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衝動の天使達 3 ─殲滅戦線─  作者: 水色奈月
Chapter #14
70/164

Part 14-5 Blood Commandment 血の戒律

NDC HQ.-Bld. Chelsea Manhattan NYC, NY 00:27 Jul 14

7月14日00:27 マンハッタン・チェルシー地区NDC本社ビル



 にぶい銀色の防火服姿で調査会社の社長(けん)探偵クライド・オーブリーはエレベーターの壁に片手をついてじっと床を見つめ困惑を静めようとしていた。



 社長室はミサイルが直撃したのか完全に破壊されておりそこにばらばらになった男の遺体があった。なおかつ男が持ち込んだと思われる特殊部隊仕様の限定銃が落ちていた。



 切れ落ち焼けただれた手の平はベースボールキャプを被った5人組みの1人のものだとクライドは推理した。



 男らはマリア・ガーランドを脅すか、殺しに乗り込んだものの別な暗殺者集団が撃ち込んだミサイルの爆発に巻き込まれ即死だったに違いない。



 だが、クライドはあの女社長が死んだとは思っていなかった。



 難を逃れビルのどこかにかくまわれている。それだけの知慮ちりょを持ち合わせているから今の地位に上り詰めたのだろうし、ミサイルが直撃しあわてて外に避難する姿は見なかった。



 何か理由がありこのビルにとどまっているのだ。



 NDC複合企業(コングロマリット)は民間軍事企(PMC)業も営んでいる。ここにいる方が警護が確かだと思っているのか。だがミサイルを撃ち込まれたじゃないか。



 クライドは女社長が遠く離れたフロアでなく、近い階に避難したような気がした。



 また撃ち込まれるとすればどの階でも同じこと。なら近いフロアの方が攻撃した集団が先読みしにくいとクライドは思った。



 クライドはエレベーターの音声AIガイドに命じた。



「170階」



 エレベーターの操作パネルの上のスリットから電子音が聞こえ動き出したのか足に不確かな加速を感じた。それも1階上だけなのですぐに到着しまた電子音が鳴り扉が開いた。



 上のフロアに決めたのは消火の水が漏水するからという理由であの女社長が社長室フロアの直下の階を避けたと仮定した。



 箱が動きを感じさせなくなり開いたドアの先エレベーター・ホールに出てみたクライドはその廊下の造りに困惑した。





 まるで高級ホテルの廊下かと思った。





 カーペットや壁、照明器具の金のかけ方が半端ではないのがうかがい知れる。



「いいや、ドア数が少ない。スイートルームの造りか、高級マンションの廊下みたいだ」



 そう独り言をつぶやき通常はセキュリティ・ロックがかかり、他の者が上がって来れないフロアなのかもしれないとクライドは考えた。



 もしかしたらあの女社長はこのフロアに住んでいるのかもしれない。それなら深夜になってNDCビルから出てこなかったことと辻褄つじつまが合う。



 廊下を歩き始めたクライドはドアが見えてくる度に表札かルーム・ナンバーでもないかよく確かめて歩き回った。だが部屋表示どころか呼び鈴のスイッチすらない。



 4つ目のドアを確かめている時にいきなりドアが開いてクライド・オーブリーは驚いて思わず反対の壁に後退あとずさった。



 ドア・ノブに手をかけ顔を突き出したのはブロンドのポニーテールをしたハイティーンの女の子だった。



 消防士の防火服を着込んだクライドはとっさに開き直った。



「び、ビルにミサイルが撃ち込まれた。君のフロアは火など大丈夫か?」



「うん、ミサイルのことは知ってる。今、うちのセキュリティは大騒ぎだけどこのフロアは大丈夫みたい」



 エメラルドグリーンの瞳を耀かがやかせ女の子が的確に返事をした。だが少女に動揺がみられないことの方がクライドには引っかかった。



 ミサイルを撃ち込まれたんだぞ!



 なんだこの娘の落ち着きぶりは!?



