が始まる。

 こうして映画も見れなくなる。

 点々と星が散らばった夜空を見上げた。

 那々《なな》。

 一個下の後輩で、修也を経由して彼女とは知り合った。

 よく会話したり、買い物に行ったりはするが、二人であそびにいったことはない。

 修也とはよく遊んでいるようだが。

 心臓がキュッとなる。

 勉強が本格化する前に、告白しよう。

 いや、受験期間中のカップルは別れやすいと聞く。

 なら受験が終わった後。でもそれまでに、修也と付き合いだすかもしれない。

 いきなり告白するより、まずはデートだろうか。


 …………デート。


 シャツが汗で、皮膚に張りついていることに気づき、胸元を指で引っ張った。


「…………ん?」


 足を止める。

 月のぼんやりとした明かりの下に、誰かがいる。

 住宅の垣根に寄りかかり、俺には背を向けている。

 そこそこ距離はあるはずだが、荒い息の音がはっきりと聞こえる。

 体調が悪いのか。

 ふと、地面に目が移った。赤いものが広がっている。

 鉄のようなにおい。

 俺は息をのんだ。

 血。


「大丈夫ですか!」


 慌てて駆け寄り、携帯電話を取り出した。


「しっかりしてください。今、救急車を」

 

 俺の言葉を、動物じみた絶叫が遮った。


「来るな」


 威嚇され、反射的に身を引く。

 近くで見ると、中年の男性だと分かる。

 丸く剃った頭に、少し垂れた目元。

 黒のタンクトップ。その腹部から、赤黒い液体が垂れている。

 それを見て、今になって恐怖が身を貫いた。

 噂の通り魔の仕業か。


 まさか、近くにいるのか。


 逃げようと足を踏み出した直後、顔面に激痛が走った。

 少しして、地面に組み伏せられたのだと察した。

 頭上で声がする。


「霊能狩りの糞どもが。近づいたら、こいつを殺す」


 首元に冷たい感触。

 ナイフ。

 身が硬直した。


「近づくな、そのまま、どこかに行け、二度と、く………る………」


 背中に重いものがのしかかった。

 ナイフが目の前に落ちる。

 唖然としていると、足音が近づいてきた。

 遠くで、パトカーのサイレンが聞こえる。






「おれがひとりになるためにさゆりはじゃましていなかったんこい、っさらをひと」


 私は伊木司と一定の間隔を保ちながら、拳銃を構えていた。

 来た道には、怪対の捜査員が倒れている。

 伊木司。やはり、鬼になっていた。

 四足歩行。

 背中から無数に手が生え、ゆらゆら揺れている。

 顔はかろうじて人の形を留めているが、いたる所から真っ黒な角が突き出ている。

 ここまで醜く変貌するとは、気が狂った位では済まないほどの、感情の爆発があったのだろう。


「A班、誰かいるか」


 箸庭さんが言った。応答はない。


「B班、来た道を塞げ。森の中には逃げさせるな」


 箸庭さんは伊木司との距離をじりじりと詰めている。

 耳障りで、意味不明なうわ言が耳に纏わりつく。


「ぽっときゃすはゆーすをえらびません。だってそれが、なななななななななななななななななななな」



遅くなりました。すいません。

次回の更新は、3/18の15時になりま。

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