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憐憫の天秤

作者: 豆。

 男と、犬がいた。男と犬は、机を隔てており、前者は椅子に座り、後者は床に寝そべっていた。

机の上には、天秤と、箱に入った分銅。男は犬に語りかけるように話す。

「犬よ。お前はこの秤をどう思う。重りの載らぬ、平行なこの秤を」

 犬は寝そべったまま、見向きもしない。男は続けた。

「犬よ。どちらかの秤に傾かぬその姿を、平等と取るか。それともその姿に憐憫を抱くか」

 男は反応を見る前に、箱を開け分銅を一つ摘み、片方の受け皿へ載せた。秤はぐらりと傾く。男はもう一つ、先より少し大きいそれを取り出し、反対の受け皿に載せた。無論、大きい重しの方へと傾いた。

「犬よ。これが本来あるべき姿だ。重量のある重りは、軽量のそれよりも重く、それゆえに秤は揺らぐ。秤は、かくあるべきなのだ」

 犬はなおも寝そべり、男の話に耳を傾ける事はしない。男はその様子に憤慨する事も、落胆する事もなく、ただ淡々と自己を述べていく。

「犬よ。これが見えるか。お前の好む餌だ。膏滴り、瑞々しく、張りのある肉だ」

 犬は匂いを嗅ぎ付けたのか、即座に起き上がり、男の元へ駆けていく。そうして、肉をせがむ様に縋り付いた。

「犬よ。お前の好むこの肉を、この秤の上に載せよう。後はお前の好きにするがいい」

 そう言って男は上がってしまった受け皿に、肉を載せた。秤は一時的に平行になる。けれども、肉を取ろうと躍起になる犬が飛び掛かり、秤は倒れる。机に重りが散乱する。秤も倒れたが、平らだった。

「犬よ。かくも哀れな秤を倒した、哀れな犬よ。お前は欲のまま生きる。それ自体に何の悪もない。あるとすれば、秤の方にだ。重りに差があった事と、おれがその上に肉を載せた事だろう」

 犬は肉に夢中で、男に構おうとしない。

「犬よ。おれは重りが問題だと言った。では、重りに差があるのは何故だと思う」

 がたがたと、机の上で肉を咀嚼する犬。その揺れで分銅入りの箱は倒れ、様々な分銅が転がる。男はそれを幾つか手にし、元通りにした秤の上の、少ない重りの方へ載せた。軽い重りが幾つか載ったことで、均整が取れ、秤は平行になる。

「おれが重りを足さないからだ。軽い重りは元来重い重りより軽量だ。それは真理であり、変えようのない事で、おれはそれについて一切の雑言を吐く気はない。何を言っても変わらないからだ。だから、おれは足すのだ。そうして、秤に平穏をもたらす」

「だが、犬よ。お前のした事でも、秤は平行になったな。全ての重りを取り除く。さすれば秤は傾かない。それは重りの重さと同様に、真理だ。変えようのない事象で、さっき言ったとおりおれは口を出さない。だが、犬よ。秤とは本来、重りを載せてこそ役を成す物だ。そして重りも同様。重りも受け皿の上に載せる事でしか意味をなせない。だから犬よ。お前のした事で確かに秤は平行になった、けれども、そのような天秤程、憐憫を誘う物もあるまい」

 男は机の上で未だバタつく犬を眺め、初めて嘆息した。そうして、暫くした後、男は立ち上がり、何処かへ歩いていった。

「犬よ。お前はどうしてそうも哀れなのだ?」

 戻ってきた男は問う。だが犬は、何も聞こうとしない。肉にバタつくばかりである。

「犬よ。お前がそうであるから、世界はこう廻っているのだ」

はい。どうもこんにつわ。豆。と言います。

正直ですね、あらすじにも書きましたが(書きましたか?)、この話、自分でも何が書きたかったか理解していないので、読まれた方の頭に疑問符が浮かぶのは当然の事と思います。

分からないのが当然かと。けして難易度の話をしているのではなく、意味が無い故に分からない、的な。

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