「避難しなくて大丈夫か?」



「うん、ここが1番安全だから」



 そうか──このビルが1番安全なのか。ミサイルを撃ち込まれるビルがか、とクライドは眼をおよがせ動揺をさとられぬように顔を逸らした。



 ふと探偵は目的を思いだしたずねた。



「マリア・ガーランドに今回の火災についてたずねたい。どこにいるのか?」



 消防士の姿を疑われることはない。率直に聞く方が無難だった。



「M・Gは戻っていません。今、遠くにいます」



 クライドはショックを受けた。いつの間にかあの女社長はビルから抜け出していた。張り込んでいた俺が気づかなかったぐらいだ。ベースボールキャプを被った連中も、ミサイルを撃ち込んだ奴らもそれを知らなかったんだ。



「クライドさん、あなた消防士じゃないじゃない」



 いきなり告げられ、クライドは即座に意味をつかめず、なんでバレてしまったと考え、どうやって取りつくろうと目まぐるしく意識を掻き回した。



 適当な言い訳をしようと彼が口を開いた瞬間、ドアが勢いよく閉じられ小娘から拒絶された。



 何がまずかったのだろうかと取り残されたクライドは考え続けドアから離れ他の部屋を当たることにした。数歩足を進めてふと気がついた。





 俺は名前を言ってない!?











 パトカーの情報端末を頼りにNDCビルのあるマンハッタンのチェルシーへ行くと交差点で通りの名を確認する必要もなかった。



 ハンドルを切りかけて見えたのはそのガラス張りの高層ビルが面する通りに大小様々な緊急車輌が駐車しており派手に赤や青のLEDフラッシュ・ライトを点滅させている光景だった。



 通りの入口で交通規制を設けている巡査が彼女のPC(:警察車輌)を眼にして他の地区からの応援だとばかりに誘導ライトを振って通りへ通した。



 目にした瞬間、クラーラ・ヴァルタリは自分を手配する大規模な検問だと勘違いした。だがガラス張りのビルのそばには消防車が大挙して並んでおり検問が目的ではないとクラーラは思った。



 NDCビルで何事かが起きたのだ。



 好都合──とクラーラは目を細めた。



 ポーランドで喰らったルイゾン・バゼーヌから得た記憶によると、パトリシア・クレウーザはNDCビル上階の居住区に住んでいるとのことだった。騒ぎに乗じれば易々(やすやす)とビルに潜入し小娘を探しだすことができる。



 クラーラはビルから40ヤードほど離れた路上に駐車している覆面捜査車輌のような車の真後ろにつけてPCを停めた。



 ドアを開け運転席から下りるとクラーラは辺りの様子を今一度確認した。



 誰とも視線が合わずそれが逆にムカついた。



 人には二種類ある。耳目集めたがるもの、人目を避けるように生きるもの。クラーラは自分はどちらだと時々思って生きてきた。人を率いるのは悪くない。男どもの期待や願望の眼差しに応えてやる。男にできないことを私がやる。



 そう思わぬこともない。



 だが一匹狼が似合ってると認めていた。



 所詮しょせん、他人は足手まといにしかならぬ。このこぶしに握った技術と経験は獣の本能だとクラーラは思った。



 行き交う消防士や司法関係者のかたわらを無言で抜け巨大なビルのエントランスへのスロープを登ってゆく。この緩やかな坂が覇王はおうへの一本道だと知っていても関係ない。



 目眩めくるめく暴力と血の讃歌に酔いしれれば、地位や権力などどうでもよくなった。





 恐怖こそすべてだ。





 まだ届かないなら強くより強く叫ぶ生き方こそすべてだ。



 エントランス出入り口に立つビルのセキュリティは歩いてくる男性警官の姿を見るなり回転ドアを指し示した。



 何もことわりもせず、ブロンズのガラスドアを押し開くとクラーラが包まれたのは深夜であることを忘れ去る光の洪水だった。超複合企業(コングロマリット)NDCの名を知ってはいたが、これが富と権力かと眉根を寄せた。



