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宜しくお願い致します。

《さぁ、時は来ました。目覚めなさい勇者よ今こそ魔王を討ち、この世界に平和をもたらすのです》


……なんだ?

透き通るようなとても美しい声が頭の中で響き渡っている。


《さぁ、時は来ました。目覚めなさい勇者よ今こそ魔王を討ち、この世界に平和をもたらすのです》


……2回目…だと!?

全く同じ事を一言一句違わずに言いおった!


《さぁ、時は来ました。目覚めなさい勇者よ今こそ魔王を討ち、この世界に平和をもたらすのです》


いや、分かったから!聞こえてる聞こえてる!

何?勇者?誰が?魔王を討ち?一体なんのーー


《さぁ、時は来ました。目覚めなさい勇者よ今こそ魔王を討ち、この世界に平和をもたらすのです》


いや!少し考えさせて!?

平和……平和ね。まずは目覚めればいいんですね?とりあえず話はそれからーー


《さぁ、時は来ました。目覚めなさい勇者よ今こそ魔王を討ち、この世界に平和をもたらーー》




「いや、俺の話を聞けやぁ!!!!……ぁれ?」


謎の声に我慢出来ずに叫ぶと、そこは家のベットの上だった。


「……夢か」


そんな事を口に出しながら、まだボーッとした頭を掻きながらベッドから降りようとすると突然、ピロン!という音が頭に鳴り響いた。それに続いて、


スキル【ツッコミ】を会得した。


先程の夢と思われるモノと同じ声が頭の中から聞こえてきた。

………え?なにこれ?

確かこれって、スキルを習得した時にのみ聞こえる天啓ってやつ?

……マジで?………マジで!?……マジで!!

やった!!ついに!!俺にもスキルが!?


「キタァーーーー!」


「うるっさいわねぇ!さっきっからずっと何騒いでんのよ!!」


スキル習得に両手放しで喜んでいると1階の方から俺よりもさらに大きな声が聞こえてきた。……母親だ。


「いや、母ちゃんの声のが大きいから!」


!?

………ん!?なんだ!?今、口が勝手に…?


「どうでもいいから早く降りてらっしゃい!朝ごはん冷めちゃうわよ!」


「まぁ、いいか」


俺は気にせず1階へと生返事をしながら降りていく。今は、そんな事を気にしている場合ではないのだ。はやく、はやく俺がスキルを習得した事を両親に自慢したい!


「おはよー。相変わらず早いね、お二人さんは」


「アンタが遅いのよ。とっとと座って食べちゃいなさい」


俺は1階に降り、促されるまま既に4人がけのテーブルで朝ごはんのベーグルサンドを頬張っている父親の前に座った。

すると、ちょうど家事を済ませた母が父の隣に座り、ベーグルに手を付けはじめた。


「いただきます。で?どうしたのあんなに騒いで」


待ってました!ずっと言いたくてうずうずしておりました!


「なんかHな夢でも見てドキドキしてたんだろ?」


と、ニヤニヤしながら父。


「いや、発情期か!家族3人でいる時にそう言うこと言うなや!?」


!?

また口が勝手に…。


「こ、怖いよ母さん。ついに息子がグレちゃったよぉ」


「アナタがしょうもないこと言うからでしょ!全く、この子も今日で18なんだから発情云々はそっとしておかないとダメよ」


「いや、別に発情期じゃないから!あと、その気遣いやめて!辛い!実の息子辛い!ってか、発情期って何!?せめて思春期にして!」


!?

なんなんだ!?まさか!これが……スキル!

俺は両手の平を見つめ、スキルについて少し考える。


「アナタ……なんか変じゃない?クドいし」


「そうだな、変だな。変態だな。」


「いや、変態はアンタだ!!そして、クドいは余計だ!!」


はっ!

