表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ネコ転生! ゲーム世界に転生したら、ネコでしたが、くっそ強いロリ美少女のお供として、俺は生き抜くっ!  作者: MITT
第一章「クロネコの章 クロイノ覚醒、最強ロリっ子邂逅編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/276

第三話「冒険者達」①

「……おおっ! お、お前ら、無事だったのかっ!」


 ダンジョンから出るなり、剣士風の大剣背負った兄さんが駆け寄ってきた。


 コイツは確か……露払いチームの雇われ冒険者のダンテ兄さんだったかな。


 髭面で兄さんと言うより、おっさんなんだが。

 これでも20代らしく、おっさん呼ばわりすると怒る。

 

 御主人様達狩猟騎士が出張るのは、ダンジョン攻略の最終段階。

 

 ボスキャラとの決戦だ。


 道中の雑魚との戦いや探索やらマッピングなんてしょうもない事で、決戦兵器たる狩猟騎士を出して、消耗させるなんてのは、あまりにコスパが悪いし、そんな些事は狩猟騎士の仕事じゃない。


 だから、ダンジョン攻略戦の序盤から中盤では、この手の冒険者や狩猟騎士お付きの従騎士って連中、そして頭数だけは多い、俺らナックル達がダンジョン内の露払いや探索を行うのだよ。


 これは、オープンフィールド戦でも同じで、ボスモンスターの縄張りにまっさきに突入して、地形の捜索とか、雑魚モンスターを掃討。

 巨大モンスターの追跡監視、安眠妨害やら餌に毒を仕込んで弱らせるなど。


 狩猟騎士の手を煩わせるまでのない些事や汚れ仕事だのは、俺達の仕事なのだ。


 もっとも、俺達ナックルも冒険者達も、直接戦闘力は人外揃いの狩猟騎士には遠く及ばないから、ボスの大型モンスターと交戦状態になってしまったら、全力で逃げ帰る。


 大型モンスターとの戦いは、狩猟騎士におまかせするってのが基本なのだよ。


 まぁ、これは戦闘力の差以外にも、古来から伝わる作法……巨大モンスターとは、正々堂々と戦い一騎打ちに持ち込む……なんて、アホくさい……もとい厳格なルールがあるのだよ。


 なんでまぁ、俺達は基本的には邪魔が入らないように見守るしか出来ない。

 

 もっとも、支援職連中はバフや回復魔法でのバックアップと言う仕事もあるし、前衛職はそいつらのガードに徹して、さっきみたいに増援の雑魚が出て来たら、狩猟騎士様の手を煩わせないように、迎撃すると言う役目もある。


 ちなみに、デバフや攻撃魔術なんかもあるにはあるんだが。

 ボスクラスのモンスターはもれなく、強烈な対魔術結界を張っているので、ほとんど効果はない。


 概ね、それが大型モンスター攻略時の一般的な布陣じゃあるんだ。

 ゲームではこう言うの触れてなかったけど、クロイノの知識で俺も知ることになったから、解る。

 

 そして、何よりも。

 俺達、サポートにはもう一つ重要な役割があるんだ。


 万が一、狩猟騎士様が負けてしまった時の備え……これは俺達にとっては、もっとも重要で命を賭けるに値する仕事なのだ。

 

 にも関わらず、こいつらは御主人様の敗退を目にして、あっさり逃げやがった。

 仮にも狩猟騎士のサポート、従騎士団の一員として仕事をするにあたって、最も恥ずべき行為と言えた。


 もっとも、こいつら冒険者は日雇いバイト戦士みたいなもんだから、忠誠心とか期待しちゃ駄目なんだがな。

 こうして、入り口付近で待っていてくれただけでも、殊勝と言えなくもないのだけど……。


「無事も何もねぇよ……。命からがら逃げ帰ってきたってとこだな。お前らこそ、真っ先に逃げてんじゃねーよ! つか、まずそこ座れ! 言い訳があったら聞くぜ?」


 俺らは最後まで逃げなかったんだからな……説教くらいする権利はあると思うぜ?