 だがそんなことなどどうでもよかった。







 パトリシア・クレウーザを喰らい世界1のテレパシストの能力を我が手にするのだ。







 エントランス左の6基並んだエレベーターを待ち磨き込まれたドアが開くとクラーラは中に乗り入れた。そこにYシャツ姿で片腕に折ったスーツとアタッシュ・ケースを下げたホワイトカラーの男が1人遅れて乗り込んできた。



 クラーラはこの深夜の時間帯にNDCの社員が仕事をしていることに驚きホワイトカラーの男と目が合うと男の方から声をかけてきた。



「やっぱりテロ攻撃だったんですね」



 テロ攻撃!? NDCは標的にされているのか? だが欧州のテログループではない。アルカイダかISSなのだろうかとクラーラは幾つかの組織を思い浮かべ情報をつかもうとした。



「まだ公表はできないが、テロ攻撃で間違いない」とクラーラは控え目に肯定してみせた。



「NYも治安が悪くなったものだ。もっと警察官を増やすべきだ」



 そうYシャツ姿の男は本心を語りクラーラに背を向けドアへ向き直った。治安が悪いのとテロ行為は意味合いが違うとクラーラは思った。いくらブルースチール(:NY警察官の俗称)が増えたとて、減るのはギャングスタやマフィアの下っで、テロを行うものは巧妙に警察官の目をかいくぐる。



 たとえば、エレベーターに警察官と乗り合わせているお前────バッチと制服制帽に安心して迂闊うかつにも無防備な背をこの閉じられた空間で向けてしまう。ギャングスタやマフィアの下っ端は警察官の格好をしないが、テロリストは警察官やセキュリティに成りきっているときがある。それが治安と本格的なテロが反比例してない見本だ。





(うつ)け者め────」





 そうクラーラ・ヴァルタリは声に出さずに唇を動かしそのホワイトカラーの男の右肩をいきなりつかみ引き寄せた。顔を横に振り向け背後を確かめようとした驚いた男の頸椎けいついに一気に牙を食い込ませ、暴れようとする男の首後ろ半分をえぐり神経中枢を喰い千切った。



 糸の切れた操り人形のように片手で肩をつかまれたYシャツ姿の男は力なく手足を投げ出し、クラーラは肩をつかむ角度を変え襟首を引き上げ男の首からあふれ出た鮮血をえりで受け止めたがそれでも勢いある動脈の血が顔に噴きかかった。



 破られた血の戒律かいりつ、その生温かさに言い知れぬ恍惚感こうこつかんが込み上げクラーラは唇を大きく開き喉を波打たせ血を呑み込み続けた。



 エレベーターのどこかに必ず監視カムがあり、警備室で今頃警備員が顔を引きらせているだろうとクラーラは意識の隅で思いながらエレベーターの操作パネルをライトブラウンの半眼で見つめた。



 その予定もなかった人食が思いも掛けぬ結果になった。



 操作パネルから電子音が聞こえいきなりドアが開き始めた。



 隙間すきまから見えてきたのは防火服を着込んだ消防士だった。



 ホワイトカラーの男の襟首から顔を上げその消防士とクラーラは目が合っても咄嗟とっさに次の動作に結びつかなかった。



 消防士が顔を強ばらせ後退あとずさるのが見えていたクラーラ・ヴァルタリがわれに返った寸秒、エレベーターの扉が閉じ始めた。



 突き放した補食対象の男が二段式のドアにぶつかり赤い跡を縦に引きりながらくずれ落ちるとクラーラは閉じた扉を睨みつけ『開く』のボタンに手を伸ばすと触れなくても扉が再び開き始めた。











