雷の王Ⅱ
俺は森の奥深くまで来て違和感を覚えていた。「おかしい、魔物や動物どころか虫一匹出てこない。」今まで森に来て狩をして来たが、こんなに森が静かだった事は無い。俺は違和感を抱きながら森の中を進んで行く。
「ヴッッッ!」謎の強烈な殺気、まるで心臓をえぐられる様な視線に総司は身を屈める。辺りを確認するが何もいない。
総司はすぐに森を抜ける事にした、風を足に纏いながら走り出す。
しかしその殺気と視線はだんだんと近づいてくる。
「チッ、これは逃げられないし逃してくれそうな気配でも無いな。仕方が無い、迎え撃つしか無さそうだ。」
総司は拳に魔力を極限まで貯めて地面に向かって放った。
周囲に生えていた木々を吹き飛ばす、直径100mが吹き飛んだ。
その中心で魔力を体にコウティングして防御とスピードを上げる。
ナイフと斧を取り出し敵を待つ、すると雲一つ無い空がドス黒い雲に変わって行く。
「ドゴォォォォォォォォォン!!!!!!」
総司の前に巨大な雷が落ちた。
土煙で何も見えないので風魔法で砂煙を吹き飛ばす。
すると放電した雷の塊が出てきた、すぐに武器を構えて臨戦体制に入る。少しずつ放電が収まり雷の中が見えて来た。
雷の中から出てきたのは美しき雷を纏った狼であった。
幼い時に、1度だけ本で見た事がある。
その者の毛は雪の如く白く。
凛と立つその姿は気高く美しい。
遥か昔、その美しき毛皮を欲するとある国の王がいた。
その王は、国にを上げて雷獣を討伐せんとした。
それを知った獣は怒り、その国に三日三晩休む事なく雷の雨が降り注いだ。
その怒りを買った国はその後滅んだと伝えられている。
人々はそこから畏怖の念を込めてこう言った。
《雷の王・雷獣》と。
最悪である。
絶望である。
運が無さすぎて笑いしか出ない。
「まさかこんな辺鄙な土地に伝説の雷獣様が現れるとは。」
逃げる事はできない。
もし、逃げ出したなら間違いなく後ろから殺される。
もし、逃げ切れたとしても恐らく近くの街もろとも襲いにくるだろう。
そんな気がして仕方がない。
恐らく、予想は外れてない。
正直勝てるビジョンが見えてこない。
が、無様に負けるつもりもない。
俺と雷獣との距離はおよそ30m。
俺は大きく息を吸い。
ゆっくりと吐く。
武器を構えて。
雷獣と目を合わせる。
雷獣も臨戦態勢に入り雷を放電させる。
「さぁ、久しぶりに名乗らせて貰う。」
俺は全身に魔力を纏う。
「我、新撰組 一番隊 隊長」
今、俺の13年間の努力が試される。
「沖田 総司!」
勝てる見込みは無いが引く気は無い!
「いざ!」
今の全身全力を叩き込む!。
「参る!」
今、雷獣とこ戦いが始まる。