やっぱり!これが俺のチカラ。

心配そうに俺を見つめる両親を他所に俺は告げる。俺の新たな力について。


「父ちゃん!母ちゃん!聞いてくれ!ついに俺……スキルを習得してしまったんだ!」


すると両親


「「おぉー!!!」」


「やったじゃない!」

「流石、俺の息子だ!!今日はめでたいな!」

「今日は元々おめでたい日じゃない!だって今日はこの子、【べべ】の18才の誕生日だものね!」


2人が口々に喜びの声を上げてくれている。

そしてそう、今日は奇跡的にちょうど俺【バモス=べべ】の誕生日だ。

この世界にはスキルという人知を超えた能力が存在し、これによって剣や魔法などの扱いが卓越したものとなる。

そして、このスキルというものは、誰でも習得できる訳ではなく、持つものと持たざる者はちょうど5:5くらいだ。

持つものは将来をほぼ約束されたようなもので、モノにもよるが王都でも働き口には困ら無いだろう。スキルにもランクがあり、F〜SSまで分かれている。因みにSSのスキル持ちは世界に3人しかいないと言われている。そして、逆にスキルを持たざる者はほぼ農家だ。

別に蔑まれるわけでも、差別される訳でもなく……農家だ。辺境の地でみんな果物とか育てている。

まぁ、なかったらなかったでしゃあないな的な感じだ。

だが、危なかった。俺もあと2年スキルを習得できなかったら農家になるところだった。スキルを習得できる年齢は決まっており、0才から20才までの間とされている。それ以降はスキルの強化・進化はあれど、新しく習得する事はない。俺の両親もスキル持ちではあるのだが、田舎の方が王都よりも空気が美味しいらしく、俺が生まれたと同時に王都から遠く離れたこの辺鄙な村に越してきて、王都所属の冒険者兼農家をやっている。メインは農家だ。スキルを習得できなかった場合、農家を継ぐと約束していたから本当に危なかった。


「「で?どんな?なんてスキル!?」」


両親が目をキラキラさせて聞いてくる。


「俺の火炎寄りかな?」


「バカねぇ、私の氷寄りにきまってるじゃない!」


因みに両親のスキルのランクはどちらもAだ。めちゃくちゃ優秀で強力で激レアだ。

王都の冒険者のなかでも指折りのコンビだそうだ。そんな2人が農家って。最強の農家なのではないだろうか。


「「で?で?で!?どんなスキル!?まさかハイブリッド的な?」」


期待の眼差しがスゴい。

その期待に応えてやろう。


「………ッコミ」


「「え?なんて?」」


「…だから、ツッコミ」


「「ごめんもう1回」」


「いや、だからツッコミだって!」


「「……………」」


3度目でやっと飲み込めたのだろう。

2人とも目を伏せ、黙り込んでしまった。

しばらくすると、2人が可哀想なものを見るような目で見つめてきた。


「…………いや、ヤメテェ!?嘘じゃないからね!?ホントだから!」


「いや、信じるぞ。俺はお前の父ちゃんだからな」


そう言って肩を叩いてくる父。

そして、無言で背中をさすってくる母。


「なになになに!?ちょっとホントやめて!俺も泣きたくなるから!」


「大丈夫だ。お前には立派な農家の血が流れている!お前は立派な農家だ」


真剣な表情で父ちゃんがなんか言い始めた。


「誰が立派な農家じゃ!!スキルあるから!」


「………そうだな、お前はスキル持ちだ。だが農家だ。……そのスキルでは農家なんだ。聞いたことないし………ぷふっ」


ぷふっ?


「……そうね、お父さんの言う通りよ。とてもいいスキルだけど……農家ね。………ぶふっ」


ぶふっ?


「母さん…ダメだって………ぷくく」

「アナタもじゃない………ぷふふっ」


「「大丈夫!何があろうと私達(俺達の)息子だから!…………ぶふっ!」」


「………わろとるやないかい」


なんだコイツら馬鹿にしやがって!

俺だって薄々気付いてたわ!【ツッコミ】てスキルとして成り立ってんのか!?ってかわざわざスキルにする必要あったんか!?

何が天啓じゃ!これはあんまりだろう!


「あっはっはっ!【ツッコミ】って【ツッコミ】って!スキルとして成り立ってんの?はっはっはっ!」


「はっはっはっ!っじゃねぇわ!口に出すなや!!」


「ひーひーっ、【ツッコミ】ってわざわざスキルにする必要あるのかしら!?あーはっはっ」


「それも口に出すな!!ってか2人して笑い過ぎだろ!!見とけよ!マジで見返してやっから!!」



そう言って俺はバカ笑いする両親を置いて家を飛び出した。


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