 ソファに寝かせたヴェロニカ・ダーシーを看病していたパトリシア・クレウーザは来客を告げる電子チャイムにソファを離れた。



 NDCビルの居住区はごく一部の社員しか入居できない特別区画フロアで各戸の玄関には来訪者の押すチャイム・ボタンの代わりに画像認識システムが付けられていた。



 パティは廊下のモニタで来訪者を確認すると消防士が立っていた。



 きっと下のフロアで起きた爆発と火災の件でやって来たのだと少女は思った。



 ドアを開いた瞬間、パティは防火帽の下に見える男の顔に不信感が膨れ上がった。無精ひげをそのままで仕事をしている。



「び、ビルにミサイルが撃ち込まれた。君のフロアは火など大丈夫か?」



 いきなりドアを開かれ驚いた消防士がおどおどしくたずねてきた。ミサイルだったのかとパティは内心驚き咄嗟とっさに普通を装った。



「うん、ミサイルのことは知ってる。今、うちのセキュリティは大騒ぎだけどこのフロアは大丈夫みたい」



 言いながらパティは自分が何を警戒してるのだと思った。だが周囲でテロが起きたときにはよく知った人以外は警戒して当たるようにと先任チーフのフローラ・サンドランから厳しく言い渡されていた。



「避難しなくて大丈夫か?」



「うん、ここが1番安全だから」



 何も怪しいところはないと思いながらパティは口を合わせた。



「マリア・ガーランドに今回の火災についてたずねたい。どこにいるのか?」



 社長室のあの有り様は悲惨の一言では言い表せないぐらい。部屋の使用者のマリーに消防士はたずねたくなるとパティは思った。



「M・Gは戻っていません。今、遠くにいます」



 不信感を露わにした消防士が浮かべたおももちにパティは違和感を抱きその男の意識にダイヴした。



 男はクライド・オーブリー──ソーホーにオウル・アイズという調査事務所を構える探偵だとわかりNBCの看板プロデューサーから雇われていることまでつかんだ。



 もう相手をする必要もない。



「クライドさん、あなた消防士じゃないじゃない」



 パトリシア・クレウーザはそう言い切った刹那せつな、探偵の驚いた顔を見て勢いつけて玄関ドアを閉じ電子ロックをかけ思った。



 ビルのセキュリティを抜けて変なのが入り込んでいる。



 だが男の意識へダイヴし続けるパティは正体を告げたにも関わらずクライドという男がまだ居住区フロアをうろつきまわっていることを見ていた。



 ミサイル・テロにセキュリティの人達はてんてこ舞いしている。呼びつけてビルの外に放り出すか、駆けつけている警察に引き渡すのが正しいとパティは思ったが、マリーのことを聞き回っているだけで実害はないので今、しばらく放っておくことにした。



 それよりもとパティはヴェロニカのことが心配になりリビングに戻った。その音にソファに寝かせたヴェロニカが眼を覚ましパティを見るなりつぶやいた。



「──パトリシア────ここは──どこなの────」



 パティはソファに横たわるヴェロニカのそばのカーペットにひざをついて彼女の額に右手のひらを乗せてうなづいた。インフルエンザにでもかかったような熱が引いていた。



「大丈夫、ここは私の家だから。セーフハウスよ」



 隠れ家(セーフハウス)という言い方にヴェロニカは苦笑いし記憶をさかのぼりパトリシアに説明した。



「マリアの部屋に男らが押し入って銃で襲おうとしてたので────怒りがほのおになって、辺りが抑えきれない火焔の海になったら爆発が──」



 パティは安心させようと微笑んだ。



「社長室にミサイルが撃ち込まれたの。その時、あなたは丁度、襲撃者らをらしめている最中で──」



 ヴェロニカが小さくかぶり振った。



らしめなんかじゃないわ。私、奴らを焼き殺そうと決めたの。もう怒りを抑えられなくて。まず銃で2発撃ってきた廊下の1人を火だるまに変えて、次にマリアの机を倒してバリケードにしてる残りの連中を焼き殺そうとしたときに、天罰のように火焔が噴き戻されて────ミサイルって?」