「え? なんで、お前……黒ナックルなのに、コモンワーズなんてしゃべってんだよ!」


 そこ座れって言ったのに、質問を質問で返すとは舐めた野郎だ。


 だがまぁいい……俺、所詮ナックルだしなぁ……。

 やっぱ、白ナックルでもないのに、人語を話すってのはおかしいとか、そんななんだな。


「ああ、実は俺……普通に話せたんだよ。今まで黙ってて悪かったな。つか、お前ら冒険者共なんて、まっ先に街まで逃げたと思ってたよ。ここに残ってるのは、お前らだけみたいだが、従騎士長のワルツ坊やはどこ行ったんだよ? 俺が人語を話すとかそんなこたぁ、どうでもいいだろ?」


 ダンテもなんだか、気まずそうに目線を逸らすと、ホントにその場で正座する。

 

 あれ? 俺の言うこと聞いてくれんの? いい心がけじゃん。


「す、すまねぇ……。狩猟騎士様がやられるような相手……俺達ではとても太刀打ちできないからな。気が付いたら、俺達だけになっちまったから、思わず逃げちまったんだ。けどさすがに、ここで街まで逃げ帰っちまったら俺達の信用問題に関わる。まだ残ってる奴ら……お前らの事は解ってたから、いっちょ死ぬ気になって再突入すべく準備をしてたんだ! し、信じてくれよ! 逃げ出すつもりだったのなら、こんな所でモタモタしてねぇだろ? 逃げたことは謝る! 反省もしてる……だから……な?」


 ……なんだ、俺らを置いてった事も解ってて、決死隊を編成して助けに行くつもり……だったのか。

 実際は、どうか解らんけど……そのつもりだったってのは、何となく解る。


 と言うか、ワルツ坊やはともかく、他の従騎士共はなにやってんだかな。

 普段は、特権階級面して偉そうにしてるくせに、ヤバいと思ったら真っ先に逃げるなんて、いい面の皮だ。


 何度だって言うが、従騎士にとって、最も恥ずべく行為は守るべき狩猟騎士を見捨てて逃げる……だ。

 

 例え、自分が死んでも狩猟騎士を守り抜いて、無事に帰還させて、次に繋げる……俺達はその為に居ると言っても過言じゃない。


 イザって時に命を投げ出す覚悟。

 

 それがあるからこそ、普段は特権とか与えられて、何不自由ない生活もさせてもらってるんだ。


 こいつら、冒険者は金次第で何でもやるような奴らだけど、仲間を見捨てないってのが暗黙の掟だって聞いてる。


 だからこそ、こいつらはこの場に残ると言う決断を下した……そこは評価すべきだった。

 ……責任を果たさなかった奴らには、相応の報いを与えて、然るべきだ。


 ちなみに、ワルツ坊やってのは、次期狩猟騎士候補のグラハム卿の息子さんだ。

 

 坊やって言っても、40代のいいおっさんなんだが……どうも狩猟騎士としての才能は受け継がなかったらしく従騎士止まりでちょっと、いやかなりのヘタレ。


 狩猟騎士候補ではあったのだけど、何度継承の儀に挑んでも尽く失敗。

 

 誰もが、もうコイツは駄目だなって、諦めてる……。


 諦めてないのは本人だけ。


 権力欲に関しては、一人前にあるみたいで、領主の座を自分に譲って、狩猟騎士の義務はオヤジが果たせばいい……なんて調子のいいこと言って、激怒させたりしてた。


 アホか? この帝国では貴族も領主も自力で領土を守るってのが、最低限の義務なのだ。

 

 その義務を果たせないのなら、領主でも貴族でもないのだ。

 御主人様も大変だよ……一人息子があんなので。


 一応、従騎士団のトップ……従騎士長って立場ではあるんだが、限りなくグラハム卿の親心と哀れみから与えられた名誉職。


 人望も実力もなければ、統治者としての才能もない……ないない尽くしの無能。

 40にもなって、坊や呼ばわりなのはそう言うことだ。

 

