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20XX年 9月×日 23:16


 昨日は何を書こうか悩んでしまった。悩みをスッキリさせたいのにスッキリさせるために悩むという悪循環。悩むということを……考えるということをしたくなくてすぐに寝た。


 ……そう、配信の話だったか。僕は念願の初配信をした。最高同時接続数の16という数字は数年経った今でも覚えている。

 配信を始める前から待機をしてくれた人もいたし、途中で来てくれて、おめでとうと言ってくれた人もいた。

 僕は誰かと話して、誰かに褒めて欲しかったから、ライブ配信をメインにやっていた。


 徐々に配信が軌道に乗ってくると、配信が楽しくなってきて、早く配信のできる夜にならないかと思っていた。

 配信ができなくとも、SNSなどを利用して何をしていたのかの報告なんかをしていたし、おはようと呟けばおはようと返ってきて、おやすみと呟けばおやすみと返ってきた。

 僕はそのことが嬉しくて、おやすみと呟いてもそこから数時間は何か反応が来ないかとワクワクしながら起きていた。


 チャンネルが成長していた頃は、古参と新参の間で何か起こらないかとビクビクしていたが案外何事もなく、暖かい雰囲気で初見さんなんかが迎え入れられていたので、杞憂だったと安堵していたものだった。


 たまにSNSで見かけるコラボ相手にも迷惑をかけるリスナーさんもおらず、配信をしている時が幸せだった。

 弟と比べられることはなかった。もしかすると他のライバーの誰かと比べられていたのかもしれないけれど、それでも僕を選んでくれたという事実が嬉しかった。


 どの配信か覚えてはないけれど、僕の配信のアーカイブについた「楽しそうにやってんなぁ」というコメントがとても嬉しかった。


 配信をする前の、家族と一緒にいたときは何を考えているのか分からない、とか感情が無さそう、とか冷酷だ、とか言われ続けていたので、少し自分の感情について不安を感じていた僕でも楽しそうと伝えることができるのだと分かった。

 自分が人であることを再認識できた。



 よりチャンネルが成長していくとフォローバックした直後に解除をされるなどのちょっとしたことこそ起きたけど、おおよそ他のライバーたちとの良い関係を築けることが出来たし、コラボの誘いなんかも積極的に受けていった。

 恥ずかしくて自分から誘うことは出来なかったけど、徐々に定期的にコラボをするというライバーの友人もできた。


 このころ辺りから、僕の配信をする理由は誰かとお話しして褒めてもらうことではなく、チャンネルを伸ばしていくことになっていった。




 そんなある日だった。

 いつものようにコラボしていた相手とDMでやり取りをしていると、いつもとは違う内容のものがきた。

 いつ、何でコラボをしたいか。これが普段のDMの常であったのだが、その日は別の人も交えてコラボをしないかとの勧めだった。


 特に断る理由もないので、了承のメッセージを送った。

 その別の人というのは、最近ライバーの友人とよく一緒にコラボをしているVの人だった。その人はトーク力も高いので、最近少し新人界隈では伸びている人だった。

 その人との配信は楽しかった。


 いつものメンバーが二人から三人に増え、互いにチャンネルがどうすれば伸びるかなどと話し合うことも増えた。

 新人は心理学なんかにも精通していて、こうすればいいんじゃないか?とか色々なアドバイスをくれた。いつのまにか、僕らの気づかないうちに話の主導権を握られていた。


 ある時、その新人がパタッと何の活動もしなくなった。SNSには休止、休憩期間云々の話もなかった。

 その期間はおよそ一ヶ月ほどだったか、新人と繋がりのある人たちはみんな彼を心配してメッセージなんかを送っていた。

 そのたびに大丈夫だ、少し疲れただけだから、また配信がしたい、との返信が返ってきたので皆少し気を使いつつも少しは安心したようだ。


 その休憩期間中ある噂が立った。「僕と友人と新人の三人が不仲である」というものだ。

 噂が広まったのが大体新人のリスナーだったので気付くのが遅れてしまい、その噂がまるで真実のように広まっていった。

 「僕が新人をいじめている」どのように気持ちを表明しようか考えていると噂はよくわからない方向に行ってしまった。


 僕の配信にも新人のリスナーがきてやめろだのなんだのと騒ぎ立てる事態にまで発展した。

最初は見えないDMなんかでやってきていたが、徐々に配信にも現れ始めた。

 リスナーの民度が高くて、大丈夫?とか気遣ってくれるような人が多かったが、僕自身が信じられなくて、友人にずっと相談に乗ってもらったりもした。

 急に深夜に電話をかけて、何時間も話して、途中で泣いちゃうこともあった。友人には頭が上がらない。


 新人が活動を再開して、活動を絶っていた理由であるとかの説明をしていたし、僕にも謝罪をしてくれた。

 その時はそれでおさまったし、裁判沙汰になることもなかった。

 そこからはまた、三人で楽しく遊ぶことも増えていった。

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