 パティがうなづいたのでヴェロニカはもう一度尋たずねた。



「マリアがミサイルでねらわれたってこと?」



「襲ってきた連中は、武器商人のドロシア・ヘヴィサイドが差し向けた奴ら。そいつらが火砲を要請したらミサイルが飛んで来たの」



 ヴェロニカが眉根を寄せ顳顬こめかみに血管を浮かび上がらせた瞬間だった。パティは暖炉に近づき過ぎたような異様な熱気を感じてヴェロニカの肩をつかんだ。



「駄目よヴェロニカ! 力をそんな風につかっちゃ!」



 ヴェロニカが驚いた顔でパティを見つめると急激にパティが感じていた熱が消え失せた。



「でも、凄いわ。マリーやシルフィーみたいに物凄い火焔を操れるなんて。魔法かしら?」



 ヴェロニカは苦笑いを浮かべつぶやいた。



「魔法なんて────マリアじゃあるまいし」



 否定したヴェロニカにパティが意外なことを告げた。



「普通の人はあなたみたく怒りがものを燃やすほどの熱になることはないでしょう。多分、マリアがあなたを復活させた時に付与させた力なのね」



 ヴェロニカが考え込み始めたその時だった。他のフロアに行った探偵クライド・オーブリーの意識にダイヴし続けていたパティは顔を強ばらせた。





 開いたエレベーターに乗っている制服警官が、Yシャツ姿の男の首から顔を上げた光景がクライドの視野を通しパトリシア・クレウーザには見えた。







 男の警官の開いた口元が血糊で真っ赤に染まっていた。







 その警官の意識にダイヴした一瞬、顔から血の気が引き虚ろになったパトリシアの表情にヴェロニカは気づいた。



「どうしたの、パトリシア?」



 我に返ったパティは寸秒どうするか眼まぐるしく考えた。



 ベルセキアがまたやってきた。



 あの変幻自在の怪物が同じビル内にいる。



 警官に化けてまでここに来たのは私が目的だからだとつかんだ。



 セキュリティを呼んでも多くの死傷者が出るだけだ。作戦指揮室に逃げ込んでも簡単に壁を突き破るパワーを持つ化け物。



「ヴェロニカ、去年末にあなたに憑依ひょういしたベルセキアを覚えてるわよね」



 パトリシアの切りだした話の行方にヴェロニカが顔を強ばらせた。



「あのNYを混乱に陥れた怪物がどうしたの?」



 国家安全保(NSA)障局職員に問われパトリシアはゆっくりと落ち着きを与えるように告げた。







「あいつがこのビルに────いるの」







「ビル内で暴れているの!?」



 いきなりヴェロニカはソファに上半身を起こしパトリシアへ振り向いて強い語調でたずねた。



「社員の1人がエレベーター内で喰われたの」



 ヴェロニカが陰鬱たる表情になりパトリシアは彼女にダイヴしなくとも考えていることが手に取るように理解できた。



 ニュージャージーとマンハッタンで多くの人を殺しスターズだけでなく国家安全保(NSA)障局の人達や多くの警察官を、そして大切なマリアまでもを振り回した異界の怪物。だが再びヴェロニカの身体を奪いに来たとはパトリシアは思わせたくなかった。



「ベルセキアの目的は私を喰らうことなの」



 咄嗟とっさの言ってしまってパトリシアはしまったと感じた。見るにヴェロニカ・ダーシーの表情がけわしくなり彼女がパトリシアに持ちかけた。



「パトリシア、スターズの火器と弾薬を借りれるかしら」



 眼の座ったヴェロニカ・ダーシーの提案にパトリシアは躊躇ちゅうちょした。ベルセキアは6発のジャベリン対戦車ミサイルでも倒せなかった相手だとの思いがパトリシアの言葉を濁らせた。



「中途半端な武器じゃ足止めにもならない。でも武器庫に行けば────」



 その言葉尻をヴェロニカは念押しした。



「行けば? かなりの武器があるのね」







 カーペットに両膝りょうひざをついていたパトリシア・クレウーザが立ち上がると、遅れてヴェロニカ・ダーシーもソファから立ち上がり2人はうなづき合った。











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