 目の前で父親がやられて、一念発起とか秘められた才能が覚醒……なんてことにならず、迷わずまっさきに逃げ帰っちまった辺り……割とどうしょうもない。


 この分だと……後継者選びは、ますます難航しそうだな。


 なんにせよ、アイツらに比べたらダンテ達は何倍もマシだ。 

 むしろ、礼を言いたいくらいだわな。


「まぁ、いい。確かに再突入の準備はしてたみたいだしな。とりあえず、動けそうな連中を全員集めてくれ。状況としては撤退やむなしだが、もう夜だしな……とりあえず野営の準備は出来てるみたいだし、今後の方針を話し合おうぜ? ところで、誰か光の塊みたいなのを見なかったか?」


 辺りはもう真っ暗け。

 

 一応、何箇所かで獣よけの篝火や焚き火を焚いてる様子から、すぐに動くつもりもないらしい。

 

 さすがに、手慣れてるって感じだな。


 なんにせよ、御主人様が無事に戻れたかは、まだ解らんからな。

 

 誰かがダンジョンから脱出するところを見届けれてくれてたなら、俺達としては任務完了……のんびり帰っても、誰からも文句は言われない。


「あ、それなら見ましたよ。人の形をした光の粒子……あれって光化転移の光ですよね? となるとグラハム卿は無事に脱出出来たって事ですね……良かったぁ。それと……アマリリスさん……具合があんまりよろしくないみたいなんですけど……。治療いります?」


 冒険者のひとり……ヒーラーのナスルさんがのほほんとした口調で割り込んでくる。

 

 ショートカットで亜麻色の髪。

 おっとりした感じの美人さんだ。


 一応、出立前に全員と顔合わせくらいしてるから、見覚えあるんだが。

 

 ハンナイには、こんなヒーラー魔法使いとか居なかったから、ちょっと斬新だ。


 なお、ハンナイはワンパンで半分ライフ持ってかれるとかよくあるので、ヒーラーお供とかいても意味なさそう……とか言われてた。


 実際、この世界の戦いもそんな調子で、大抵の人間がクリーンヒット一発で戦闘不能になる。

 

 魔法の治療っても、瀕死の重傷が一瞬で治せるとかそんな便利なものじゃなくて、基本リジェネ系……ゆっくりとじわじわと治るって感じで、回復に結構時間がかかるから、戦闘中に回復なんてそもそも無理がある。

 

 なので、この手の回復要員は戦闘になると真っ先に引っ込んで、むしろ戦いが終わった後に活躍する。


 そんなのでも居るのと居ないのとでは、人員の損耗率が格段に違うから馬鹿にできない。


 今回も前哨戦でそれなりの怪我人は出てたはずなんだが……。

 見て回った感じだと、死者は数人程度しか出ておらず、そこだけ見れば、まずまずの結果と言えた。


「ナスルさん、心配してくれてありがとう。アマリリスは魔力切れだから、とりあえず、ほっとくしか無いと思う。他のけが人と一緒にして、まとめて見ててくれると助かる」


 ……ナスルさんはどうも、入り口の拠点ベースキャンプに置いていかれていた怪我人を治療してくれていたらしい。

 

 この拠点にも、大勢の後方支援要員や怪我で後送された連中を守るために、それなりの人数の従騎士達がいたはずなんだけど、いやしねぇし……。


 要するに、連中……戦えない奴らや怪我人も全部見捨てて、トンズラこきやがったんだ。

 

 よく見ると、近くの村で雇われた飯炊き要員やら洗濯おばさんやら、お手伝いのワーカーナックルとかがぞろぞろ、居残ってるし……。

 

 自力では動けない怪我人も多数いて、即席の野戦病院みたいなとこに並べられて、治癒術士や薬師やらが走り回ってる。


 けど、そんな惨状を見るに見かねて、危険を承知で残って治療に当たるとか……ナスルさん、ええ人やなぁ……。


 ダンテは、どうもナスルさんに付き合って居残ったっぽいんだが……。

 それでも、見上げた心意気だよな。


 結論……ナスルさん、マジ天使。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